昨年も今年も涙の誕生日だった


一年前の誕生日。
暗い海の底にいるような日々を送っていて、誕生日も泣いていたのを覚えている。

好きな人から連絡が来なかったり、誕生日を祝ってほしいと思ってた人からおめでとうを言ってもらえなかったり、ちょうど就活を始めた時期で自分の欠点ばかりに目が向いていたりして、しんどくてしんどくて仕方がなかった時期だった。

泣いて泣いて、それでも立ち上がってなんとか一歩ずつ前に歩いていたが、その1週間後に好きな人に振られ、鬱寸前のところまで落ち込むことになる。
まるで、ただでさえ息ができない暗い海の底にいたのに、さらにサメに足を喰われたような感覚だった。サメに齧られたことはないけれど。

あれから一年。
その後もたくさん辛いことがあった。
ご飯が食べられなくなって、背中中湿疹が出て、咳が止まらなくなって、息ができなくなって、スマホが見られなくなって、言葉を口にすることができなくなって、毎日のように「死にたい」とノートに書いた時期があった。
たくさん泣いて、たくさん自分と向き合った。

そんな日々を乗り越えて、最近は少しずつ、生きる意味を、本質を考えるようになった。
本当に大切なことってなんだろう。
どんな生き方をすればいいんだろう。
もっと自分をより良くするにはどうしたらいいんだろう。
以前と比べ、自分の人生を豊かにすることを考えながら過ごすようになった。

前よりも客観的になった。
前よりも論理的になった。
前よりも欲に忠実になった。
前よりも強かになった。
前よりも変わった。

でも、今年の誕生日も、私は涙で迎えることになる。

きっかけは、ある人からの誕生日プレゼントだった。

久しぶりに会うその人は、以前と変わらず丁寧で、目の前の相手を大切にできる人だった。
優しくて、ちゃんと人として尊敬して、大切にしてくれていることが伝わってきた。
少しマイペースで、でも自分の大切にしているものに忠実で、余裕があって、前に会った時よりも大人な部分を感じていた。

あぁ、彼は私の何倍も大人なんだな。
俯瞰して、客観的に物事を捉え、自分が大切にしたいものを大切にしているんだな。
こういう生き方をしたいな。
私はまだまだ餓鬼なんだな。

最近の私は、周りと比べても意味がないと知りながらも友人と自分を比較して、楽しそうで充実している姿に嫉妬したり、自分のコンプレックスをSNSと比較して必死に治そうと励んでいた。
彼に比べて、なんてチープな人生を送っているのだろう。
あまりの自分の幼稚さに、目を覆いたくなるほどだった。

そして彼がくれた誕生日プレゼント。
それは、紅茶とコップのセットだった。

きっとこの文面だけを見ても、ただのお茶とコップじゃないかと思うだろう。
そう、ただのお茶とコップなのだ。

だが、私にとっては大きな意味をなす物だった。

私が彼に前にあげたプレゼントの倍はする値段で、私のことを考えてコップの柄を選び、お茶が好きだろうと考えて紅茶のセットをプレゼントしたのだ。
相手のことを考え、相手主体で行動する。
そんなに深く関わっていたわけでもないのに、ちゃんと相手を考えてプレゼントを選んでくれたのだ。

それに比べて私はどうだっただろう。

そこまでの仲じゃないかと勝手に予測して、気まずくない程度の値段にすることを一番に優先し、値段ばかり考えたせいでセンスのないプレゼントになってしまった。
とりあえず手紙を入れておこうと思い、一応の手紙を入れた。

自分主体の、ただの自己中心的な贈り物である。
相手を大切になんて、できていなかったと思う。
今まで周りから雑に扱われることが多くて悩んでいたが、それはきっと私が雑に扱っていたからなのだ。
きっと本当は大切にしてくれていたのに、それを受け止める私の器が小さすぎて溢れ出ていただけなのだ。
相手からの見返りを求めず、ただ目の前の相手を大切にしている彼の心は美しく、私は自分の器の小ささを痛いほどに感じさせられた。

あぁ、なんて私は子供なんだ。
周りから大切にされなくて悩んでる、なんて、それは自分の器が小さかっただけじゃないか。
何も見えていない。
何も分かっていない。
これじゃあ、うまく行くはずもない。

涙が止まらなかった。
でも、今年の涙は悔しさの涙だった。
去年はしんどさの涙で、それに比べたら、あの時よりも前進していると思う。
なぜなら、悔しいということは、その悔しさをバネに努力することができるからだ。
「しんどさ」は、ただ泣いて目を晒すことしかできないが、「悔しさ」は泣いたとしても前に進むことができる。

もっともっと強く、器の大きな人間になるために、自分を磨いて磨いて磨き上げなければいけない。
ここ数年の私の目標は、「強い女」だ。
でも、「強い」ってトゲトゲしていることではない。
経験をただただ積んでいるというわけでもない。
容姿、器量、知識、振る舞い…色々な要素が魅力で溢れることで、初めて本当の意味で強くなれると思う。

花が似合い、ジュエリーに見合う、強かな美しい女性になろう。
もっと本を読んで、欲に従って行動して、自分でチャンスを掴み取ろう。
周りを、自分をとことん大切にしよう。
当たり前を当たり前と思わないようにしよう。
改めて強く思った。

私は変わる。
悔しさで流した涙を拭いたら、あとは前に進むだけだ。
早速明日から、朝早く起きて、もらったコップに紅茶を入れて、飲みながら溜まっていたタスクをこなそうか。



もらったコップにはミモザの花が描かれていた。
花言葉は「感謝」。
プレゼントしてくれた彼には、感謝しかありません。
ありがとう。


The Bishopを聴きながら、
21歳を迎える私より

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