傍にいてくれて、ありがとう。
今朝も5時45分に
室内の照明が自動で点いて
カーテンが開く
この時間でも外が明るいのは
今が一番、日が長い時期だからだね。
空いたカーテンから入った光が
思っていたより眩しかったから
私もそう思っていた。
おはよう。
ベッドを出て
珈琲を淹れながら、
トースターにパンを入れる。
玄関が開く音がして
廊下を通って
こちらに足音が
近づいてくる。
キッチンのドアが
ガチャリと開く
ありがとう。
ありがとな。
ゴミを捨てて、新聞を持ってきてくれて。
珈琲を淹れてくれて、朝食を用意してくれて。
ここまでは、いつもどおり。
でも今朝はいつもの言葉を発しながら、
声を掛け合いながらだけれど
何となく空を切っているような、
言葉が滑っていくような。
なんでなのかはわかっている
目覚めたときや
一日の始まりくらいは
穏やかに過ごしたくて
昨晩のことには触れない
私もあなたも
このままだと、
どんな言葉も
体温のないまま。
ぬくもりのないまま。
トースターの音が鳴る。
あの・・・
昨日はごめんなさい。
昨日はごめんな。
せっかくひとりではないのだから、
言葉を交わせるのだから。
その言葉にぬくもりが欲しいのは
私もあなたも一緒。
顔を見合わせて笑う。
昨日の夕食を作ったときから
設定温度を変えてなかったせいで
パンが真っ黒だった。
あの、もうひとつごめんなさい。
いいよ。大丈夫。
朝から黒焦げのパンを前に
二人で苦しいくらい笑った。
ひとりだったら、
忙しい朝に
パンが黒焦げになったら
笑えない。
ありがとう。
ありがとな。
いつもそばにいてくれて。
鏡のようなわたしたち。
私が落ち込んでいれば、
あなたの表情も曇らせてしまう。
あなたが笑っていれば、
私も笑顔でいられる。
鏡映しになるのなら
ふんわりできたり、
ほっこりできたり、
わくわくしたり、
うきうきしてたり、
きゅんとしたり、
にっこりできたり、
いつもは難しいかもしれないけれど
なるべくたくさん
そうしていたいよね。
ずっと一緒にいるための
努力をし続けたいな。
この気持ちも
鏡映しになっているのなら
とても幸せだ。
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