【若手社員が勝手に"イケてる企業のC.I.を切る"!】 「第86回:株式会社 モンベル」
今日は 若手社員の私が、成長している企業のC.I.を紹介します。アウトドアや登山が好きな人は誰もが知っている企業です。
第86回は、アウトドア用品の製造・販売、イベント運営・企画、傷害保険などを手掛け、日本型経営で成長している「株式会社 モンベル」です。
【企業概要】
*「モンベル」の事業を一言でいうと、「安全で快適なアウ トドア活動をサポートすること」です。その為には、様々なことを行っている企業ですが、その柱となるのが「アウトドア用品の開発・生産」です。 自分たちでアウトドア商品の企画から開発・販売までを行い、直営店は全国84店舗あり、北海道から鹿児島までカバーしています。また アウトドアのツアーやスクール運営まで行っていて、まさに アウトドア活動を全面的にサポートする事業を行っています。本社は大阪に構え、アメリカにも進出しています。売上「850億円」、社員数「625名」を超え、売上規模で見ると日本のアウトドア業界で第3位の企業です。
【企業沿革】
*「モンベル」は1975 年に創業されました。創業時は完全なメーカーとしての立場で、現在同様の「モンベル」というブランドで、アウトドア商品を企画・製造し、企業への卸だけを行っていました。今でこそ、製造して、そのまま直営店で販売する形態が当たり前になりましたが、昔はありませんでした。メーカーはメーカー、問屋は問屋、 小売店は小売店に機能が分かれていて、その中でビジネスが成り立っていた世界です。そんな中、1985 年に最初の直営店を出店したことが、大きな転換期となります。何故 直営店を出店したのか? それは、「モンベル」というブランドが正しく世の中に伝わっていなかったからです。卸売りの商売だと、小売店は売れるものしか置いてくれないのです。例えば、登山用品、スキー用品を置いている店が、「モンベル」の寝袋は売れるから置く。カッパも売れるから置くが、それ以外は置かない。つまり 売れる物だけしか扱ってくれないのです。小売店にとっては、最も効率のいいビジネスになりますが、ブランドの立場からすると「モンベル」のブランドの全体像を世の中に知って貰えません。そこで「モンベル」商品を 少なくとも全部見て貰える場所が必要だと考え、直営店の展開に踏み切りました。
*同時に、「モンベルクラブ」という会員制度をスタートさせています。当時 商品を製造や販売しているメーカーが会員制度をつくるという発想もありませんでした。「モンベル」のブランドを世の中に知って貰うと同時に、「モンベル」のファンをつくりたいという想いから、会員制度をスタートしました。そして 年会費1,500 円を頂きながら、直接 カタログをお客さまの手元に届けていました。それ以外にも、お客さまに直接行なうサービスとして、イベントやツアーを行う「モンベル・アウトドア・チャレンジ」もスタートさせ、会員限定のサービスを発信し続けました。今でこそ当たり前ですが、当時のネットがない時代に会員制度にここまで力を入れたのは、「モンベル」が初めてかもしれません。その時の努力が、今も「モンベル」のコアファンとして、会員全体を支え続けています。
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それでは ここで、「モンベル」の、"イケてるC.I."の一部を紹介します。
【モンベル 7つのミッション】
◯1.自然環境保全意識の向上
◯2.野外活動を通じて子供たちの生きる力を育む
◯3.健康寿命の増進
◯4.自然災害への対応力
◯5.エコツーリズムを通じた地域経済活性
◯6.一次産業(農林水産業)への支援
◯7.高齢者障害者のバリアフリー実現
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【若手なりの成長理由 分析】
ここからは、若手なりに「モンベル」の成長理由を、仮説ですが "4つ"上げさせて頂きます。
先ず、結論からいうと…
◆1.「『自分たちが欲しいものを創る』というこだわり!」
◆2.「地道な「ファン」づくりを推進(終身雇用)
◆3.「マーケティング戦略!」
の"3つ"です。それでは、1つずつ見ていきます。
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◆1.「『自分たちが欲しいものを創る』というこだわり!」
