マンション標準管理規約 第12条(専有部分の用途)

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2024年6月7日改正(条文微修正)


条文

(ア)住宅宿泊事業を可能とする場合
(専有部分の用途)
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。
(イ)住宅宿泊事業を禁止する場合
(専有部分の用途)
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第1項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

コメント

第12条関係
① 住宅としての使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。したがって利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する。
② 住宅宿泊事業法第2条第3項に規定する住宅宿泊事業については、第2項のように、可能か禁止かを明記することが望ましい。また、旅館業法第3条第1項の簡易宿所の許可を得て行う「民泊」については、旅館業営業として行われるものであり、通常は第1項の用途に含まれていないと考えられるため、可能としたい場合には、その旨を明記することが望ましい。
 旅館業法や住宅宿泊事業法に違反して行われる事業は、管理規約に明記するまでもなく、当然に禁止されているとの趣旨である。
 さらに、「区分所有者は、その専有部分を、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を行う用途に供してはならない。」のような規定を置くこともあり得る。
③ マンションによっては、一定の態様の住宅宿泊事業のみを可能とすることも考えられ、その場合は規約に明記すべきである。
 多数の区分所有者等による共同生活の場であり、その共同生活の維持のための法的手段が区分所有法上特に設けられているというマンションの特性に鑑みれば、個別のマンションの事情によっては、例えば、住宅宿泊事業者が同じマンション内に居住している住民である等のいわゆる家主居住型の住宅宿泊事業に限り可能とするケースも考えられる。

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 いわゆる家主居住型の住宅宿泊事業のみ可能とする場合の例
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業(同法第11条第1項2号に該当しないもので、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する専有部分と同法第2条第5項の届出住宅が同一の場合又は同じ建物内にある場合に限る。)に使用することができる。
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 さらに、個別のマンションの事情によっては、このようないわゆる家主居住型の住宅宿泊事業のうち、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用している専有部分において宿泊させる場合(いわゆる家主同居型)に限り可能とするケースも考えられる。

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 いわゆる家主同居型のみ可能とする場合の例
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業(同法第11条第1項2号に該当しないもので、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する専有部分と同法第2条第5項の届出住宅が同一の場合に限る。)に使用することができる。
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④ 新規分譲時の原始規約等において、住宅宿泊事業の可否を使用細則に委任しておくこともあり得る。

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 住宅宿泊事業の可否を使用細則に委任する場合
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者が、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。
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⑤ (イ)の場合において、住宅宿泊事業の実施そのものだけでなく、さらに、その前段階の広告掲載等をも禁止する旨を明確に規定するため、「区分所有者は、前2項に違反する用途で使用することを内容とする広告の掲載その他の募集又は勧誘を行ってはならない。」のような規定を置くこともあり得る。
⑥ 暴力団の排除のため、暴力団事務所としての使用や、暴力団員を反復して出入りさせる等の行為について禁止する旨の規定を追加することも考えられる。

解説

 第12条は、専有部分の用途を規定している。単棟型なので、「専ら住宅」の用途として規定されている。
 最新の標準管理規約だと住宅宿泊事業(いわゆる民泊)を可能かどうかで選択型の条文となっている。
 住宅宿泊事業法においては、11条において家主不在型と家主居住型に分かれる。「家主不在型」とは、6室以上で民泊事業を行っているもの又は事業者の本拠地と居室が騒音発生等をわからない程度の距離が離れているものを指す。「家主同居型」とは、家主不在型以外の住宅宿泊事業を指す。
 コメントの③の分類では、宿泊事業者である区分所有者が建物内に居住していることを前提としている。そのうえで「いわゆる家主居住型」を民泊居室が区分所有者の本拠地と同じ建物内としている。コメントの「いわゆる家主同居型」は宿泊事業者の本拠地である専有部分を民泊居室としている場合である。

 民泊を許可するにあたっての規約改定するためには、宿泊事業者が建物内に本拠地として居住の義務があるか、一住宅宿泊事業者による建物内民泊用居室の数に上限をもたせるか、コメントの「いわゆる家主同居型」のように自らの本拠地のみを民泊用居室として認めるか、とそれぞれを理解し、マンションの将来像を踏まえてしっかり話し合うことが重要。住宅宿泊事業者が建物内に居住していない場合など、住宅宿泊管理業者に管理を委託しているはずなので、場合によっては住宅宿泊管理業者の把握もするべき。
 コメント第19条関係にある通り、民泊事業者に管理組合への届出の義務を課した方が良い。都道府県知事への届出前に理事会の承認まで必要と考える組合は、届出前に理事会承認を要すると規約を書き換えること。
 住宅宿泊事業者は、宿泊日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別宿泊者数の内訳を都道府県知事に偶数月の15日までに報告しなければならない。管理組合も、住宅宿泊事業者が合法的に運営しているかどうかの把握も必要と思われるので、この報告のうち、マンション内の事業報告を抜粋して受け取ることも考えられる。

参照条文

区分所有法 第1条(建物の区分所有)
 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる

標準管理規約 コメント第19条関係
管理組合が事業開始を把握することがトラブル防止に資すると考えられるため、例えば、「区分所有者は、その専有部分において住宅宿泊事業法第2条第3項の住宅宿泊事業を実施することを内容とする、同法第3条第1項の届出を行った場合は、遅滞なく、その旨を管理組合に届け出なければならない。」等と規約に定めることも有効である。

標準管理規約 コメント第15条関係
⑤ 第3項は、家主同居型の住宅宿泊事業を実施する場合は、対象としていないと考えられる。

標準管理規約 コメント第19条の2
 暴力団事務所としての使用等の禁止については、第12条関係コメントを参照。

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