競争力から共創力の時代へ
昨今、企業の経営層の方々と接する中で、耳にすることが増えてきたキーワードに、「拡大意向はない」というものがあります。
同じようなコメントは、少し前までもありましたが、これまではどちらからというと「できれば拡大もしたいけれど、それを目的にはしたくない。拡大は結果論で良い。」というような、優先順位や企業目的の話として聞くことが多かったです。
でも昨今のそれは、だいぶ趣が変わり、「拡大はしない・させない、なんなら、縮小したいくらいだ」という、かなり明確な意思としてのコメントであることが多いです。
企業とは、拡大・成長するもの。という、いわば当たり前に思い込んでいる大前提に異を唱え、積極的選択として拡大しない道を選ぶ、ということなのです。
でもこれは、「いずれは店仕舞いしたい」というような話でもないのです。
長く継続する企業であって、これからずっと長く、地域や社会に貢献し続けていく存在でありたい、(代が変わっても)継続していって欲しい、という強い思いも、同時にあるのです。
これはなかなか難しいお題だ!と感じています。
これまでの世の中の戦略やビジョンに関する理論やノウハウの多くは、拡大・成長を当然として、そのために必要なものは何か、どうするべきか、という方向で、検討が重ねられていると認識しています。その前提が覆ってしまうわけです。
組織や経営を、規模的には現状維持のまま、永く継続させるためにはどうしたら良いのか? だけをひたすら突き詰めた戦略は、どのようにしたら良いのか?
かたや時代の方は、激動と言えるほどに変化しているわけですから、事業ややることを現状維持していても、規模や経営は現状維持できないわけです。なんていうことは、当然、経営者様ご自身も百も承知なのであります。ですから、攻めることは必要なのだけれど、拡大はしないのである。と。
面白い!
と個人的には、私自身やる気に火がつくようなお題ではありますが、さて、具体的にどうしようとなると、なかなかすぐにはこれという明確なセオリーは出てこないのであります。
そんな中、気になるキーワードであり、ヒントになりそうなものとして「共創」というものがあります。
最近、お話を伺っている企業様の中で、増えてきていると感じる動きの1つに、同業者との「共創」があります。
もちろん、「共創」というキーワード自体は、大企業や社会企業などにおいては、自治体や消費者、金融機関や研究所などとのコンソーシアムという形で、以前から多く実施されていることではあるとは思いますが、人手や情報が少なく、調査や研究に十分に時間やコストをかけられない中小企業では、事例はまだまだ多くないように感じます。
また、中小企業にとっては、それほど大規模なものはときに必要なく、もう少しシンプルで、もう少し手間が少なく、もう少し結果にダイレクトに影響する取り組み、でないとやりにくい、とも感じます。
そんな中で、私が直接見聞きした、わかりやすい実例としては、異業界との新事業共同開発、ロジスティックスや倉庫などリソースや仕組みの共同活用、オープンイノベーションなどを通じた同業者との勉強会、などがありました。
いずれも、一見ライバルとも思える同業他社との「共創」です。「共創」という言葉自体が大袈裟すぎるようであれば、「共同活動」くらいでも良いのかもしれません。
いずれも、必要に迫られて、あるいは、高い意識を持ってチャレンジ的に取り組まれているケースですが、そのような取り組みができている企業様は、柔軟で、適応力があり、リーダーシップがあり、判断や行動が早い、という特徴があるように思いました。特に、オープンマインド、信頼関係、柔軟な発想という要素は欠かせないと感じました。
今後も、技術開発、商品開発、市場開拓、ブランド力強化、ネットワークの構築、情報の収集や管理、など、などさまざまな分野での共創の可能性があると感じています。
そのような機会や可能性があったときに、タイミング逃さずパートナーシップを構築し、他企業や組織と共創していけるようにするには、組織内部のマインドや行動力など、共創活動を機能させられるための土壌を、準備しておけると良いですよね。
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