見出し画像

ハイ・スクール|散文

 学校というのはいつも退屈なものだ。何かを持て余した退屈。でも、その道筋を見つけていたとしても、退屈の種類が変わるだけなのだ。退屈から抜け出すには何かしらのトラブルが必要なのかもしれない。だから退屈はある種の幸福なのだ。至福とはなんなのだろうか。真実や真理や現実と関係あるものだろうか。。。。どうして私の頭はいつもこう、いろいろな言葉でうるさいのだろう。。。
 
 一人の男子が私の机に向かって歩いてくるのが見える。私は彼の馴れ馴れしい話し方が気に食わない。一方でどこか、多分、本能かなにかでどこか悪くないと思っている感じがする。身体的に好ましいとどこかで感じているのかもしれない。
 彼は私の前の席の椅子に腰掛けると私に話しかける。こういった人の迷惑や距離感を顧みないところがまた気に食わない。本人は本人のキャラクターや見た目の良さででどうにかなるとでも思っているのだろう。彼のつけている香水の甘くいい匂いが私のマスク越しの鼻から脳にうっすらと拡がっていく。
 
 柔らかい日差しのように微かに笑って彼は言う。
「期限は大丈夫?」
「きげん?」
「化学課題の提出期限だよ」
「ああ、大丈夫だよ。昨日ママに手伝ってもらったから」
「ママ?。。ふうん、君のあの賢いお母さん。。。」
 私はため息をつく。どうやっても私の心と身体はひどく直結している。
「地獄だね」
「?」
「なんでもないよ。それより、ほら、あっちで君のファンが君のことを待ってるよ」
 彼はちらりと振り返り、それを確認する。

いいなと思ったら応援しよう!