着たい服がないなら、作ればいい。「マリー・クワント展」
過日、渋谷「Bunkamura ザ・ミュージアム」で開催中の「マリー・クワント展」へ。
ファッション業界では“ミニスカートの女王”と呼ばれ、1960年代イギリス発の若者文化「スウィンギング・ロンドン」を牽引したマリー・クワントの仕事をひもとく企画展。
マリクワの名前は、もちろん知っていた。
わたしが10代の頃、ギャル(死語)たちはみんな、あのモノトーンのデイジーのロゴがデザインされたメイクポーチや財布を持ち歩いていたし、ショッパーはサブバッグがわり。
超が付くほど地味っ子だったわたしも、リップ1、2本は持っていたと思う。
でも、マリー・クワントをデザイナーとして認識したのはこの企画展が初めて。
そうか、雑誌で見てずっと憧れていたツィッギーが着ていたミニのワンピース、あれがマリクワのデザインだったんだ、と初めて知る。
会場にずらりと並ぶ、マリクワデザインのアイテム。
「女性は貞操を守るべく、露出は控えるべきである」
そんな概念を覆したのが、マリクワのミニスカートだった。
ミニスカートが生まれたことで誕生したカラフルなタイツ。さらにホットパンツ、スキニーに、女性には相応しくないとされていたデニムやパンツルック…。
次々に登場する奇抜で、見たこともないアイテムやスタイルに、女性たちは目を輝かせ、同時に頭がカチカチのお偉方は度肝を抜かれ、眉を顰める様子が目に浮かぶよう。
いいなぁ、想像するだけでワクワクする。
ちょっと不思議だったのが、いわゆるボディ・コンシャスなデザインではなく、ストンとしたラインのものが多かったこと。
周りにいた女の子たちも、傍に展示されたモデルの着用画像と見比べながら「あれ、実際にモデルが着ている方がシュッとして見える」と呟いていた。
これはマリーが、大量生産が可能で、かつ、だれが着ても美しく見えるデザインを追求した結果。
伸縮性に富んだジャージー素材のワンピースは、身にまとった瞬間にその人のボディにフィットするように計算されているのだと思う。
「女性は注目を浴びるべき存在」
「ファッションはひけらかすのではなく、楽しむべきもの」
着たい服がないからとミニスカートを生み出し、女性起業家として、どんどん時代を切り拓いていったマリーに励まされた女性がどれだけいただろう。
マリー・クワントといい、ココ・シャネルといい、ファッションの概念が変わる瞬間を体感してみたかったなぁ。
ファッション業界人っぽいひとから、小さな女の子まで、幅広い客層も眺めていて面白かった。
ときどき、隣にいるこの人は、同じものを観て何を感じたんだろう、と思うことがある。
「着たいものだけ、着て生きていこう」というか、
「みんなが着たいものを着て生きられる世の中」にしていかなくては。
改めてそんなことを考える2023年1月。
ちなみにわたしの“着たいもの”は、
デザインよりも何よりも、
家で洗濯ができる扱いやすさが最優先だったりします。