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【若手社員が勝手に"イケてる企業のC.I.を切る"!】 「第10回:株式会社 一蘭 」

今日は 若手社員の私が、成長している企業のC.I.を紹介します。独自のシステムで、日本で最も人気のある『ラーメンチェーン』とまで、成長した企業が、ここ福岡にあります。
第10回は、「赤い秘伝のたれ」や「味集中カウンター」などの"ユニーク"な独自システムで知られる豚骨ラーメンの専門店「株式会社 一蘭」です。今では、日本全国だけに留まらず、世界にまで熱烈なファンを拡大し続けているラーメン専門店です。

一蘭イメージ

「株式会社 一蘭」は、本社を福岡の中洲に構え、平成7年12月に設立以来、九州をはじめ、関東・関西にも出店し、年々 売上を伸ばしています。売上高は、220億円(2017年)、直営店は国内外79店舗、社員数 280名・アルバイト数 6,805名(2018年)を抱える企業に成長しました。

創業は「1960年」にまで遡ります。元々は「中原 貞之氏」により福岡県福岡市百道で屋台「双葉ラーメン」として創業し、ラーメンの真ん中に唐辛子ベースの赤いタレを浮かせて提供したのが元祖とされています。1966年に福岡県小郡市へ移転し、屋号を「一蘭」と改名して営業を続けました。やがて、初代店主である中原夫妻が高齢となって廃業を予定するも、この時に現代表の「吉冨 学氏」よって屋号を買い取られ、一気に拡大することとなったのです。

その「吉冨 学氏」は、1964年12月5日、福岡県北九州市に生まれました。そんな吉冨氏ですが、19歳の時に、父が病魔に侵され闘病生活を始ました。当時 吉冨氏は、第一経済大学の学生でした。この時に、仕送りがなくなり、食堂でアルバイトを始めたことが飲食業との出会いとなったのです。新規開業の、オープニングスタッフの募集に応募して採用され、店主とチーフと吉冨氏の3人が立ち上げメンバーでした。この時に、経営を学び、『飲食ビジネス』にも興味を持ち始めたそうです。

吉冨氏の父は、常に吉冨氏に「おまえは商売に向いている。商売人になれ」と言っていたそうです。そんな 父が、 吉冨氏が20歳の時に他界しました。大学生だった吉冨氏に全くお金もなく、ここから 商売を自らの方法で模索する事となったのです。最初に始めたのは「ファミコン販売」で、ショップまで持ったが、儲けが出るまでには至りませんでした。それもそのはず、経営について吉冨氏は、一度も学んだことがありません。アイデアは良かったが、商売に変換する能力は まだ 修得できていなかったのです。次は、世間の人手不足の状況から「派遣事業」を開始しました。その後には、ある人との出会いをきっかけに、コンビニエンスストア関連の物流倉庫の請負業も行いました。しかし どの事業も長続きせず。。。

最終的には『ラーメン店』を開業することを決意しました。そして 元々「中原 貞之氏」によって 1960年に創業された『一蘭』を引き継ぐ形で、1993年「那の川店」をオープンしました。幸いにも 短期間で本社スタッフと店舗スタッフを合わせて60~70人の規模に成長させることができました。
しかし そんな吉冨氏を待っていたのは、信頼していた部下たちの裏切りです。当時の専務が30人の社員を引き連れて、突然 辞めていったのです。賞与を払った翌日のことでした。安月給で働かせ、吉冨氏自身は「金儲けしてビッグになりたい」とか「フェラーリに乗ってやろう」とか、そんなことしか考えていなかったそうです。
そして この時に、 吉冨氏は家族に遺書を残し新幹線に乗って叔父の地元 京都に向かい、「京都で死のう」と覚悟を決めたそうです。しかし 博多の田舎者がよく知らない京都に行っても死に場所なんて見つかるはずがありません。そんな時、ふと腰かけた その隣に老夫婦がいて、その会話が「明日からは原点に戻ろう。」そんな会話をされていたそうです。その他愛もない会話の中の「原点」という言葉が、吉冨氏の心に突き刺ささったのです。
吉冨氏の原点は「ラーメン」。また 生きることを決意し、ラーメンで再出発を決めたのです。それからは、お風呂でもトイレでもエレベーターでも、休日に家族サービスでジェットコースターに乗る列に並んでいる時でも勉強をしました。その勉強は、宗教や心理学「人の心」についてです。そして 行き着いたのは、商売をする上で、もっと大げさに言うと、生きる上で、最も大切なのは「己の心をコントロールし、他人の心を大切にすることなんじゃないか」「その為には、理念の確立が不可欠なんじゃないか」という結論でした。そこからは、理念を創り上げ、社員教育を徹底的に行う事で、『一蘭』も全国区に成長していく事になったのです。

