【若手社員が勝手に"イケてる企業のC.I.を切る"!】 「第82回:株式会社 トリドールホールディングス」
今日は 若手社員の私が、成長している企業のC.I.を紹介します。競争の激しい飲食業界において急成長している企業です。
讃岐うどんに特化したレストラン・チェーン「丸亀製麺」を運営している「株式会社 トリドールホールディングス」です。
【企業概要&沿革】
*「トリドールホールディングス」は、神戸市に本社を構え、うどんチェーン店「丸亀製麺」他 20以上の飲食ブランドを運営している企業です。特に「丸亀製麺」は、2000年に兵庫県加古川市に1号店を出店して以降、20年10月末時点で国内859店舗まで成長をしました。「丸亀製麺」の売上は約904億円(2018年 国内のみ)となっていて、うどん業界ではダントツの1位を独走しています。
「丸亀製麺」の特徴は、讃岐うどんに特化したうどんと、トッピングだけに絞っている点です。具体的には、うどん、サイドメニューとしての天ぷらをはじめ、おむすび、いなりずしなどの限られた米飯メニューしかありません。しかし、うどんのメニューは幅広く、讃岐うどんの典型である釜揚げうどん、ぶっかけうどん、かけうどん、カレーうどん、肉うどんなど約16種類が提供されています。しかも、価格は釜揚げうどんが290円、他のうどんメニューも300円〜400円台が大半で、トッピングも含め平均客単価「570円」です。うどんと言ったら、「丸亀製麺」と連想してしまうほどの、専門店化しています。
そんな「丸亀製麺」ですが、元々は1985年に兵庫県加古川市で「トリドール三番館」という8坪の焼鳥居酒屋からスタートしました。そして創業から14年後の1999年、地域の家族客が気軽に来店できるファミリーレストラン型の焼鳥店「とりどーる」を出店します。しかしながら、2004年から世界的に大問題となった鳥インフルエンザの流行などにより、戦略転換を行います。鶏肉を主力食材としない新たな業態を展開したのです。それがセルフ式うどん店の「丸亀製麺」です。「丸亀製麺」自体は2000年に1号店がオープンしていますが、実は鳥インフルエンザが出店加速のきっかけになったのです。2008年には、東京証券取引所第一部に上場市場し、今では飲食業界に於いて急成長していることから、多くの注目を集めている企業です。
【うどん・そば市場について】
先ず、日本の「外食産業」全体の規模を見てみると、市場規模は「約25兆円」と言われています。これは 学校の給食など、家の外で食べ物を口にする全産業を概算したものです。その中でも、うどん・そば市場はマーケットの規模としては大きくて1兆円以上あります。しかも 面白いことに、少子高齢化が進む日本の「外食産業」は、年々 約2%ほど衰退していっているのに対して、実はどん・そば市場は、年々 約3%ほど成長している市場です。その為、うどん・そば市場は「最後の残された巨大マーケット」と呼ばれています。市場規模は大きくても、9割程度が個人経営の店によって成り立っています。ハンバーガーのマクドナルドやアパレルのユニクロのように巨大なガリバー企業が参入していないので、成功のチャンスが眠る市場なのです。
次に うどん業界だけを見てみると、「丸亀製麺」と「はなまるうどん」の2強と言われています。2位の「はなまるうどん」は約480店舗、売上高約270億円に対して、「丸亀製麺」は国内では約800店舗、更に 海外では約200店舗にまでなりました。「丸亀製麺」は売上高でも店舗数でも、うどん業界で日本一なのです。
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それでは ここで、「丸亀製麺」を運営する株式会社 トリドールホールディングス」の、"イケてるC.I."の一部を紹介します。
【ミッション】
●「Finding New Value. Simply For Your Pleasure.」
「すべてはお客様のよろこびのため、新しい価値を探求し続ける」
トリドールグループは、世界で通用する日本発のグローバルフードカンパニーになることを目指し、
国や地域、組織、業態を超えて、"Finding New Value. Simply For Your Pleasure.”のもと、
お客様に食体験を通じた感動をご提供いたします。
お客様のよろこびのために、新しい価値の発掘に果敢に挑戦し、
これまでも、これからも、変わり続けていきます。
【経営理念】
●「すべては、お客様のよろこびのために。」
”お客様と接する瞬間に、お客様のよろこびを最大化する。” お客様に感じていただく、この一瞬の価値を生むことの追及へ。
私たちは、常にチャレンジを続け、次のステージへ、未来へ動き続けます
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【若手なりの成長理由 分析】
