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証書とクレジットを使用した温対法報告について

非化石証書を購入できるのは、これまで電気事業者のみだったところ、21年度第2回目から、需要家や仲介者も購入できるようになったのは、皆さんもご承知のことと思います。

2月、5月、8月、11月の年4回、JEPXで入札が行われており、noteでも、都度ご報告してきました。

調整後排出量として報告できるのがメリットではありますが、「他者から供給された電気又は熱の使用 に伴って発生する二酸化炭素の排出量を上限に控除できる」となっていますので、ご注意下さい。

SHK制度算定方法検討会 第3回 資料4 本制度におけるガス事業者別排出係数・熱供給事業者別排出係数の導入について(案)より(著者追記)

日本での「カーボン・クレジット」と言えばJ-クレジットですが、こちらは「国策」ですので、事業者の全体の排出量から控除できます。(前身の国内クレジット及びJ-VERも含まれます)

J-クレジット制度ウェブサイトより

他方、海外に対しては無力ですので、GHGプロトコルでは、証書同様の扱いとなっていることは、皆さんのご認識の通りです。(再エネ電力・再エネ熱クレジットのみが、自社の電力及び熱使用による排出量から控除可能)

GHGプロトコルやISOといった国際ルールと、SHK制度の相違による排出係数の取扱いは複雑ですので、詳しくは、こちらを参照下さい。

さて、今回ご案内したいのは、温対法の報告にあたり、証書及びクレジット購入による排出削減量の取扱いです。

私が検証人として確認するのは、次の点です。

1.使用可能なクレジット/証書なのか
2.削減量の算定が正確か

1.の「証書」については、「算定・報告マニュアルp.Ⅱ-274」に記載があります。

使用できる非化石証書の量は、報告年度6月の口座凍結時に非化石証書保有口座に所有する証書の量又は仲介事業者が発行する報告対象分の購入証書量の証明書に記載の量のうち、調整後温室効果ガス排出量の調整に使用する量です。

算定・報告マニュアルp.Ⅱ-274より

したがって、例えば2024年度報告(2023年度実績)に使用できる非化石証書は、「2023年7月~2024年6月」に取得した非化石証書となります。検証時には「6月30日付」の「残高証明書」を事業者に提出してもらいます。

「残高証明書」には「権利確定日」「認定日」「運転開始日」「トラッキング割当日」など様々な「期日」が記載されていますが、「証書有効期限」が報告年の「6月30日」であることと、「権利確定残高」を確認します。

1.の「クレジット」については、「算定・報告マニュアルp.Ⅱ-273」に記載があります。

調整後排出量の調整においては、調整後排出量を調整する年度に無効化若しくは移転された国内認証排出削減量、又は無効化された海外認証排出削減量(以下「無効化された国内認証排出削減量等」といいます。)を用います。

算定・報告マニュアルp.Ⅱ-273より

そのため、「無効化の日付が算定対象年度であること」がJ-クレジットの利用可能条件となります。(例外として、算定対象年度の翌年度4~6月に無効化されたものは、算定対象年度と翌年度のいずれか一方の調整に用いることができます。)

ここでの「無効化日」は、償却通知書に記載される「償却日」を基準としています。「償却日」(=「無効化日」)と「認証日」は異なるため、該当するクレジットは存在することになります。

検証時には、「無効化通知書」を提出してもらい、記載されている「処理日」と「数量」を確認することになります。

続いて、2.について。

「J-クレジット」や「グリーン電力/熱証書」であれば、簡単です。
無効化通知書や証書に「数量(t-CO₂」が記載されているからです。

購入する際には、このように表示されるので、参考にするとよいです。

J-クレジット制度ウェブサイトより

問題になるのは、「FIT/非FIT非化石証書」の場合。
こちらで確認するのは「残高証明書」とお伝えしましたが、そこに記載されているのは「権利確定残高(kWh」のみ。「数量(t-CO₂」ではないのです。

こちらについても、「算定・報告マニュアルp.Ⅱ-274」にて算定方法の説明がなされています。

非化石証書二酸化炭素削減相当量(tCO2)
=非化石証書の量(kWh)×全国平均係数(tCO2/kWh)×補正率

算定・報告マニュアルp.Ⅱ-274より

この「補正率」を忘れる事業者が多いかと思いますが、ご注意ください。

先ほど、報告に使用できる非化石証書は、「算定対象年7月~翌年6月に取得した非化石証書」とお伝えしましたが、報告の算定対象期間は「対象年4月~翌年3月」となっており、期ズレが生じます。

これを補正するために補正率が存在しているんですね。
とはいえ、分かりにくいですし、計算する必要もありません。
実務では、報告年度用の電気事業者別排出係数最終頁を参照しましょう。

電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)より(著者追記)

ということで、意外と理解していない、証書/クレジットを使用した場合の報告方法についてご案内してきましたが、いかがでしょうか。

排出係数や算定対象についても、今後、適宜変更されていきます。
皆さんのお役に立てる情報をお届けしていきますので、お楽しみに。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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