見出し画像

お堅い経済誌の記事も娯楽(≠分析)

 最近こういう記事多いですよね。日本のランク低下!!ヤバいよ やばいよ。実際人口が減って、高齢化が進めば、規模は小さくなって存在感は低下していくわけなんだけど。

 通常ランキングの算出には複数の指標を合成します。最もシンプルには、各指標の合計値(≒ 平均値)の大小で順位を決めます。中には、この指標は大事だから〇倍する。この指標はそうでもないから、△分の一にする。なんてあります。この場合、重み付けのさまによって、合計値は変わり、順位も変わります
 また、各指標における偏差値の合計(平均値)によって、順位を決めるという場合もあります。あるいは、各指標における順位の平均で決めるという場合もあります。

 それぞれ一長一短あり、何が正しいとか、何が適切というのは一概に言えません。ただ、大切なのは、何に基づいてランキングしているのか、理解しているか否かです。理解していれば、上がった・下がったそれぞれの要因を、より深く理解できるようになります。

 さらに言えば、最終的には合成される各指標それぞれいったい何を測定しているのだ?ということを考えなければなりません。例えば、政府発表の何かの数字に基づいているとなら、政府の統計がテキトーな場合、その指標はテキトーな数字に基づくものです。国のお偉方がランクを上げたいと考えたら、いくらでも操作出来ちゃいます。そもそも国によって定義が違っていたら、それで比較すること自体が不適切。
 あるいは、国民を対象にしたアンケートの結果に基づくとしたら、各国で実施しているアンケートが本当に同等な性質なのか、事前に相当な検討がなされている必要があります。←たぶんこんな面倒なこと、ランク発表事業者がしているとは考えにくい。すっごく面倒だもん。
 はたまた、企業の研究開発費の増減なんかを問題にした場合、自国通貨で計算するのか、ドル換算でするのかでまるで違った数字になります。

 よって、ランクが上がった、下がったを語る前に、元となる指標とやらが何に基づいているのか、よくよく検討しておかなければならないのです。引用した記事では、各指標にフォーカスしたうえで、これについては順位が上がった・下がったという指摘をしています。でも、その指標が何を測定しているのかには触れていません。

 有名一流大学名誉教授の名においての記事ですが、そんな大先生でもその程度の見方をしているのでしょうか。まさか と思いたい。もしかしたら先生としては、それじゃ不十分ということを重々承知ながら、読者がそこまで気にしませんから~という依頼者の声・要請により、まあいいかと割り切ったのか。

 先生がどういう検討をされたのかはともかく、いずれにせよこの記事は、日本経済の問題点を指摘したとか、浮き彫りにしたとかというものではないということ。日本上がったぁ → やるじゃん俺ら! or 日本下がったぁ → 俺らやべぇ⤵ と一喜一憂し、飲み屋で日本経済やら日本の先行きを語るためのネタ提供すなわち「娯楽」でしかないってことですわ。

 以上、かつてマーケットリサーチャーとして、ブランドの力をいかにして測定するか?そのためにはどういったデータを集め、どう集約し指標化するのかなんてことも、真剣に考えていた者として思ったこと。

 そもそも記事は論文ではありませんね。まずは楽しむものにして、ここから話を面白く広げていくもの。日本が何位なのかは問題ではありません。でも存在感・地位が低下しているというのは間違いなさそう。しからば、将来のため、次の世代のためになることを、これをきっかけに皆で考えていきましょう。

いいなと思ったら応援しよう!