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それでは、そんな「株式会社 一蘭」のイケてるC.I.の一部を紹介します。
【企業理念】
●従業員の心を大切にし、幸福度を高めます。
●人間性を高め、人間成長を求めていきます。
●すべての目標や言動は、【欲】でなく、【愛】で行います。
●常に勤勉で知恵を絞り、緻密な研究心をもち続けます。
●会社・商品・個人のブランド価値を高めます。

「お客様を最高に幸せにするために、従業員を大切にする」
お客様に最高の味とサービスをご提供するためには、従業員を大切にする事が好循環の始まりだと考えています。
従業員が満足し、喜びを感じながら業務を行い、かつ大切にされていると感じることができれば自然とお客様を大切にするのではないでしょうか。

「従業員の心を大切にし、幸せ度を高める」
社員を心より褒め、心より認める。そして日々の仕事に、心より感謝することを大切に考えています。
また、お金や物ではなく従業員一人一人の能力をじっくり把握した上で、適材適所を実現しています。
個々人の私生活における諸事情をある程度踏まえ、意志を尊重し、家族のように考えています。

「欲ではなく、愛で…」
例えば「お金持ちになりたいから医者になる」という人と「人助けしたいから医者になる」
という2人がいたとします。2人とも医者になれたとしても、前者は【欲】であり後者は【愛】です。どちらが美しいでしょうか。
世の中の出来事は、すべて【欲】からでも【愛】からでも成し遂げることは可能だと思います。
この世の歴史建造物や芸術品で例えると、【欲】で作られたものは破壊され【愛】で作られたものだけが残っていると言えるのではないでしょうか。


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【若手なりの成長の理由分析】

「株式会社 一蘭」の一番の成長理由は…
●「究極に豚骨ラーメンに絞り込んだこと」これに尽きると思います。『一蘭』には、ラーメン屋の定番メニューであるチャーハンなどはありません。勿論 チャーハンを販売すれば、数億円の売上を作れますが、メニューからチャーハンを「捨てる」ことで、豚骨ラーメン専門店というイメージで尖らせているのです。これによって、あらゆる"想い"や"施策"が「ブランドづくり」に集約されています。『一蘭』では、ブランドの定義を「その名前を聞いた時に、人々の頭の中で連想されるもの」としています。
そして、「豚骨といえば一蘭」→「ラーメンといえば一蘭」→「麺類といえば一蘭」→「ランチといえば一蘭」→「B級グルメといえば一蘭」→「食事といえば一蘭」と領域を広げていっているのです。
『一蘭』では、目先の売り上げに走らず、徹底的に「豚骨ラーメン」で尖らせ、永く続く仕組み作りをされています。


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それでは、上記のことを踏まえながら、更に成長理由を若手なりに仮説で"4つ"上げさせて頂きます。
■1.「どこにも負けない豚骨ラーメンへのこだわり!」
*一蘭は、「世界一豚骨ラーメンを研究する会社」と自称されているほど、ラーメンへのこだわりが半端ないです。それも、豚骨ラーメンだけに絞っているからできることです。
工場は、福岡県糸島市の本拠点工場と、関東の工場で全て製造されています。しかも 味の均一を図る為に、関東工場で製造されたものも、一部 糸島工場に移動させて常にチェックできる体制を取っています。
その『一蘭』の工場では、研究と情熱の全てを豚骨ラーメンに注ぎ、日夜研究が行われています。一杯のラーメンに携わる専属職人は40人以上です。しかも 製造技術が外部に漏れることのないよう、情報管理を徹底されていて、生産区域も製造に携わる者以外、足を踏み入れることを一切禁されています。工場従業員は全員、専属部署が決められていて、同じ工場内とはいえ各部署の製造エリアへの行き来さえも制限されています。「麺」の製造に携わる者は「スープ」製造区域に立ち入ることは一切許されず、また その逆も許されません。その為お互いの技術を知り得ることはなく、例え 工場長でも『一蘭』のラーメンを完全再現することは不可能なのです。因みに、ラーメンの味の要となる「出汁」のレシピを知る者は、社内でも「4人のみ」だそうです。
このように、どこにも負けないラーメンのへのこだわりが、『一蘭』の強みです。

