インターネットの安全を支える暗号化技術と今後の課題:SSL証明書が最長45日になるかも
先日、電子投票について話しましたが、現在のインターネットセキュリティは暗号化技術によって支えられていると言っても過言ではありません。
暗号化技術には大きく2種類あります。
共通鍵暗号:暗号化と復号化に同じパスワードを使用するシンプルな方式。
公開鍵暗号:セキュリティの基盤技術で、インターネット通信の安全を確保するために使用されます。この方式は、「公開鍵」と「秘密鍵」の2つの鍵を使い、片方で暗号化したデータはもう片方の鍵でしか復号できません。
公開鍵暗号の仕組みとその安全性
公開鍵と秘密鍵のペア
公開鍵暗号では、誰もが知ることのできる「公開鍵」と、自分だけが持つ「秘密鍵」が生成されます。片方で暗号化された情報は、もう片方の鍵でしか解読できないため、通信が安全に保たれます。暗号化と解読のプロセス
公開鍵で暗号化:メッセージを送りたい相手の公開鍵を使って暗号化し、相手の秘密鍵でのみ解読可能な状態にします。
秘密鍵で解読:相手は自分の秘密鍵を使ってメッセージを解読し、元の内容を確認します。
なぜ安全なのか?
公開鍵は誰でも取得可能ですが、秘密鍵は持ち主だけが管理します。このため、公開鍵で暗号化されたメッセージは秘密鍵がなければ解読できません。これによりデータの安全性が保たれます。公開鍵暗号の利用例
インターネット通信(HTTPS):データ暗号化やサイト認証に使用され、安全なデータ送信が可能になります。
電子署名:デジタル署名により、データの改ざんがないことや送信者の本人確認が行われます。
公開鍵暗号技術は、公開鍵でデータを暗号化し、秘密鍵で解読することで、デジタル通信の安全性を確保する重要な技術です。これにより、情報が盗まれたり改ざんされたりするリスクが大幅に減少します。
私自身、学生時代にこの公開鍵暗号技術を初めて知ったときには、その高度な仕組みに衝撃を受けました。
暗号化の進化と現状
この暗号化技術は、第三者が現実的な時間内に解けないほど複雑な計算に基づいて安全が保たれています。しかし、コンピューターの性能向上に伴い、暗号のビット数や複雑性を高めなければ、現実的な時間内で解かれてしまい安全ではなくなってしまいます。
例えば、RSA-2048は2048ビットの鍵を使用する公開鍵暗号で、安全な通信に利用されています。しかし、量子コンピュータの発展により、2030年代にはこの安全性が脅かされる可能性が指摘されています。量子コンピュータは「ショアのアルゴリズム」を用いて、大きな数の素因数分解を効率的に行えるためです。そのため、より高い強度のRSA-4096や、耐量子コンピュータ暗号(PQC)への移行が求められています。
SSL証明書の有効期間短縮
最近、AppleがSSL/TLS証明書の有効期間短縮を提案し、システム管理者たちの間で話題となっています。現在の398日から最長45日まで短縮する計画で、これが実現すると頻繁な証明書更新が必要となり、管理の手間が増大します。
SSL証明書の有効期間は以下のように段階的に短縮されてきました:
2015年以前:最長5年間の証明書
2015年~2018年:最長3年間の証明書
2018年~2020年:最長2年間の証明書
2020年以降:最長1年間の証明書
現在では、SSL証明書の最長有効期間は398日(約1年)です。量子コンピュータの進展により、既存の暗号技術に依存した証明書ではリスクが高まり、新しい技術への移行が求められています。
1年までの短縮は、年に1回のSSL証明書入れ替え作業としてなんとかお客様も受け入れてきましたが、これ以上の短縮となると、何か他にいい方法は無いのか?となる気がしています。例えば、SSL証明書の自動インストール(自動更新含む)などです。
当社でも、この動向を注視しており、今後の技術革新に対応できるよう備えていきます。