妄言 - まばたき
人間には、全ての個体がまったく同時にまばたきをし、人類の視覚による観測が完全に行われない瞬間がある。これはある一定の周期で発生しており、それは19年という波長を有している。
神や妖は、このときにのみその活動を許されている。人に見られたら死ぬ、などということはない。事実400年前まではそのような決まりなどなかった。だが数が増えすぎた。あまりにも簡単に人の目にさらされるようになったそのものどもは、その影響で己の神聖ささえも失いつつあった。そして誰かが言い始めた。
「我々は人の目を忍ばねば、在ることすらできないと知るべきだ。つつましく、しずかに」
人に混乱を及ぼすという理由もある。
そうして、皆がそれに従った。
一切の人の目に、暗幕が下りる。歩き、ゴンゴンと動く音だけ聞こえる。