はじまり

彼女とは同じ職場(お店)で働いていました。

彼女がいる店に自分が転勤して来たのが2016年の夏ごろ。自分には当時、別に付き合っている人がいたので、第一印象はよく覚えていません。

若くして結婚して、産休明けみたいなことをうっすら聞いていたくらいです。旦那さんも同じ会社の人だと聞いていたし、まさか自分がこの人とそういう関係になるとは思ってもいなかった。

不運なことに、私は転勤して約1ヶ月で、脳の病気に襲われました。なんとかリハビリを頑張って、社会復帰して彼女と一緒になろう。そう思っていた矢先、退院の1週間前にフラれる、という事件が起こります。そこで、私は「もう人を好きになることはない」と心に決めた。

無事に社会復帰して、無心で働くこと、約2年。私は星野源さんが好きで、今まであまり公にしてこなかったのですが、いつも好きなものに囲まれていたいと思うようになってから、スマホの着信音にしていた。それから何ヶ月か経った頃

「星野源、好きなんですか?」と声をかけられた。

最初は笑われるのかな、なんてことを思いましたが「私も好きなんです」と彼女は言った。

「その曲、タイトル曲じゃなくて、カップリングですよね。その曲を着信音にしてるってことは本気の人だなと思いました」

それから、たまに好きな曲の話をするようになりました。

「いつから好きなんですか?」と聞かれ

「もうソロデビューされてからずっとです」と答えた。

ある日、私は仕事が忙しく、イライラした1日を送っていた。何もうまくいかない。ちくしょう。帰ったらなにしよう。そんなことを思いながらパソコンを叩いていると隣の席に彼女が座り「今度、ライブやるらしいですね」と言った。

私もネットでチェックしていたので「そうらしいですね」と答えた。いつかライブに行きたいと思っていたけど、そんな友達もいないし。そんなことをぼやっと考えていると「一緒にいきませんか?」と言われた。

「いく!」

自分でもびっくりするほどの即答で、私はライブのお誘いをオッケーしていました。

「じゃあ決まりですね。私が応募してみますんで、結果が出たらご連絡します」

以前、送別会の幹事をしたときに連絡先は交換していたので、それから何回か「どの席にしますか?」とかの連絡が続いた。

2週間後くらいだったでしょうか。彼女から「当たりました!」というメールが届く。

「やった!」

私はスマホを握りしめて叫びました。しかし旦那がいる身で、子供も小さいだろう。旦那はオッケーなんだろうか?と思った。でもそれは向こうが確認を取った上で連絡してきてるんだろうし、まぁいっか。くらいに思っていました。

何時の待ち合わせにするか相談するときに「電車の乗り換えが不安」と言っていたので、ガイドしようと思ったら、彼女がどこに住んでいるのか知らないと思いました。

「すみません。ちょっと伺いたいんですけど。住んでるとこの最寄り駅ってどこなんですか?」と聞きました。

当時はホントにそれくらいの情報しか知らない関係だったんです。

当日、彼女の服装はとても可愛らしかった。ライブの前に食事をして、グッズを買って、少し話をしました。でも何を話したか覚えてないくらいの他愛ない話。

幕張で行われたライブは本当に楽しかった。乗り換えで「では」と別れてからわずか5分後に「乗る電車間違えました!」と連絡が来た時は笑った。でも楽しかったな。帰ってからもその余韻に浸って、なかなか寝付けなかったのを覚えている。

次の日、職場で彼女に会うと、なんだかいつもとは違う感覚になっているのを感じました。もっと近づきたいという気持ちが自分の中に芽生え始めているのを感じていた。でもそれはまだまだ自分のチカラでコントロールできるくらいのものでした。

それから何日か経って、クリスマスの日になった。突然「仕事終わり、予定ありますか?」と言われてドキっとした。

「どうしたんですか?」

「タイヤの調子がおかしくて。他の人に見てもらったらワイヤー出てるよって言われて」

休憩中に彼女の車を見ると、異常なほど片減りしていました。なんでこんなになるまで気づかないの?と思ったけど、それは言わないようにした。

「タイヤ屋さんに行きたいんですが、一人では不安で」

「そういうことですか」

でも自分もすぐには帰れなさそうだった。

「家まで頑張って走って旦那さんにやってもらったらいいんじゃないですか?」

「いや、旦那はやらないですね」

あ、そうなんだ、と思った。自分の中ではこういうのって旦那さんがやってあげるべきなんじゃない?と思っていたし。それに今日はクリスマス。家でご馳走食べる日なんじゃない?

結局一番近い量販店に行って来ることを促しました。

仕事終わりにメールしてみると「前輪だけ交換してもらいました!」と返信があった。思わず「よくできました」と送ってしまった。送ってからちょっと距離縮めすぎたかな、とも思った。でもいっか。クリスマスだし。

年明けに星野源(以下、源さん)のドームツアーがやるというので、彼女に甘えてチケットの応募をお願いしました。チケットの先行応募にはファンブックを買った人だけがもらえるコードがあって、自分はちょうどその年、源さんのファンブックを買いそびれていたから、というのがその理由です。

ドームチケットは当たるか不安だったけど、このとき、すでに自分は源さんのライブに行くというよりは、彼女と一緒に出かける、ということの方が目的になっていました。

「どうですかね?当たりますかね?」と聞かれたけど「きっと大丈夫です。いや、絶対当たりますよ」と言い続けました。そしたら本当に当たった。

「やりました!」

スマホのスクショと共に、歓喜のメールが届きました。これでまた出かける口実ができたと思った。

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