*「モンベル」の、モノづくりの一番の柱になっている考え方が、「自分たちが、欲しいと思えるものを創る」ことです。傲慢に聞こえ、且つ お客さまに気持ちが向いていないと受け取られがちですが、これには 訳があります。それは、「モンベル」の社員さん自身が最も厳しいユーザーなのです。「モンベル」は、現社長の「辰野氏」が創業しましたが、「辰野氏」自身が登山家でした。「辰野氏」が28歳の誕生日に「モンベル」を創業しましたが、当初より、自分たちが創りたい商品を創り、実際に山で自分たちで使ってみて、試行錯誤 して、また 新しい商品を創るという商品開発が行なわれてきたのです。そして これは、今でも引き継がれています。現在 正社員は「600人」以上となり、アルバイトのスタッフを合わせると「1,200 人」規模となっています。その殆どが、アウトドア好きで、登山などを行っています。その中から色々なアイデアが「年間2,000件」以上も出てきます。その中から選別して商品化を行い、更にブラッシュアップをし、メンテナンスをしていくには、会社の一部の人間のアイデアだけではできません。しかし「モンベル」の強みは、社員全員がアウトドアが大好きなところにあります。ちなみに 商品企画の際に、市場のトレンドを報告する社員がいても「意味がない。一切気にするな」と言っているそうです。モノづくりに関してはお客さまのご用を聞かないこと。これは徹底しています。
*そして「モンベル」には、基本コンセプトが"2つ"あります。
◯1つ目は…
「Function is Beauty」という言葉です。
日本語で言うと「機能美」です。字のごとく美しさを求めています。「モンベル」の暖かいアンダーウェアは、山に行かなくても着ているという人が沢山います。「山へ持っていくから、暖かければそれでいい」というのではなく、格好良いから街でも着れるものでないといけないという"美学"です。しかし アパレル的な発想という訳でありません。あくまで 機能優先でなければいけません。機能を考え突き詰めていくと、そこに"美しさ"が宿ってくるという考えです。日本語で言うと「機能美」ということです。「モンベル」のデザインの一つの大きな考え方です。
◯2つ目は…
「Light and Fast 」という言葉です。
これは「軽量で素早く行動できる」という意味です。アウトドア、特に山などの極限に近い状況に於いては、非常に重要なことです。着るものも含めて商品が重たいと行動が鈍くなります。すると 厳しい自然環境の中では、たちまちリスクが増してしまいます。出来るだけ軽量でコンパ クトなものづくりを心掛けています。
この"2つ"がモノづくりの大きな柱となっています。「何かをそぎ落とし、シンプルにして軽量化する。ただし 軽量化されただけでなく、汎用的に色々な機能をカバーできるデザインにすること」を、非常に大事にしています。勿論 日本ブランドらしい、かゆい所に手が届くような素晴らしいアイテム開発とラインナップが何よりの「モンベル」の極みです。
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◆2.「地道な"ファン創り"を推進していること!」
*モンベルクラブの存在が、「モンベル」の大きな柱となっています。現在は、全国に会員(年会費/1,500円)が「約45万人」います。その会員の方の特徴は、価値観の共有ができていることです。モンベルクラブに、年会費1,500円を払うことは、一つのハードルとも言えます。しかし このハードルがあることによって、非常にセグメントされたお客さまが集まっていると言えます。「45万人」の会員は、アウトドアが好きなのは当然ですが、 それ以外にも、例えば 自然や旅が好きであること、或いは 環境的な意識が高いことなど共通した一つの"価値観"があります。実は モンベルの売上の約半分は、モンベルクラブの会員の方が占めています。これは とてつもなく高い数字です。
*また モンベル会員のメリットは、コラボレーションのハブの存在です。全国の地方自治体と「モンベル」がコラボレーションし、そのフレンドエリアでは、「モンベル」が様々なサービスを提供しています。例え ば、宿泊施設や山小屋などを提供し、地域ぐるみで「モンベル」会員を歓迎しています。それぞれのエリアには豊かな自然があり、そのエリアの人たちは、自然を愛する人たちにぜひ来てほしいと思っているのです。大きな施設をつくり、それを観光の目玉にする時代は過ぎ去り、今は 自分たちが本来持っている地域の良さ・自然・文化を生かして活性化したい地域が多くなっています。そういう意味でもモンベルクラブは、その地域とのコラボレーションのハブとしての機能が非常に大きくなっています。
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◆3.「社員をファンにするための、"日本型経営"の存在!」
*何と「モンベル」は、終身雇用の"日本型経営"を目指しています。途中解雇などは絶対にあり得ません。能力主義や実力主義が叫ばれる昨今に於いて、日本型の終身雇用制度は時代遅れの産物のように見られる傾向があります。このような風潮の中で、"日本型経営"を目指す「モンベル」は異端に見えるかもしれません。こんなエピソードがあります。社長の「辰野氏」はある時、アメリカの経営者から「能力の劣る社員がいた場合でも解雇できないから、企業が収益を上げることができないのではないか」と質問を投げかけられました。それに対して「辰野氏」は、「もし あなたの子供が障害を持って生まれたり、勉強ができないからといってクビにできますか」と切り返したのです。これは 上場をしていない「モンベル」から言うと、至極 真っ当なことです。最近は 企業の社会的責任としてCSRとよく言いますが、「辰野氏」はその第一歩は、従業員の雇用を維持していくことだと考えています。自分の会社の従業員を都合よく解雇しながら、他で社会貢献をすると言っても信用できないのです。逆に言うと、採用の段階でアウトドア好きな人しか採用していないとも言えます。
