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「申告した方がトクですか?」の前準備


111723 追記訂正中

そもそも

上場株式の譲渡損益について、
「私は、確定申告した方がトクなのでしょうか?」
の問いに対しては、ひとことで、
Yes/Noを答えられるものではありません。

このマガジンの最初のこの投稿では、前準備として、
あなたが今年行った上場株式投資について
「確定申告した方が、トクですか?」
その質問をされたときに、
我々税理士があなたからお聞きしていることを、
リストにしてみました。

これは、あなたが確定申告に向けて、
税務署に予約したり電話したりで質問するときでも、
ほかの税理士に質問するときでも、
準備を求められることであり、確認されることです。

あなたと、あなたの隣人では、これらの前提が異なりますから、
一年間の投資の利益の金額は同じでも、
確定申告すべき/する/しない の答えは異なります。

全てを聞き出さないと、お答えできない方もいれば、
このリストのなかの2-3個の確認で、答えがでる方もいます。
難しくてわからない人への最簡単パターンを、最後に書いておきます。

では、みてまいりましょう。

1.上場株式取引をした口座は?

あなたの証券口座について教えてください。

(1)証券口座をいくつお持ちですか?

 □ 1口座
 □ 2口座以上

(2)今年、取引をした証券口座の種類と数は?

 ①特定口座(源泉徴収あり)         
    □なし  □あり → 口座数 __個
 ②特定口座(源泉徴収なし) 
    □なし  □あり → 口座数 __個
 ③一般口座
    □なし  □あり → 口座数 __個
 ④NISA口座
    □なし  □あり
 その他
 ⑤会社の持株会など①から④以外の口座
    □なし  □あり

2.「年間取引報告書」等をすべて揃えます

「年間取引報告書」は、1年分をまとめて、口座ごとに1月に各証券会社から送られてきます。
確定申告が必要か、必要でないかの判断や、申告書の記載事項は、必ず、この「年間取引報告書」に基づいて行います。
1月末になっても、手元に揃わないときには、証券会社に再発行を依頼してから、確定申告の判断や、申告書作成に向けて準備を始めます。

給与所得者の場合、11月~12月の年末調整の手続きのなかで
あなた自身、または
あなたを扶養としている配偶者やご家族の
会社に提出する年末調整のための申告書に
株式譲渡益の金額を記載すべき場合と、どんなに利益が上がっていても不要な場合があります(本編別項目参照)。

本年分の修正と来年分の
『扶養控除等申告書』
『給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書』
に記載する時点では、まだ「年間取引報告書」は届いていませんから
この時点では、「見積額」となります。

配当は、
この「年間取引報告書」の記載がある場合のほかに、
受取方法によっては『支払通知書』や『支払調書』の準備が必要です。

3.口座ごとの「譲渡損益」「配当」「税額」

証券口座ごとの情報を取りまとめます。
口座ごとの譲渡益/譲渡損の金額によって、口座ごとに確定申告で申告する/しない、を分けて判断します。
「配当」は、特定口座で一緒になっていても、確定申告で申告する/しない、申告するなら総合/分離、を分けて判断します。

確定申告すべき/できる/しない の判断には、
① 株式の譲渡損益だけで判断できるケース
② あなた自身の株式投資損益以外の他の所得を合わせて判断するケース
③ あなたが「扶養」に入っている場合に、家族の所得により判断するケース
があります。
次からの項目で、判断のため、確定申告のための、株式投資以外の情報の前準備をお伝えします。

4.あなた自身の他の所得の種類と控除額は?

株式の譲渡損益についての確定申告は、単純ではなく、
「すべき」
「しなくていいが、した方がトク」
「できるが、ほかへの影響をふまえて判断」
「しなくていい」が、
上記1.から3.までのほか、
あなたの証券投資以外の所得や控除によってかわります。

(1)あなたの株式投資以外の所得は?

 □ なし   □ あり → 下記の準備する情報に進みます。

ほかの所得に応じて、準備する情報の例をおつたえします。
①給与収入・年金収入: 源泉徴収票
②事業所得・不動産所得: 
  収支内訳書または青色申告決算書(収入と経費の一年の集計)
③その他業務の雑所得:  収入と経費の一年間の集計
④その他の譲渡所得:
  不動産や金や車やFXや仮想通貨など、  売却したモノについての取得費と売買情報等
⑤保険金の満期やその他の収入: それぞれ必要な書類

(2)あなたが受ける所得控除・税額控除は?

