(涼宮ハルヒ二次創作SS)ニューワールドオーダー0.5

Order0.5(Re:view)

 普段の生活の中で、どれだけ味気ない、とか、色あせた、とか、そういう比喩を使っても、結局ヒトの周りには色も味も溢れている。暴力的なまですらと思う。それらは知覚や感覚に絶え間なく話しかけてきて、眠りに落ちる瞬間ですらほんとうに真っ暗で、なにもない闇になることはないのだ。
 そんなことをいちいち再確認させられる、この場所に来るといつも。
 ここはまるで、日々の色味に疲れた人間がすべての認識を放棄したかのように、何も動かず、何の色も無い。便宜上僕の視界にはグレイスケールのように映って見えるが、本当はここには色という情報は無いのだと思う。街頭でスライドしかけたまま止まった電子看板の、色鮮やかなはずのアイドルグループの笑顔がなんともさみしい。あるいはそのさみしさを埋めるため、僕は今日もこの場所で戦う。
 戦う、なんて言うと、どうもマンガ、アニメチックかと思われるが、
あれこれ鼻にかかった言葉を尽くすよりひとこと、戦う、と言った方が簡潔だし、事実その通りなのだ。僕がここでしていることは。
 そう、昼休みの冗談みたいな話だが、今この無彩色の世界で、雑居ビルの屋上に佇む僕から見えるのは、高層マンションやテナントがおもちゃみたいに見えるほどの巨大な生命体であり、さらにそれは、色の無いと前述したこの世界の理を無視して、不気味な水色に発光し、遠目で見るとヒトのように見えなくもない程度に、ヒトに似た二足歩行形態を取り、腕のような二本の枝葉をめちゃくちゃに振り回し、街を木端微塵に粉砕している。
 なかなか理解しがたい描写かと思うが、これが僕にとっては紛れもなく現実であり、ひいては日常ですらあった。
 世界と異世界のすきまで、暴れる謎の巨人を倒す。
 これが「古泉一樹」(僕だ)のタスクの一つである。

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