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LCA実践塾西表島合宿(1)〜マングローブの適応能力

早稲田大学の伊坪先生が主宰されている「LCA実践塾」のメンバーで、西表島合宿をしてきました。いつもは、神田や高田馬場での勉強会ですが、「実践」塾であればフィールドワークが重要でしょ、ということで、数年ぶり(?!)に会議室を飛び出しました(^^ゞ

視察のテーマは、「海洋ごみ」と「オーバーツーリズム」

とはいえ、私以外は初めてとなる西表。かく言う私も、仕事で何度か来たことがあるものの、全くの不案内。そんな私たちの強い味方、西表のガイドといえばこの人、バナナハウスの森本さんに案内をお願いしました。

森本さんのガイド無くては、西表を扱うテレビ番組は制作不可能、と言っても過言でないほどの、超有名人です。ご存知の方も多いことでしょう。

7月に発刊された「海のひみつ」では「コラム 教えてウミネコ先生 その7
海の環境問題って?」を監修されています。

非売品のため書店での一般販売はありませんが、「学研まんがひみつ文庫」や「学研キッズネット」にて無料公開されていますので、是非ご覧下さい。

前置きが長くなりましたが、そんな「海の環境問題」の第一人者、森本さんの案内で最初に訪れたのは、①古見の浦。

森本さんお手製の西表島の地図

まずは、マングローブのレクチャーから始まりました。
代表的なのは、次の3種類だそうです。

1.ヤエヤマヒルギ
支柱根(しちゅうこん):根が分かれていて、幹の周囲から斜めに広がって地面に向かって伸びる形をしていおり、木がまるで「足」を広げて支えているように見える。複数の支柱根が外側に伸び、しっかりとした基盤を作り、泥や水の多い場所でも安定して立つことができる。この根の構造は、強風や波の衝撃に耐えるためのものとのこと。

2.オヒルギ
膝根(ひざね): 根が逆V字型、もしくは「膝を曲げた」ように、地面から少しだけ出て、その後また地面に戻る形をしている。この膝根は、地下の酸素が少ない場所でも地上から空気を取り入れるために役立つ。オヒルギの根は広範囲に広がらず、見た目としては比較的コンパクトで、膝を曲げたように地面から少し持ち上がっているのが特徴だとか。

3.メヒルギ
支柱根: ヤエヤマヒルギと似た形で、幹から斜めに伸びて地面に向かう根が特徴。これも逆V字型に近い形をしていて、木をしっかりと支える役割を果たすそうです。

つまり、ヤエヤマヒルギは複数の根が外側に広がって「足」を広げるような形状、オヒルギは逆V字型の膝根を持つという点で見分けがつくのだとか。

メヒルギの根の内部や皮層には、内部にペースト状の物質が詰まっていて、過剰な水分が内部に入り込まないようになっているとか。(中段左の写真)

言ってみれば「撥水コート」しているようなものですよね。マングローブの「適応」の一つだと言えるでしょう。

「適応」と言えば、もうひとつ。

中段右の写真は、オヒルギの葉っぱですが、黄色になっています。これは紅葉しているのはなく、過剰な塩分を葉に蓄えている状態なのだとか。これを切り離すことで体内の塩分を調整していると聞くと、さすが自然の摂理と感服せざるを得ません。

下段左の写真では、森本さんが細長い茎のようなものを持っています。
これは「胎生種子」というもので、親木の上である程度発育し、根や芽が成長した状態で地上に落ちて、すぐに土壌に定着できる種子なのだとか。

多くのマングローブ植物に見られる一般的な特徴で、胎生種子を利用することで、塩分の多い泥質の環境でも生育しやすくなることに加え、種子がすでに発芽した状態で地面に落ちるため、定着が早く、過酷な環境でも成長を始めることができるとのこと。

という説明を聞いて振り返ると、下段右の写真(冒頭の写真も同じ)のように、「雨後のタケノコ」でなく「胎生種子」の畑(?!)が広がっていました。

このような、様々な「適応」を駆使することで、マングローブは塩分濃度の高い環境でも生育することができるのですね。天晴れです。

そんな、過酷な環境で健気に生育しているマングローブですが、開発の波にさらされ、漂着ごみに痛めつけられ、衰退の一途を辿っているのです。

次回は、その現実をお届けしたいと思います。

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