ここからは、若手なりに「丸亀製麺」の成長理由を、仮説ですが "3つ"上げさせて頂きます。
先ず、結論からいうと…
◆1.「常識の逆をいく非効率で、差別化を行ったこと!」
◆2.「顧客層に合わせた、人材確保を行っている点!」
◆3.「日本の文化を押し付けない、『丸亀製麺』らしい海外戦略!」
の"3つ"です。それでは、1つずつ見ていきます。
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◆1.「常識の逆をいく非効率で、差別化を行ったこと!」
*実は「丸亀製麺」がしていることは効率的ではありません。経営コンサルタントが店内を見たら、即ダメ出しされるほどです。実は「丸亀製麺」は、その場で全て調理しています。その為、他のうどんチェーン店に比べると、キッチンのスペースが広く、スタッフの人数も多いのが特徴です。チェーン店なら、客席数を増やしてスタッフは少なめに抑えるのが、効率よく利益を上げる鉄則です。「丸亀製麺」は、この鉄則とは真逆の方法を選んでいます。効率よく利益を上げるなら、うどんも出汁も、天ぷらやおむすびや薬味もセントラルキッチンでまとめてつくり、店ではそれらを簡単に調理する程度にするのが一番です。これなら少人数のスタッフで運営できますし、人件費を抑えられます。しかも 各店舗にある「製麺機」は高額なので、初期費用もかかってしまいます。
*そんな 敢えて非効率を実践している「丸亀製麺」ですが、他のチェーンにはないものがあります。それが「臨場感」です。「丸亀製麺」は、視覚や聴覚、嗅覚といった"五感全体"で、湯気と熱気が立ち込める製麺所でできたてを食べるような体験を提供しています。店の入口には小麦粉の入った袋が山積みされていて、店で小麦粉から生地を作っていることや国産小麦100%であることが分かります。キッチンはガラス張りで、店に入ってすぐの場所に熟成庫や製麺機が配置されていて、小麦の香りがただよう中、麺を伸ばしたり切ったりしている製麺工程を見ることができます。調理する工程も見えるようになっていて、大釜から湯気が立ち込める中でうどんを茹でている様子、てんぷらを揚げている様子、お客さまの目の前でおむすびを握り、注文を受けてから調理する様子も見ることができます。一見すると非効率の様に思いますが、ここまで手をかけることで「美味しくて、しかも 5感で雰囲気を楽しんで貰えるのです。」これこそが、「丸亀製麺」の1番の特徴です。
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◆2.「顧客層に合わせた、人材確保を行っている点!」
*「丸亀製麺」では、パートやアルバイトでは中高年を中心に採用しています。それは 卒業などを理由に学生アルバイトが数年で入れ替わらざるを得ないのと対照的に、中高年は長く定着してくれる傾向があるからです。更に、普段から料理をしている主婦は、短時間で技術習得が可能です。また 地元の旬の食材や調理方法を熟知しているので、ごぼう天ぷらやゴーヤかき揚げといった地元の食材を使った地域限定メニューを提案し、それが採用されることもあるのです。また地域のイベント情報にも詳しいので来客数予測にも貢献できます。そもそも うどんを好むのは中高生の方が多く、そのお客さまの心理がわかるのは、当然 中高年のスタッフなのです。
*また「丸亀製麺」では、地域に寄り添うことを目標にしています。勿論、未経験でも調理・接客が行えるよう、仕事内容は各工程ですべてマニュアル化されていて、短期間で習得できるような工夫がされていますが、同時に マニュアルで細かく定めすぎず、自ら考えて行動することを基本として、目の前のお客さまに対して"臨機応変"に対応すること、自分たちで創意工夫することが求められます。「丸亀製麺」のキーワードは、"暖かみ"であり、来て良かったと思えるお店を目指しています。
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◆3.「日本の文化を押し付けない、『丸亀製麺』らしい海外戦略!」
*「丸亀製麺」は、国内859店舗ありますが、更に驚くのは海外10の国と地域に進出し、226店舗を展開していることです。因みに進出先は、イギリス、アメリカ、フィリピン、カンボジア、ベトナム、台湾、インドネシア、ロシア、中国、香港となっています。そんな「丸亀製麺」が海外展開の際に拘っている点が、「現地の好みに合わせてアレンジを行う点」です。現地のニーズに合わせた商品開発を行い、更にかけうどんなどの出汁も現地の好みに合わせて味を調節しています。例えば アメリカではカツオの風味が強すぎるという声があったため、魚の香りを抑える工夫をしています。
