ここからどんどん関係は深くなっていきます。
飛行機の見える公園に行ってから、さらに距離は近くなりました。でもメールでは何度でも言っていたけど、好きだということを面と向かっては言えていないことに気づく。その機会を待っていました。
プール行きたいね、という話をしたら去年水着を買ったと言った。抵抗する彼女に、見たい!とゴリ押しして写真を送ってもらった。やべえ。かわいい。
引き続きことあるごとに「好きだ」ということは伝え続けました。会社で会っても、腰に手を回すくらいのことをした。とにかくまっすぐに。それだけだという気持ちだった。たまに「会社でおさわりはやめてください」というメールが来ることもあった。
「ハグしたい」「会いたい」
その言葉を伝えるたびに、彼女ははぐらかすように「うひょひょ」とおどけてみせた。まだキスをしていなかった。その先のことも考えたら興奮した。でもダメだという気持ちもあった。どこかでブレーキが効かなくなるという思いもありました。近所でお祭りがあって「どう?」と誘ったら「その日は家で用事があって」と言われて落ち込んだのをよく覚えています。
それでも「よし次の機会に」と思っている自分がいた。
また「今日は遅番で自由時間」という日がありました。もうこれは何かのメッセージだと思っていた自分は「じゃあ迎え来て。話だけでもしよう」と彼女を誘った。「えええ?」という感じだったけど、その日、自分は休みで、昼間に「パン屋に行きたい」と言ったら、気になっているパン屋の情報を教えてくれた。せっかくなのでおすすめのクロワッサンを、おみやげに買って来ていたのです。
「おみやげあるよ」と伝えたら「行くしかないですね」となった。
少し雨が降っていた。車の外からパンを渡します。少し話をしていたけど、雨が強くなって来たので「こっち乗る?」と自分の車を指差した。しばらく話をしていたけど、やっぱり我慢できなくなった。少しの間が空いて、自分は彼女の頭を撫でる。そのまま胸に手を伸ばす。
「だめでーす」
かなり強いチカラで腕を掴んで抵抗される。その後も何回か話の途中で胸に手を伸ばす。やっぱだめか。
20分くらい粘ったところで、彼女は眠くなったようでした。え、寝るの?でも時刻はとっくに24時を過ぎていた。無理もない。
最後のチャンス。一気に服を捲し上げる。そして下着が露出したところで、キスをした。何度も、何度も。眠いのか、なんなのか、彼女は抵抗する気すらなかったようだった。そのままブラジャーをずらした。駐車場の明かりに、わずかだけ照らされた、彼女の上半身。
気付くと、深夜の3時頃になっていた。
「そろそろ帰ります」
彼女は眠い目を擦って、家路についた。自分は部屋に戻り、布団に入っても、なかなか寝付けなくて、そのまま朝を迎えた。「家に着いた」というメールが来たことで、ホッとしていたが、頭は冴えたままだった。
しかし、どれだけ自分が好きだと伝えても、相手がなかなか首を縦に振らないことに、イライラを感じていた。答えくらい聞かせてほしい。いつもそう思っていました。
そしてその気持ちがプチ爆発したのが、8月の終わり。
前述した通り、自分は何度も好きだという気持ちを伝えていましたが、彼女からのちゃんとした答えがないことにイライラしていました。好きか嫌いかくらい聞かせてほしい。そう思っていた。
彼女からメールが来ても、1週間くらい既読を付けなかった。もういいやと思っていた。口をきくのも声を聞くのも嫌になった。会社で会っても、そっけない態度を取りました。そして1週間ほど経った頃でした。
倉庫に荷物を取りに行こうとして、商品を選んでいると、彼女が近づいてくるのがわかった。
「ちょっといいですか?」
「…なに?」
「なんでメール読んでくれないんですか?」
「ちょっとスマホの調子が悪くて」
「…そうですか」
「うん。仕事に戻っていい?」
「…うそでしょ」
「…」
図星だった。誘っても、好きだと言っても、予定があったり、相手からのリアクションがないことに嫌気が指していた自分は、そのことを伝えようとはしなかった。でも伝わっているんだろうな、とは思っていた。
他の従業員が来たので、話はそこでおしまいになりました。
その夜、22時を回ったくらいで、長文のメールが来ました。
「スマホの調子が悪いことはわかりました。そしてなんとなく最近そっけないこともわかっています。でもやっぱりそうだよね、とも思いました」
そして次のメールには
「私もあなたのことが好きです。絶対に言わないでいようと思っていたけど。一緒にいると楽しいです。全部。こんなに色んなことが合う人がいるなんて、って思います。ものすごく心地良くて、一緒にいたいなーと多います。でもうまくいかないのが人生ですね。ほんとに」
まさかの告白が来るとは思っていませんでした。自分と一緒になりたいと思ってくれている?でも旦那も子供もいるし、ということなのか?という解釈に落ち着きました。もういいや、と思っていたのに、そのメールが来たことで、自分はまた気持ちが戻った。
「気づかないフリや、はぐらかしててごめんなさい」
「誰かに嫌われてしまったり、自分から離れていくのがわかることほど怖いことってないです。だからどうしたらいいかわかりません。全部話して全部伝えたいけど、それが正解なのかもわかりません。ごめんなさい。ほんとにほんとにごめんなさい」
今思えば、この時点で足を洗っておけばよかった。でも自分は、それが旦那さんとのことだとばかり思っていました。それが間違いだった。ここから悪魔の2年間が始まる。