 □ なし
 □ あり(年末調整で受けているもののみ) →源泉徴収票
 □ あり(年末調整で受けたもの以外にあり)
すべての控除に関する情報を準備してから、判断します。

なかには、株式譲渡を申告することで、受けられなくなる所得控除や税額控除があります。
受けられなくなる可能性のある、あなたの所得控除・税額控除の例として、
・基礎控除
・配偶者控除、配偶者特別控除
・住宅ローン控除
などがあります。

5.あなたが「扶養」されているとき

あなたは、
 □ 扶養されていない。 
 □ 扶養されているが、扶養から出てもいい。
 □ 扶養されていて、できれば扶養のままでいたい。

あなたが、配偶者や親族の税法上の「扶養」されている人として、
配偶者や親族の年末調整や確定申告で、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除を受けているときには、注意が必要です。

あなたが扶養されているとき、扶養者である配偶者や親族の
・給与所得者の場合、年末調整の内容
・その他の所得がある場合、その内容
を、お聞きした上で、
影響があるかどうか。影響額はいくらか。

配偶者や親族が確定申告や会社報告で変更しなければいけないか、不要か。
をみていきます。

上記1.から4.までで、あなた自身が
確定申告すべき
ときや、
確定申告しなくていいが、した方がトク
なときに、あなたの申告内容によっては、「扶養」の対象者から外れて、
配偶者や親族が受けていた控除が受けられなる場合があります。
どちらのメリットをとるか家族全体の支出管理の目から、また、
配偶者等の年末調整の内容に変更が生じたときに、配偶者等の確定申告義務が出たり、会社への報告義務と必要な変更への対応が必要となります。
会社との関係性や対応能力から、総合的に判断することとなります。

過去の繰越譲渡損失の利用のときにも、注意して下さい。

なお、「扶養」とひとことで言っても、
税法上の「扶養」
社会保険上の「扶養」
会社内規上の手当等の「扶養」
と、少なくとも3種類があり、その「扶養」の基準は全く異なります。

6.社会保険への影響

あなたの社会保険加入状況は、
 □ 自分の名前で国民健康保険
 □ 自分の名前で会社の健康保険・厚生年金
 □ 世帯主の国民健康保険
 □ 配偶者や親族の扶養として会社の健康保険・厚生年金

株式譲渡益の確定申告によって、影響がある場合、ない場合があります。

確定申告の義務や、選択肢がみえてきたら、詳しくは、社会保険労務士に相談したり、年金事務所等へ確認してください。(税務業務の範囲外)

7.配当の確定申告の選択肢

株式譲渡益だけでも、確定申告の選択肢があるところ、より混乱しますが、
配当の取扱いについては、選択肢として、
①申告不要
②申告分離
  おもに譲渡損失とのからみで選択
③総合課税
  おもに配当控除とのからみで選択
が、あります。
詳しくは、本編別項目にて。

8.株式譲渡損失がある場合

 □ すべて利益で、譲渡損失なし
 □ 譲渡損失の口座あり
 □ 今年は利益だが、過去の譲渡損失年度あり

1口座以上で、年間取引報告書で譲渡損失がある場合
2口座以上で、譲渡益の口座と譲渡損の口座がある場合
過去3年内に繰越してきた上場株式等の譲渡損失がある場合
には、
確定申告義務があったり、
所得控除やローン控除との関連があったりもします。

過去の譲渡損失の繰越は、いまからでも申告できる場合と、できない場合があります。
損失発生年度の「年間取引報告書」と提出した確定申告書をご準備ください。

9.その他

適宜加筆

<結論>判断いらず。一番シンプルで簡単なケースとは?

□ すべて特定口座(源泉徴収あり)口座での取引である。
□ すべての特定口座で譲渡利益がでている。
□ 過去の繰越損失もない。
□ 譲渡利益や配当の源泉税の還付を求めない。

この4つすべてに✓チェックが入る人は、
・上場株式の取引を確定申告しなくていい。
・自分も家族も年末調整の用紙に記入しなくてもいい。
・自分が受ける基礎控除やローン控除、配偶者控除等への影響はない。
・自分が扶養でも、配偶者や親族の控除額への影響はない。
・原則、社会保険への影響はない。
におさまります。

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