【EURO特集①】バラック氏の語る「ドイツ代表の可能性や、とるべき戦術、レーヴ監督の退任」
—— 以下、翻訳 (インタビュー記事全文)
元ドイツ代表キャプテンのミヒャエル・バラック氏が、欧州選手権開幕を前に、現在の代表チームへの期待や、正しい人選、代表監督の交代について、ドイツのスポーツ専門サイト『シュポルトブザー』のインタビューで語ってくれた。また、自身の考える優勝候補や、注目選手たちの名前も挙げている。
シュポルトブザー:バラックさん、DFB(ドイツサッカー連盟)のトラブル、代表監督の退任、そして死のグループ...。欧州選手権を控えたドイツ代表を待ち受ける未来をどう見ていますか?
ミヒャエル・バラック(44):2018年W杯のグループリーグ敗退や、ここ数ヶ月の試合結果を受けて、代表チームには重圧がかかっている。ドイツサッカーを代表するチームであり、挽回への期待という点でね。ここ最近の結果に、私は落胆している。今大会は、ドイツの威信が懸かっている。これまでずっと、少なくとも準決勝には進出してきたからね。個々のクオリティーの面では、かなり揃っているが、いくつか改善の余地はある。強豪国と渡り合うには、まだ多くのことを改善しなければならないね。
ナチスとの比較、謀略、トップ退任...。最近、元キャプテンとしてDFBを恥に思うことはありましたか?
もちろん世間のイメージは惨憺たるものだった。一連の問題は、私利私欲や虚栄心によるものだったからね。アマチュアとプロの間における利害関係をコントロールするのは、組織の面から考えてもやはり難しい。だが、互いに尊敬とプロ意識を持って接し、あらゆるレベルでコミュニケーションを取り合うことが大切だ。どちらか片方がそれを怠ればうまく行かないこと、そして双方に一定の義務があることを、誰もが認識しなければならない。今後は、うまく仲介し、沈静化できる人が必要だろう。
こうした問題が、代表チームに影響を与えることはあるのでしょうか?
あまり影響はないと思う。接点はそれほど多くないからね。私の現役時代には、エギディウス・ブラウン元会長やゲアハルト・マイヤー=フォアフェルダー元会長は、私たち選手にとって身近な存在で、私たちと同じ思いを共有してくれていた。だが最近では、それとは異なる方向に進んでいるね。とはいえ、選手たちは、再び結果を出したいと思っているはずだ。
前線は良いが、後方は不安と言われる、ドイツ代表チームはどう見ますか?
個人的には、良い選手が揃っていると思う。だが、再び頂点に立つため、チームとして準備が十分かどうかは、まだわからない。前線に強みを持っているのは確かだ。後方に行くほど、ワールドクラスの選手は減ってくる。しかし、トーマス・トゥヘルはチェルシーで、堅固な守備、すなわちチームとしての守備もかなり重要であることをハッキリと示してくれたところだったね。
守備的ミッドフィルダーの選手層の厚さを考えると、ヨシュア・キミッヒを右サイドバックに据えるのもアリでしょうか?
私にとっては、これは非常に重要な問題だ。私は、最高の選手たちがプレーすべきだ、という考えを持っている。キミッヒは中盤で素晴らしい成長を遂げたほか、もちろんそのポジションでプレーしたいという思いも持っているだろう。とはいえ、中盤には、非常に優秀な選手たちが過剰にいる状態だ。スペリシャリスト2人を起用するために、なぜ他の2人も辛い思いをしなければならないのか?特に、キミッヒは右サイドバックとして育った。レーヴ監督は、選手たちとコミュニケーションを密に取り、もしこのような配慮が必要ならば、選手をその気にさせなければならない。チームもその思いを理解する必要があるだろうね。少なくとも、キミッヒを右サイドバックに起用するという選択肢は、十分考えるべきだと思うよ。
3バックか、それとも4バックでしょうか?
3バックが良い試合は、一見してわかる。そのため、私はこれに対して非常に慎重で、むしろチームが信頼しているシステムを選びたいと思う。つまり、4バックだね。
ゴゼンス、ハルステンベルク、ギュンター。左サイドバックの一押し選手は誰ですか?