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■2.「一蘭の代名詞である幾つもの独自システム!」
*『一蘭』の特徴と言えば、どこにもない「独自システム」です。例えば、『一蘭』の代名詞となっている「味集中カウンター」「替玉システム」「オーダー用紙」です。
〇「味集中カウンター」
*目の前に客席と厨房をさえぎる暖簾。そして 隣席を仕切る「仕切り板」を導入。
〇「替玉システム」
*声を出さずに、替玉プレートをテーブル奥のボタンの上に乗せるだけで注文ができるシステム。
〇「オーダー用紙」
*7項目それぞれから好みを選べ、食通のお客さまの微妙な味覚の違いにお応えできるシステム。

これらは、全てお客さまの声から、特に 女性の声を活かして生まれました。何故なら
女性にアンケートをとってみると、「1人でラーメン屋さんに入りづらい」「替玉を頼むところを見られたくない」といった声が多く上がったのです。そこで、周囲の目を気にすることなく、"味"に集中できる設計にしたのが始まりです。その為女性のお客さま比率の高さも特徴で、一般的なラーメン店だと15%程度と言われていますが、『一蘭』では「40%以上」となっています。

*これらの独自システムは、『一蘭』の本物の味を楽しんで貰うことにも繋がります。「おいしさ」は、味以外の情報や先入観でも左右されると考えられています。例えば、お客さまの中には「どのような従業員が作ったか」で味を判断する方もいて、まったく同じ味のラーメンを提供しても「店長が作ったラーメンの方がおいしい」というケースがあります。しかし、「味集中カウンター」であれば、誰が作ったのか分からず、あくまで 目の前の「一蘭のラーメン」として食べてくれるのです。つまり これらの仕組みによって、「一蘭のブランドストーリーに吸い込まれる」という設計がされています。その結果 何が起こるかというと、目の前のラーメンへの感度が高まり 『一蘭』を美味しく感じるのです。

*また、雑談もできない設計にされている為、食べるスピードも早くなり、座席回転率が他のラーメン店に比べても異様に速くなります。事実、他店と比較して、2倍以上もの回転率向上に寄与しているそうです。その為、『一蘭』の営業利益率は飲食店では「日本一」となっています。

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■3.「飲食店としては非常識な採用戦略と、それを実現できる体制づくり!」
*実は、『一蘭』の「独自システム」は、採用戦略にも繋がっています。どういう事かと言うと、独自システムではスタッフと お客さまが直接顔を合わせることがない為、結果として、例え 金髪でもピアスでもタトゥをしている人でも、『一蘭』のシステムでは受け入れる事が出来るのです。
これにより 新規採用が難しいと言われている飲食店経営に於いても、他社には 絶対にマネが出来ない破壊的な採用戦略を実行し、今なおスムーズに オペレーションを廻しているそうです。

*また、どんな人を採用しても、現場のサービスレベルが落ちないように生まれたのが、「店内のオペレーションモデル」と「セントラルキッチンシステム」です。
〇「店内のオペレーションモデル」については…
『一蘭』は、仮にスタッフさんのサービスレベルが低かったとしても、あまり それに気付かれないようなオペレーションモデルに仕上がっていて、全店舗で一律の水準が保てるような仕組みになっています。まず、店内に入ると自動音声で「いらっしゃいませ」、そして 席を立って出る時には「ありがとうございました」と流れるので、声を出していない人がいても一切気づかれないのです。また、自動券売機で注文をすると裏側にも通知が行き、前述した通り顧客は自らの手で書いた お気に入りをオーダーするので、スタッフさんは それを受け取ってその通りに読み上げるだけでいいのです。余計なコミュニケーションは、一切 何もありません。
〇「セントラルキッチンシステム」については…
工場で一定品質のスープ、麺、カット野菜などを行い 各店舗に配送をしています。つまり、各店内に於ける仕込みや調理は最小限となるようにオペレーションが組まれていて、どんなにスキルが低かったとしても、味には不具合が一切 生じない仕組みとなっているのです。因みに、『一蘭』では、麺の硬さも統一できるように、お客さまの席と厨房の距離なども「センチメートル」単位で、全て決められています。

