マンション標準管理規約 平成28年改正点⑥管理費等の滞納に対する措置

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 管理費等の滞納は、そのまま回収しないでいると、その滞納分を他の区分所有者に負担を添加するなど管理組合の会計上でも運営上でも問題が多い。そのためにも、滞納された管理費等は確実に回収していかないといけない。

 平成28年の標準管理規約改正では、この回収に関する条項が追加されるとともに別添3で、回収のためのフローチャート、段階的措置やその考え方などの資料が増えている。適正な管理のためにも、管理費等の滞納を防ぐとともに、滞納分の確実な回収方法について理事等は知っておくべきである。

標準管理規約 第54条(議決事項)

 理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を決議する。
七 第60条第4項に定める未納の管理費等及び使用料の請求に関する訴訟その他法的措置の追行

標準管理規約 第60条(管理費等の徴収)

3 管理組合は、納付すべき金額を納付しない組合員に対し、督促を行うなど、必要な措置を講ずるものとする。
4 理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。
5 第2項に基づき請求した遅延損害金、弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用に相当する収納金は、第27条に定める費用に充当する。
6 組合員は、納付した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない。

コメント第60条関係

③ 管理費等の確実な徴収は、管理組合がマンションの適正な管理を行う上での根幹的な事項である。管理費等の滞納は、管理組合の会計に悪影響を及ぼすのはもちろんのこと、他の区分所有者への負担転嫁等の弊害もあることから、滞納された管理費等の回収は極めて重要であり、管理費等の滞納者に対する必要な措置を講じることは、管理組合(理事長)の最も重要な職務の一つであるといえる。管理組合が滞納者に対してとり得る各種の措置について段階的にまとめたフローチャート及びその解説を別添3に掲げたので、実務の参考とされたい。
④ 滞納管理費等に係る遅延損害金の利率の水準については、管理費等は、マンションの日々の維持管理のために必要不可欠なものであり、その滞納はマンションの資産価値や居住環境に影響し得ること、管理組合による滞納管理費等の回収は、専門的な知識・ノウハウを有し大数の法則が働く金融機関等の事業者による債権回収とは違い、手間や時間コストなどの回収コストが膨大となり得ること等から、利息制限法や消費者契約法等における遅延損害金利率よりも高く設定することも考えられる。
⑤ 督促及び徴収に要する費用とは、次のような費用である。
ア)配達証明付内容証明郵便による督促は、郵便代の実費及び事務手数料
イ)支払督促申立その他の法的措置については、それに伴う印紙代、予納切手代、その他の実費
ウ)その他督促及び徴収に要した費用
⑥ 第2項では、遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することが「できる」と規定しているが、これらについては、請求しないことについて合理的事情がある場合を除き、請求すべきものと考えられる。

標準管理規約 第26条(承継人に対する債権の行使)

 管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。




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マンション管理士 木浦学
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