マンション標準管理規約 第17条(専有部分の修繕等)

←標準管理規約第16条 標準管理規約第18条→

2021年6月22日改正(申請時の電子的利用の可否)


条文

〔※管理組合における電磁的方法の利用状況に応じて、次のように規定〕
(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
(専有部分の修繕等)
第17条 区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)であって共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。
(イ)電磁的方法が利用可能な場合
(専有部分の修繕等)
第17条 区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)であって共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面又は電磁的方法による承認を受けなければならない。


2 前項の場合において、区分所有者は、設計図、仕様書及び工程表を添付した申請書を理事長に提出しなければならない。
3 理事長は、第1項の規定による申請について、理事会(第51条に定める理事会をいう。以下同じ。)の決議により、その承認又は不承認を決定しなければならない。
4 第1項の承認があったときは、区分所有者は、承認の範囲内において、 専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことができる。
5 理事長又はその指定を受けた者は、本条の施行に必要な範囲内において、修繕等の箇所に立ち入り、必要な調査を行うことができる。この場合において、区分所有者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
6 第1項の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事により共用部分又は他の専有部分に影響が生じた場合は、当該工事を発注した区分所有者の責任と負担により必要な措置をとらなければならない。
7 区分所有者は、第1項の承認を要しない修繕等のうち、工事業者の立入り、工事の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等工事の実施中における共用部分又は他の専有部分への影響について管理組合が事前に把握する必要があるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長にその旨を届け出なければならない。

コメント

第17条関係
① 区分所有者は、区分所有法第6条第1項の規定により、専有部分の増築又は建物の主要構造部に影響を及ぼす行為を実施することはできない。
② 修繕等のうち、第1項の承認を必要とするものは、「共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのある」ものである。具体例としては、床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け・取替え、間取りの変更等がある。その範囲、承認を必要とする理由及び審査すべき点については、別添2に考え方を示している。
③ 本条は、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け、取替え工事に当たって、共用部分内に係る工事についても、理事長の承認を得れば、区分所有者が行うことができることも想定している。
④ 専有部分の修繕等の実施は、共用部分に関係してくる場合もあることから、ここでは、そのような場合も想定し、区分所有法第18条第1項の共用部分の管理に関する事項として、同条第2項の規定により、規約で別の方法を定めたものである。
 なお、区分所有法第17条第1項の共用部分の変更に該当し、集会の決議を経ることが必要となる場合もあることに留意する必要がある。
⑤ 承認を行うに当たっては、専門的な判断が必要となる場合も考えられることから、専門的知識を有する者(建築士、建築設備の専門家等)の意見を聴く等により専門家の協力を得ることを考慮する。
 特に、フローリング工事の場合には、構造、工事の仕様、材料等により 影響が異なるので、専門家への確認が必要である。
⑥ 承認の判断に際して、調査等により特別な費用がかかる場合には、申請 者に負担させることが適当である。
⑦ 工事の躯体に与える影響、防火、防音等の影響、耐力計算上の問題、他の住戸への影響等を考慮して、承認するかどうか判断する。考え方については別添2を参照のこと。なお、承認の判断に当たっては、マンションの高経年化に伴い専有部分の修繕等の必要性が増加することも踏まえ、過度な規制とならないようにすること、修繕技術の向上により、新たな工事手法に係る承認申請がされた場合にも、別添2に示された考え方を参考にすればよいことに留意する。なお、工事内容が上下左右の区分所有者に対して著しい影響を与えるおそれがあると判断される場合には、当該区分所有者の同意を必要とすることも考えられる。
⑧ 承認の申請先等は理事長であるが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものである(第54条第1項第五号参照)。
⑨ なお、老朽化が進む等、近い将来に、建替え若しくはマンション敷地売 却(以下「建替え等」という。)が想定されるマンションにおいて、高額な費用をかけて専有部分の大規模な修繕等を行う区分所有者がいた場合には、その工事から数年後に建替え等の検討が始まると、当該区分所有者にとって二重の出費ともなりかねないほか、合意形成に支障が生ずる可能性がある。このため、近い将来に建替え等の検討の可能性があるマンションにおいては、修繕等について理事長の承認を求めてくる区分所有者に対して、近い将来に建替え等が検討される可能性がある旨の注意喚起を行うことが望ましい。なお、注意喚起があった上で、実際に修繕等を行うか否かはあくまで当該区分所有者の判断である。
⑩ 第5項の立入り、調査に関しては、施工状況を確認する必要があるものについて、工事中の現場で管理組合の理事等(又は組合から依頼を受けた技術者)が立ち会って確認することが考えられる。人手や工期などにより実際に立ち会うことが難しい場合には、抜き打ちで検査することをアナウンスしたり、工事業者に写真等の記録を取らせ報告させたりすることが考えられる。施工状況を確認する場合、図面の読み方や工事の進め方を知っている外部の専門家の協力が必要になる。確認が必要なものとしては、例えば、次のようなものが考えられる。
 ・全面リフォームを行う工事について、壁、床等をはがして耐力壁を撤去しないか、工事対象を確認する。
 ・躯体コンクリートにスリーブをあける際やアンカーを打ち込む際に、 鉄筋を探査してから穴をあけているか、手順を確認する。
⑪ 第6項は、第1項の承認が、修繕等の工事の結果、共用部分又は他の専有部分に生じた事後的な影響について、当該工事を発注した区分所有者の責任や負担を免責するものではないことを確認的に定める趣旨である。
 なお、工事を発注する場合には、工事業者と協議した上で、契約書に事後的な影響が生じた場合の責任の所在と補償等についても明記することが適切である。
 また、管理組合等が専有部分の修繕の記録を保管しておくため、工事業者から工事完了報告書等を提出させることも考えられる。
⑫ 第7項は、第1項の承認を要しない修繕等であっても、工事の実施期間中において、共用部分又は他の専有部分に対し、工事業者の立入り、工事 の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等の影響が想定されることから、管理組合が事前に把握する必要があるため、事前に届出を求めるものである。なお、第1項の場合と異なり、工事の過程における影響を問題とするものであり、工事の結果による事後的な影響を問題とする趣旨ではないことに留意する。また、他の居住者等に影響を与えることが考えられる ため、上記届出に加えて工事内容等を掲示する等の方法により、他の区分 所有者等へ周知を図ることが適当である。
 なお、上記届出を要する工事の範囲等の考え方は、別添2を参照のこと。
⑬ 本条の承認を受けないで、専有部分の修繕等の工事を行った場合には、第67条の規定により、理事長は、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うか、その差止め、排除又は原状回復のための必要な措置等をとることができる。第5項の立入り、調査の結果、理事長に申請又は届出を行った内容と異なる内容の工事が行われている等の事実が確認された場合も、同様である。
⑭ 本条の規定のほか、具体的な手続、区分所有者の遵守すべき事項等詳細 については、使用細則に別途定めるものとする。その際、上述した別添2の内容についても、各マンションの実情に応じて、参考にするとともに、 必要に応じて、専門的知識を有する者の意見を聴くことが望ましい。
⑮ 申請書及び承認書の様式は、次のとおりとする。