レーヴ監督がこのポジションに3人の選手を招集したということは、彼自身、まだラインナップを決めかねていることを示していると思う。私も全く同じように感じているよ。ギュンターは経験が少ないので、レギュラーとして期待するのは難しいと思う。残る2選手のうち、どちらを起用するかは、本人たちの調子次第だろう。
ミロスラフ・クローゼのような典型的なストライカーが、チームには不在ですね?
このタイプの選手は少なくなっている。ハヴァーツ、ニャブリ、ヴェルナー、ミュラー、フォラントなど、全員が他のクオリティも持ち合わせているね。ヨギ・レーヴ監督がヴェルナーを起用し、彼が欧州選手権の舞台で何度もゴールを決めてくれることを私は期待しているよ。
ミュラーのポジションは、どこが相応しいと見ていますか?
彼は、バイエルンと同じくトップ下が最適だと思う。持ち前の嗅覚や間合いで、彼はストライカーをサポートするのに適した選手だ。また、彼は見方選手が持ち場を離れるのを信じられないほどよく予測し、そのスペースを埋めたり、うまく活かしたりできる。トーマスは信じられないほど複雑に動くチームプレーヤーであり、またディフェンス面のバランスも取れる選手でもある。
ミュラーとマッツ・フンメルスが代表に戻ってきたことで、チームのヒエラルキー(上下関係)にどのような変化がありますか?
まず何よりも、これは、経験とクオリティが戻ることを意味している。しかし、もちろん、キミッヒやゴレツカ、ギュンドアンなど、最近、責任の増えた選手たちにどう影響するかは楽しみだ。フンメルスやミュラーは、チームに前向きさをもたらすだけのインテリジェンスを持っているが、おそらく意見の相違も起こるだろう。とはいえ、先発としてプレーできない場面もあると思うが、そうした時は冷静でいなければならない。簡単な状況ではないものの、これは監督が自ら招いたことだ。
0対6のスペイン戦や、1対2の北マケドニア戦の敗戦直後に、レーヴ監督は辞任すべきだったのでしょうか?
私は、ドイツ代表監督というポジションは、常に2年サイクルで評価されるべきだと考えている。ただし、酷い結果の場合は別だ。基準となるのは大きな大会であり、それに加えて、チームの成長プロセスも加味して考える必要がある。2018年に、欧州選手権までレーヴ監督を続投させると決めたのなら、それを貫くべきだ。そうでなければ、確かに最近の傾向が良くなかったが、行き当たりばったりになってしまうのは明らかだ。
ハンシ・フリック氏は、彼の後任としてふさわしいでしょうか?
さまざまな状況を考えても、代表チームでの経験も含めて、彼が最適なソリューションであることは間違いない。彼に交渉の余地があったのは、DFBにとっては運が良かったと言えるだろう。彼の穏やかな物腰は、きっとチームの助けになるはずだ。そして、彼は、トップクラブのスター選手たちもうまく扱えることをすでに証明済みだ。
結局、この件で得したのは、またしてもオリバー・ビアホフでした。いざこざや不振の責任を取って、彼も辞任した方が筋が通っていたのではないでしょうか?
私には判断が難しいね。というのも、正直なところ、彼の正確な立場や決定権を、私は必ずしもよく分かっていないからね。代表チームに近い時もあれば、またアカデミーやユースの分野に近い時もある。そして、代表監督を探したり、マーケティングを担当したりすることもある。あるポジションを他人に任せろと言いたいわけではないが、立場や責任は、明確にしなければならないと思っている。そうでなければ、特定の人たちが批判的な評価を受ける機会がなくなるのも当然だ。
今大会の優勝候補は、どこだと思いますか?
フランスはその一角だ。彼ら自身もそう考えているだろう。残念ながら、私たちと同組のポルトガルも非常に強敵だ。彼らには、勝利のメンタリティを持つスーパースター、ロナウドに加えて、ディアスやフェルナンデスといった素晴らしい若手選手がいる。また、イングランドにも有望な選手たちはいるが、過度な期待は避けたいね。イングランドが抱える一番の課題は、こうした大きな期待に応えることだ。最有力ではないまでも、ベルギーもその一つだね。
今大会の注目選手は誰でしょうか?
フォーデンやマウントは、イングランドが勝ち進めば躍進する可能性がありる。ムバッペは活躍が期待され、おそらくフランスをタイトルに導くことができる最も可能性のある選手だろう。