日本版S1・S2プロジェクトの進捗状況
SSBJが今年2月、企業側が対応しやすいようにと、「現在開発中のサステナビリティ開示基準に関する今後の計画」を公表、下記スケジュールで日本版S1・S2プロジェクトが進行中であることは皆さんご承知かと思います。
予定通りに公表された場合、確定基準公表後に開始する事業年度から早期適用が可能となります。3月決算だと、2026年3月期の有価証券報告書から、日本版S1・S2に基づいて、サステナビリティ開示ができるようになるということですね。
その後審議が進み、今年8月、状況がアップデートされました。
公開草案及び確定基準の目標公表時期に変化はありません。
月に1回以上のペースで実施されているので、とても全てに目を通すことはできていませんが、いわゆる合目的的に考えればいいのよなぁと、気楽に考えながらウォッチしております。
教育基本法、男女共同参画社会基本法、少子化社会対策基本法など、「基本法」と名のつく法律には、法目的を述べた「前文」があることが多いです。
なので、サステナビリティ情報も、「目的は何なのか?」を考えて「適切」に開示すればよく、その文脈で開示ルールも作成されるとの判断です。
ということで、SSBJが開示目的どのように考えているかを見てみると、「ガバナンス」については、ズバリ次のように定めていました。
これを踏まえて、ガバナンスについての事務局提案を見ると、ISSBのS1・S2の確定基準に対して、日本企業が理解しやすいように修正を行ったり、補足説明を加えたり、という風に「合目的的」になっているのが、分かるかと思います。
また、新たな作業を要求するものでないことを明確にしている点は拍手。
その他事務局が行った提案を、ピックアップしておきます。
審議事項A1-3は「リスク管理」
公開草案から確定基準の間の際は明確化程度なので、方針変更なし
審議事項A2-1は「 [S2] 温室効果ガス排出の3つのスコープ」がテーマ
S2は次の用語の定義を行っていますが、日本版S2も同様に用語の定義を行うとのこと。しっかり日本語にしてもらえるのは助かります。
これまでは、お手本が無かったので、表記や内容にブレがあったかと思いますが、大本営(?)の発表により、解消に向かうのではないでしょうか。
なお、(4) 直接的な温室効果ガス排出は、S2に含まれないものの、GHGPコーポレート基準の定義を踏まえ、日本版では独自に定義するそうです。
ちなみに、「S2の要求事項に反しない範囲でのみGHGPに従って測定したGHG排出量を開示すること」としていることに留意しましょう。
GHGPにおいてスコープ3開示は任意ですが、S2は要求しているので、GHGPと異なる方法での算定が認められる例外規定を採用する場合でも、スコープ1・2・3の開示が必要です。
S2における定義を事務局が仮訳していますので、参照ください
審議事項A2-2は「GHGプロトコルの測定アプローチ」
ここでは、支配力基準が議論されています。
事務局の提案は、以下のようになっています。
個人的には「財務支配力アプローチ」が、GHGPのコーポレート基準ではいまいち理解できていませんでし。「持分割合によらず経済的実質を反映する割合」というのでもまだしっくりはきませんが、監査を考慮すると「株式保有率」が基本になるのかなぁと思っています。
このテーマでは、もう1点、論点がありました。
S2におけるGHG排出量の算定はGHGPを基礎としているところ、ISSBの支配が及ばない組織の指針等が自動的にS1を構成することなるのは、いかがなものか?ということ。
これについてISSBは「GHGPが更新された場合は、それに併せてS2も更新する」としていました。つまり「自動的」ではないですよ、ということ。
これを受けて、日本版S2も同様に対応するとしています。
GHGPは、一連のスタンダードの更新に向けコンサルテーションを行っていますので、更新のタイミングでは両方に配慮しておくことが必要になると思われます。
なお、あくまでもこれらは「事務局案」ですので、結論は議事録の発表を確認する必要があります。
ということで、日本版S1・S2プロジェクトの進捗をさらっと見てきました。
今後も適宜キャッチアップしていきますね。
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