マンション標準管理規約 平成28年改正点⑧コミュニティ条項の整理

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 コミュニティ形成は、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するものであり、マンションの適正管理を主体的に実施する管理組合にとって、必要な業務である。(改定前標準管理規約コメント第27条関係より)

 平成28年改定前は、管理費の使途に『地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用』と定められており、コミュニティ形成に管理費が使えると明示されていた。しかし、コミュニティ形成が全面に出て、拡大解釈されて管理費の中から自治会費や町内会費等が意思確認もなく支払われているケースもあった。

 平成28年の標準管理規約改定では、条文上からは「コミュニティ形成」という文言は無くなったが、コミュニティ形成に関する考え方はコメントに大きく追加された。

 条文からコミュニティの文言が無くなったから、コミュニティ形成に資する活動への支出はすべてできなくなったわけではなく、『マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第 3 条に定める管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」の範囲内で行われる限りにおいて可能である。』とコメントに書かれている。

 日常的なトラブルや円滑な大規模修繕の実施のためには、普段からのコミュニティ形成が重要なのは言うまでもない。

(改定前)標準管理規約 第27条(管理費)

 管理費は、次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。
十 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用

コメント第27条関係

② 従来、本条第十号に掲げる管理費の使途及び第32条の管理組合の業務として、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(に要する費用)」が掲げられていた。これは、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するコミュニティ形成について、マンションの管理という管理組合の目的の範囲内で行われることを前提に規定していたものである。しかしながら、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」との表現には、定義のあいまいさから拡大解釈の懸念があ
り、とりわけ、管理組合と自治会、町内会等とを混同することにより、自治会費を管理費として一体で徴収し自治会費を払っている事例や、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブル等が生じている実態もあった。一方、管理組合による従来の活動の中でいわゆるコミュニティ活動と称して行われていたもののうち、例えば、マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第3条に定める管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」の範囲内で行われる限りにおいて可能である。以上を明確にするため、第十号及び第32条第十五号を削除するとともに、第32条第十二号を「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」と改めることとした。
 また、従来、第十二号に「その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用」が掲げられていたが、第32条に定める業務との関連が不明確であったことから、「その他第32条に定める業務に要する費用(次条に規定する経費を除く。)」と改めることとした。上述の第32条第十二号の業務に要する費用は、本号あるいは別の号の経費として支出することが可能である。
③ 管理組合は、区分所有法第3条に基づき、区分所有者全員で構成される強制加入の団体であり、居住者が任意加入する地縁団体である自治会、町内会等とは異なる性格の団体であることから、管理組合と自治会、町内会等との活動を混同することのないよう注意する必要がある。
 各居住者が各自の判断で自治会又は町内会等に加入する場合に支払うこととなる自治会費又は町内会費等は、地域住民相互の親睦や福祉、助け合い等を図るために居住者が任意に負担するものであり、マンションを維持・管理していくための費用である管理費等とは別のものである。
 自治会費又は町内会費等を管理費等と一体で徴収している場合には、以下の点に留意すべきである。
 ア 自治会又は町内会等への加入を強制するものとならないようにすること。
 イ 自治会又は町内会等への加入を希望しない者から自治会費又は町内会費等の徴収を行わないこと。
ウ 自治会費又は町内会費等を管理費とは区分経理すること。
エ 管理組合による自治会費又は町内会費等の代行徴収に係る負担について整理すること。
④ 上述のような管理組合の法的性質からすれば、マンションの管理に関わりのない活動を行うことは適切ではない。例えば、一部の者のみに対象が限定されるクラブやサークル活動経費、主として親睦を目的とする飲食の経費などは、マンションの管理業務の範囲を超え、マンション全体の資産価値向上等に資するとも言い難いため、区分所有者全員から強制徴収する管理費をそれらの費用に充てることは適切ではなく、管理費とは別に、参加者からの直接の支払や積立て等によって費用を賄うべきである。

(改定前)標準管理規約 第32条(業務) 

第32条 管理組合は、次の各号に掲げる業務を行う。
十二 風紀、秩序及び安全の維持に関する業務
十三 防災に関する業務
十四 (略)
十五 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成
十六 (略)
十七 その他組合員の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保するために必要な業務

標準管理規約 第32条(業務)

 管理組合は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理のため、次の各号に掲げる業務を行う。
十二 マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務
十三 (略)
十四 (略)
十五 その他建物並びにその敷地及び附属施設の管理に関する業務

コメント第32条関係

⑧ 従来、第十五号に定める管理組合の業務として、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」が掲げられていたが、「コミュニティ」という用語の概念のあいまいさから拡大解釈の懸念があり、とりわけ、管理組合と自治会、町内会等とを混同することにより、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブル等が生じている実態もあった。一方、管理組合による従来の活動の中でいわゆるコミュニティ活動と称して行われていたもののうち、例えば、マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第 3 条に定める管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」の範囲内で行われる限りにおいて可能である。なお、これに該当しない活動であっても、管理組合の役員等である者が個人の資格で参画することは可能である。
 以上を明確にするため、区分所有法第3条を引用し、第32条本文に「建物並びにその敷地及び附属施設の管理のため」を加え、第十五号を削除し、併せて、周辺と一体となって行われる各業務を再整理することとし、従来第十二号に掲げていた「風紀、秩序及び安全の維持に関する業務」、従来第十三号に掲げていた「防災に関する業務」及び「居住環境の維持及び向上に関する業務」を、新たに第十二号において「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」と規定することとした。なお、改正の趣旨等の詳細については、第27条関係②~④を参照のこと。




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