命の誕生

ブリーダーとは、命の重さを常に感じる場所にいます。
猫の帝王切開は、珍しいといわれていますが
我が家では、ここ3回帝王切開が続いています。

うち、一頭は出産後に予後が悪く再手術で子宮全摘。
うち、一頭は、出産と同時に子宮摘出
残る一頭は現在経過観察中。

さすがにしんどいですね。
これまで、上手に出産してきたママ猫。
迷い、悩み、考えて安全のために出した帝王切開という答え。

ママ猫の命が最優先。
わかっているけど、子猫の命も助けたい。
当然のことです。命は同じ重さなのだから。

お腹から無理やり出されるベビー。 助けたい。ママもベビーも。
先生たちに任せるしかない。私には手術はできないのだから。
取り上げてくれたベビーを蘇生させるのは私自身。

産道を通り、産まれた子は当たり前のように呼吸をする。
帝王切開で生まれた子は、呼吸をすることを知らない。
外から刺激を与え蘇生しなければ消えてしまう命。

一瞬も気が抜けない時間。
『呼吸をして、お願いだから、息をして!』
祈りながら、信じながら、刺激を加える。

来い、来い、産まれたんだよ。生まれたんだよ。
だから、来い。泣け。息をしろ。心の声はすべて命令調。
片時も動きを止めることはない時間が続く。
息をするまで、声をあげるまで、しっかりと赤みがさすまで。

とても長い時間に感じた。
戻ってこない。呼吸をしない時間が続く。お願いだから連れて行かないで。
大切なベビー。お願いだから、息をして。息をして。息をして。

長い、長い時間、諦めず刺激を与え続ける。
色が悪くなっていく。お願い、お願い、お願い。
羊水をスタッフさんに吸い出してもらいながら刺激を続ける。

やっと、口が動き自ら呼吸しようと頑張り始める。
もっと強く、もっともっと強く息をして!
安定するまで油断はできない状況が続く。

どれほどの時間がたっただろうか。
今は、お腹に大きな手術の傷があるママのおっぱいに食らいついている。
さっきまで、消えかけていた命。 数時間前この世に誕生した命。

力強く、ママのおっぱいを咥えて離さない。
産まれてきてくれてありがとう。産んでくれてありがとう。
どうか、どうか、このまま強く育っていくんだよ。