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私の原点:パソコン通信とネットワークの力

私がパソコンの魅力に引き込まれたきっかけは、中学生時代に体験したパソコン通信でした。しかし、その原体験をさらに突き詰めていくと、当時(1991年頃)に手に入れたROLAND社製のMIDI音源—CM-500が大きな役割を果たしていました。

CM-500はこんな機械 定価115,000円だった

クリスマスプレゼントとしてCM-500を買ってもらい、楽譜を一生懸命入力していました。楽譜を入力するだけで、様々な楽器で多重演奏できるというまさに夢のような箱でした。

ただ、そのデータの入力作業は大変で、1曲分を入力するのに多くの時間を要しました。ようやく完成した曲を聴ける達成感はありましたが、次第に自分で入力するだけでは物足りなくなり、MIDIデータを集めることに熱中していきました。

同じようにMIDI音源を持っていた人たちも、おそらく似たような悩みを抱えていたと思います。そんな中で、ふと気づいたのは、みんなで少しずつデータを持ち寄れば、大きなメリットを生み出せるということでした。

例えば、10人が1つずつデータを持ち寄れば、自分が持ち込んだ1つに加えて、9つの新しいデータを得られる。結果、全員が幸せになれる—そんな状況がとても魅力的でした。

この考えのもと、学生時代の友人やパソコン通信で知り合った人たちと、盛んにデータ交換を行っていました。また、私はパソコン通信のホスト局も運営していたので、データ交換のハブとして機能することができました。みんなに役立っている実感を持ちながら、自分自身もデータが充実していく—そんな嬉しいサイクルが生まれていました。

当時は「ネットワーク効果」という言葉を知りませんでしたが、今振り返ると、まさにその効果を実感していたのだと思います。この経験を通じて、次のような価値観が自然と育まれていきました。

  • 情報共有のプラットフォームには価値がある

  • 正の因果ループには大きな価値がある(ジェフ・ベゾスのナプキンスケッチのように)

創業者ジェフ・ベゾスがレストランの紙ナプキンに描いたとされるアマゾンのビジネスサイクル図

現在でも、データが集まるほど価値が増す仕組みに非常に魅力を感じています。そして、自社やお客様のビジネスにおいて、正の因果ループを生み出しているかを常に意識しています。

私たちの会社は、現在は受託開発が主な収益源ですが、自分たちが開発したシステムや集まったデータから自社ビジネスに挑戦したい、あるいはお客様のビジネスを一体となって成長させたい—そんな思いの根底には、この中学生時代の経験があるように感じています。

「ネットワーク効果」がもたらす可能性に気づかせてくれた中学生時代。この原点が、今も私のビジネス観の基盤となっています。