自動ドアを壊したおじいさん
おじさんが自動ドアを壊した。
自動ドアを素手で無理やり占めたときに、ドゴッという激しい音が響いた。待合室に並んだ誰もがおじいさんを見た。
「無理やりしめたんだよ。」
私の前にいた40~50代のおじさんが連れの男性にそう呟いた。
最近、自動ドアに押してくださいというボタンが増えた
私は毎日バスを利用する。バスは10分置きにくる。土日は8時以降は100人以上が並ぶ。100人いてもだいたい2~3回転で乗ることができる。
バスの待合室は自動ドアだが、最近になってようやくボタンを押して開くようになった。たぶん、人が近づくたびにドアが開いて寒いからだと思う。
自動ドアの前に立つおじいさん
定員になったのでバスを見送ることになった先頭のおじいさん。
おじいさんがドアの前にいるからドアが閉まらない。
そこにいる誰もが思っていた。
寒い。
そして後ろの人も思っただろう。もう1歩下がってくれと…。
ところがどっこい。そのおじいさんは自動ドアを無理やりひっぱって閉めた。
ドゴッ
引っ張ったときに、自動ドアの何かのシステムが壊れたようだ。
手動の自動ドア
それから、おじいさんはドアの番人となった。
自動ドアが壊れてしまったので、外からくる人は待合室(バスの列)に入れない。若い女性が来るたびに、ドアを開けてあげていた。若い女性限定で…。
男性や年配の女性が来たときは知らないふりをしていた。
壊れたのは無理やりドアを閉めたから?
おじいさんが自動ドアを無理やり閉めるまでは動いていたのを見ている。そして私もその入り口から待合室に入ったのだ。自動ドアを壊したおじいさんに何か言うべきだったのか。言うって誰にいうの?このおじいさん危ない人だったらどうする?
誰もしらないふり。誰もなにも触れない。
私も何も言えなかった。何もしなかった。
もし、逆切れされたらどうしよう。喧嘩になってしまったらどうしよう。そもそもどこの誰に言えばいいのかわからない。
モヤモヤした一日になってしまった。
*16