ーーーーーーーー
     専有部分修繕等工事申請書
○○マンション管理組合
理事長 ○○○○ 殿
                      年 月 日
氏 名 ○○○○
 下記により、専有部分の修繕等の工事を実施することとしたいの で、○○マンション管理規約第17条の規定に基づき申請します。
           記
1 対象住戸  〇〇号室
2 工事内容
3 工事期間    年 月 日から
         年 月 日まで
4 施工業者
5 添付書類  設計図、仕様書及び工程表
ーーーーーー
     専有部分修繕等工事承認書
○○○○殿
    年 月 日に申請のありました○○号室における専有部分の修繕等の工事については、実施することを承認します。
(条件)
          ○○マンション管理組合
          理事長 ○○○○
ーーーーーーー

解説

 平成28年の標準管理規約改定で大きく文章とコメントが追加された部分だが、修繕の申請をして理事会決議を経て理事長が承認するという流れは変わらない。理事会決議の際、標準管理規約に新設された別添2など、参考にする資料がかなり増えている。別添2は細かく、また専門用語も多いため、読み込むには専門家の助けが必要であろう。
 さらに、給湯器の号数アップ申請があった場合、建物に引き込まれているガス本管の容量を上げないといけなくなる事がある。このように承認の範囲が理事会の権限を超えた場合は承認に総会の決議が必要となる。
 本来、専有部分の修繕は、共用部分や他の専有部分に影響を与えない限り自由に行えるのが原則だが、共用部分や他の区分所有者に悪い影響がない事の確認など、管理組合は積極的に専有部分の修繕に関わる必要がある。
 専有部分の修繕の方法を規制する事も、マンションの将来を決める大事な部分である。専有部分の修繕に関してどのような規制をするか、時間をかけてみんなで話し合っていくべきでろう。理事が変わるたびに専有部分の修繕に対する承認が変わってはいけないので、承認基準を細則等で明記すべきである。

参照条文等

区分所有法 第6条(区分所有者の権利義務等)
 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。

標準管理規約 第35条(役員)

標準管理規約 第54条(議決事項)
 理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を決議する。
五 第17条、第21条及び第22条に定める承認又は不承認

標準管理規約第21条
4 前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。

標準管理規約第22条
3 前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。

ここから先は

0字

¥ 500

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?