メニュー開発も運営も、現地が主導的に行っています。海外市場において事業を成功に導くには、立地から含めてその地域に合わせたノウハウや市場の理解が必要なのです。そして これは、「丸亀製麺」だからできることです。何故なら、先述した通り、「丸亀製麺」はセントラルキッチンを持たずに、その場で調理しているからです。もし セントラルキッチンを持つと、全ての味が統一化されるだけでなく、出店範囲も狭まってしまいます。そうなると、「丸亀製麺」らしい"臨場感"の演出などもできなくなってしまうのです。
*因みに海外の「丸亀製麺」で、一番 売上が高い店舗は、ハワイのワイキキ店です。ハワイでうどんなんて売れそうもありませんが、実は大人気なのです。基本メニューは日本と同じだが、マッシュルームやアスパラの天ぷら、スパムおにぎりなどの独自メニューを置いたり、出汁をぬるめにしてカレーうどんのスパイスを多めにしたりと柔軟な対応をした結果、現地人の利用がとても増えています。「日本食だから、日本風に」などと硬いことを言わず、好きなように食べていただくのが「丸亀製麺」流なのです。
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◎と言うことで…
「株式会社 トリドールホールディングス」を調べましたが、チェーン化することで均一化された効率のよい事業をされていると思っていましたが、むしろ 逆で非効率で差別化されていることに驚きました。ただ 考えてみると、私の丸亀製麺さんのイメージは、その場で職人さんが麺を湯掻いているイメージで、それは 他のうどんチェーンのイメージとは違うものとして残っています。
ただ 勘違いしてはいけないことは、「非効率」は「効率」の中にあるということです。事実「丸亀製麺」の凄さは、右脳的な発想だけでない、データに基づいた左脳的な施策です。実は「丸亀製麺」のマーケティングを行っているのは、USJを復活させたことで有名な、「森岡 毅氏」です。「森岡氏」は、売上を構成する7つの要素(認知率、利用率、出店数、購入率、再購入率、客単価、購入頻度)を徹底的にデータ分析しました。そして 「ターゲットをどこに設定するか(WHO)」、「丸亀製麺が売っている価値(WHAT)」、「それを伝える戦術(HOW)」を明確に言語化したそうです。例えば マーケティングから、「うどんを食べる人:95%」となったが、その内「うどんを外で食べる人:10%」ということが分かりました。その主な理由は「家で食べるうどんで、十分に美味しいと思ってたから」という理由が殆どだったのです。その為、「丸亀製麺」では「丸亀製麺は食べに行く価値がある」という認知を広げるための施策を作り上げ、実施しました。この様に、右脳で情緒的な温かみを演出し、左脳で徹底的にデータに基づいた戦略を行っているのです。
ここで 「丸亀製麺さん」がやったら面白いことを、自分なりに考えてみました。
それは…
●移動販売形式販売の「うどん屋台」です。
冗談のように聞こえますが、移動販売は低コストの上、ニーズのある場所へ直接出向くことができるので、効率がいいと思います。且つ 本格麺をその場で茹でて提供できるため、クオリティも保たれ、「丸亀製麺」にはマッチしている販売方法だとと思います。プロモーションとしては、大規模な広告はうたず、SNSと自社アプリのみで拡散することで、広告コストを抑え、レア感を高めて話題を作ると面白いと思いました。
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◯それでは 最後に、C.I.について、若者なりに一言いわせて頂くと…
*会社の成長に合わせて一新されたC.I.で、目指すべきところは「世界」だということを表しています。理念を英語で表現することで、世界に進出する覚悟を感じます。また C.I.には「うどん」という言葉が一つもでてきません。「トリドールホールディングスさん」はグローバルフードカンパニーとして、主力の「丸亀製麺」に加えて、20以上の外食ブランドを約40の国と地域に展開しているからです。このあたりに「トリドールホールディングスさん」の覚悟を感じます。
また「トリドールホールディングスさん」のC.I.の特徴は、敢えて曖昧に表現している点です。実は 前述した通り「トリドールホールディングスさん」は「人間味」「臨機応変」を大切にしています。C.I.に対しても同様の考え方で、「人によって解釈が異なっても良い」と考えられています。むしろ、C.I.を起点に議論が生まれることを重視されています。ここまで成長した、「トリドールホールディングスさん」らしい言語化の仕方だと思いました。
出来れば、あくまで参考程度にですが、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を、一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。
*concanが考えるC.I.とは?
https://www.concan.co.jp/post/topics-ci
長くなりましたが、以上です。