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■4.「社員をとにかく大切にしていること!」
*『一蘭』では、お客さまを最高に幸せにする為に、従業員を徹底的に大切にしています。『一蘭』に入社すると、礼儀作法や、「人の生きる道とは」「人間性とは」といった人間教育を徹底的にされます。こう言う"エピソード"があります。
世界的に有名な某大企業から店舗数を「10年で1.000店舗にしませんか?」という業務提携の提案があったそうです。ところが、社長は この儲け話を丁重に断りしました。何故なら「その話を受けたら、外部から会社を大きくするノウハウを持ったプロの方たちが入ってくるかもしれない。その中には、部下を『おい!お前』と扱う人がいるかもしれない。これだと 私の教育とは、真逆を行ってしまうかもしれない。」社長は、このように考えたそうです。それくらい社員を大事にしているのです。

*『一蘭』には、組織に必要な階層と上下関係はありますが、役職で呼び合うことはありません。何故なら、風通しのよい会社を目指す上で、肩書きは邪魔になると考えられているからです。肩書きが あることで偉い気になったり、部下を 私物化したり、世間体を気にしたりする人が出てきます。不要な気を遣うことなく意見を上げ易い会社を目指されています。
また、『一蘭』には 約50項目からなる「人間性の評定表」があります。これは『一蘭』独自のものです。これには、部下が上司を評価する仕組みも取り入れられ、更には 嬉しかった出来事や感謝したい人の事も書けるので、色々な角度から人を見るようにされていて、とにかく 人を大切にする文化づくりが徹底されています。
事実、『一蘭』の離職率は「約6%」です。これは、飲食業の平均が「約30%」という事実と比べると、物凄い低い数字となっています。


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◎と言うことで…
「株式会社 一蘭」を調べてみましたが、「豚骨ラーメン」に絞ることで上手くブランディンを行い、その為の「人づくり・仕組み作り」が徹底されていて、とても勉強になりました。そのブランディングとは、決して小手先のものではなく、企業(社長)としての"存在価値"が明確になっているからこそ、成せる事なのだと思います。表層的な戦術は いくらでもコピーする事は出来ますが、『一蘭』の場合は、社長自身の原体験や実際のお客さまの声、そして 長年の「ラーメン研究」など、圧倒的な時間を費やして開発された物ばかりで、中々 他社が真似できるものではないと思います。本当に調べるだけで、私自身が 最も勉強になりました!

そして 今年になって『一蘭』初の「カップラーメン」を開発されました。実は、20年以上前から、お客さまからの商品化の要望に加え、数多くの企業からも共同開発のお話があったそうです。しかし、『一蘭』のこだわりを形に出来る技術の実現が難しく、満足のいく味わいのカップ麺を作る事は出来ませんでした。それでも「いつか必ず、お客さまの期待に応えたい」との想いで"試行錯誤"を繰り返し、それが 今回 やっと開発にたどり着いたのです。純粋に「ラーメンを楽しんで欲しい」という理由から、具材は 一切なしで、麺とスープ、そして「秘伝のたれ」で構成されています。
決して このコロナ禍を見据えて開発されたものではなく、偶々 このタイミングでの開発になったのです。私も思わず食べ見たくなりました!

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●最後に、若手なりにC.I.について一言いわせて頂きます。
C.I.から「社員の方々」と「ラーメン」への"愛"がヒシヒシと伝わり、グローバル企業という世界を見据えつつ、一番 身近なものを大切にされている姿が本当に"カッコイい"と思いました。それには、社長自身の辛い原体験を経て、身を持って学ばれた事でもあり、強い"想い"が反映されているのだと思います。何だか 社員の方々が、生き生きと働かれている姿を、勝手に想像させて頂きました。具体的に、理念浸透の為にどのような事を行われているのか気になりました!
ただ、若者なりに敢えて一言いわせて頂くと、「企業としての不変的な成し遂げたいゴール・世界観」が見当たらないことが気になりました。現状は、全て社員との約束の言葉になっていて、例えば「豚骨ラーメンで、世界中に日本食の素晴らしさを伝えへ、世界平和の一役を担う!」といった明確なゴール・世界観があると、より一般消費者からも共感を得られ易くなると思いました。

出来れば、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。
*concanが考えるC.I.とは?
https://www.concan.co.jp/post/topics-ci
生意気言って、申し訳ございません。
長くなりましたが、以上になります。


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◉コンカンのコーポレートサイトはこちら


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