*また これは、マーケティング的にも大きな意味があります。それは 会社に大事にされれば、社員はその会社のファンになるからです。強いブランド力を持つ企業の条件の一つに「社員に自社のファンが数多くいる」ということを挙げられます。自社のファンである社員は楽しく仕事をします。接客業であれば、仕事が楽しいと感じて"イキイキ"と働く社員がお客さまを引き寄せます。「モンベル」の強さは、こだわりの商品と、こだわりを持った社員の存在と言えます。
*また そのイキイキとした社員が生きる場所が、ユーザーが実際に「モンベル」商品をアクティビティに使うロケーションです。そのため「モンベル」は、登山口付近などに、直営店を出店しています。小売業の出店の定石は、流動人口の多い都心に出店するか、家賃が安く ローコストで成り立つ立地というのが常識です。しかし 「モンベル」は逆に、ユーザーがアクティビティのために実際に自社商品を使うロケーションに出店するということを行っています。そのため 店舗を訪れると、イキイキとした社員が、ユーザーが感じた困りごとや改善点を解決するような接客をしているシーンを頻繁に見ることができます。これらは都心店に出店した場合には、見ることができない光景です。アウトドア好きな社員が、アウトドア好きなユーザーに、アウトドアにより近い場所で接客できていること自体が、武器となっているのです。
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◎と言うことで…
「モンベル」について調べましたが、 社員自体が「モンベル」そして「アウトドア」を愛していることが、全ての源泉だと思います。そんな 「モンベル」は、売上拡大は目標にしないと明言しています。「競争しない」、「無理もしない、」「勝つ必要はない」と掲げています。しかし 実は、「負けるわけにはいかない」とも断言しています。何故なら「自分の社員を守る」には、勝つ必要はないが負けてはいけないからです。どんなに会社が「社会貢献」と叫んだとしても、自分の会社の社員を解雇する会社など、社員が信用できないと知っているからなのです。
そして 「モンベル」は、何故ここまで「アウトドア」好きの社員を集めることができたのか?
それは、会社が儲かっていない時、そして アウトドアが主流になっていない時から、アウトドアの良さを打ち出し続けていたからです。事実 創業時から、高学歴のアウトドア好きが入社したそうです。これは当時 ニッチなアウトドア市場に「モンベル」みたいな会社が存在しなかったからです。改めて 軸をブラさないことの大切さを感じます。因みに 私もアウトドアが好きな身ですが、「モンベル」の商品は見た目ではない"整合性"と"統一感"があり、本当に「カッコよさ」を感じます!
そんな 「モンベル」にやって頂きたいことが一つあります!
それは…
●「キャンプに特化したカメラマン派遣サービスです!」
*私もよくキャンプしますが、実はキャンプの撮影を請け負ってくれるカメラマンは殆どいません。何故なら キャンプとなると山奥に行くことが殆どであり、時間と労力がかかるからです。山の麓や登山口にハブを構えている「モンベル」だからこそできることだとも思います。
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◯それでは 最後に、C.I.について、若者なりに一言いわせて頂くと…
*C.Iを見るだけで、自然を愛する会社であるということがパッと分かり、大事にしている思想が理解できます。ただ 敢えて、一言いわせて頂くとしたら、企業が成し遂げたい不変的な想い(企業理念)が見当たらなく、少し 勿体ないと思いました。アウトドア好きな人は「モンベル」のことを知っていても、一般消費者には覚えて貰えない原因になると思います。私も アウトドアは好きですが、スノーピークさんだとメッセージが分かり易く"共感"し易いという強みがあり、一方で「モンベル」も、スノーピークさんと殆ど同じビジネスモデルと売上規模でありながら、一般消費者にまで中々 認知されていないのは、分かり易いC.I.が言語化されていないのも一つの理由なのかもしれないと思いました。本当に若者が生意気なことばかり言って、申し訳ございません。。。
出来れば、あくまで参考程度にですが、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を、一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。
*concanが考えるC.I.とは?
https://www.concan.co.jp/post/topics-ci
長くなりましたが、以上です。
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