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すゑひろがりずと諸国漫遊記

8月8日、東京・観世能楽堂においてすゑひろがりずの全国ツアー「すゑひろがりず結成拾周年全国行脚~諸国漫遊記~」が千穐楽を迎えた。大阪・なんばグランド花月を皮切りに、札幌・仙台・福岡・広島・愛媛・名古屋をめぐり、終着点の東京公演にたどりつくまで4か月。そして本日9月5日、広島での「全国行脚外伝」を以て、いよいよ結びということになるのだと思う。家内安全、無病息災――晴れの大舞台、全公演の幕が無事にあがったことが一ファンとしては何より嬉しい。記事を書くたびに思うことではあるのだけれど、近頃は本当に時勢の動きが目まぐるしい。加速していく変化の渦と、さりとて変わらぬ静止した日常と。私もすゑひろがりずの完走までの道中を目撃した一人である。ぴりっとした口上から始まる、にぎやかな夢舞台。そのゴールはちゃんと、「めでたしめでたし」であってほしいと願った。


ツアー初日の公演を収めたDVDの発売を記念したインタビュー記事が印象的だった。

大入の客席から起こる万雷の拍手――これはNGKに限った話でもないだろう。どの公演とは書かないが、私も大きく手を打ったうちの一人だ。一体となった会場で、熱量を持った拍手の中にいるあいだ、言い知れない感動があった。どれだけ配信が普及しようとも、客席に座り、周囲と空間を分かち合い、良い場面を共有することはやはり幸せなことなのだ。


南條「とにかく冒頭、幕が開いた瞬間の2人の表情を見ていただきたいです。あれがすべてです。僕ら、注目していただくようになった時期がちょうど去年の最初の外出自粛期間中で、無観客でのライブが多かったんですよ。だからNGKの幕が開いた時の拍手は、ほんまに初めて聞いたくらい大きい音で。びっくりして、なんとも言えないあの表情になっているんです」
三島「前回の単独ライブはまだ『M-1グランプリ2019』の前で、141席の大宮の劇場(大宮ラクーンよしもと劇場)が満席にならないくらいでした。それが今年、こうやって全国回らせてもらって…。本来僕らが楽しませなければあかんのに、お客さんからの『すゑひろがりず、よかったね!』という声が聞こえてくるかのような拍手やったんですよ。それはその後、全国を回っていても感じますね。めちゃくちゃうれしいです」
https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1012391/


ただただ送り続けた拍手と、そのときの高揚感に名前がついてかえってきた。何かが届いていたのだと、ちゃんと届いていたのだと。「すゑひろがりず、よかったね!」――鈴なりの拍手を言語化したのは、裃をつけ、緋毛氈の上でそれを受けた本人たち自身だった。


あとがき

表には出てこない苦労などもあるのだとは思いますが、色々な事情でキャンセルとなる公演が相次ぐなか、予定通りに全国8か所を無事に回り抜けたこと、本当にすごいことだなと思います。ばしっと決めてかっこいいところから、うまくいかずにとぼけたところまで。隅から隅までずずずいっと、すゑひろがりずが大好きです。

お二人を迎える拍手の音、いまもはっきり思い返せます。すごく感動的な空間でした。「すゑひろがりず、良かったね!」を1番添えたいツイートを引用して、この記事は締めたいと思います。


出典

[1] amazonすゑひろがりず「すゑひろがりず結成拾周年全国行脚~諸国漫遊記~(通常版)」(2021)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0957X2JFM/

[2] お笑いナタリー「すゑひろがりずが観世能楽堂で舞う、10周年ツアーに幕下し“新章”へ」(2021.8.9)
https://natalie.mu/owarai/news/440107

[3] TVガイド「「『すゑひろがりず、よかったね!』という声が聞こえてくるようでした」――全国ツアー初日の模様を収めた初DVD発売記念インタビュー」(2021.8.6)
https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1012391/

[4] Twitter すゑひろがりず南條(2019.12.23)
https://twitter.com/gsopnanjo/status/1208777025957163008

[5] Twitter すゑひろがりず三島(2019.12.22)
https://twitter.com/SUEmishima/status/1208747323330686977


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