辞めてよかった?
在籍中にお世話になった先輩に会ったのは、会社を辞めて以来初めてだった。
入社してから、会社のある日はほぼ毎日顔を合わせていた。
連続して顔を合わせないのは、夏季休暇やお正月の時くらい。
だからこうして3カ月ぶりに会うのと、なんだか照れてしまう。
なにも、なにも変わらなかったし、話し始めると最後に会ったあの日の5日後くらいな気がした。
一通りの近況報告をしたあと、
会社、辞めてよかった?と聞かれた。
考えたこともなかった。だから、その質問に驚いていた。
ただただ夢を追いかけた結果、気づけば今この場所に立っていた。そんな感覚だった。
もちろん会社を辞めたといことは、わたしの中でもインパクトのある出来事だった。でもそれは、必要事項であり、ひとつの通過点だった。
だから辞めてよかったとも、悪かったとも思っていない。辞めること以外の選択肢はなかったのだから。
でも同時に、わたしが先輩の立場だとしたら気になるよなとも思った。
今とても楽しく充実した毎日を送っていることを考えると、「辞めてよかった」という表現になるのかもしれない。
しかし、アイドルたちが所属するグループから脱退する際に「卒業」という言葉を使用する。その感覚が一番近いのかもしれない。
先輩にはお世話になった。たくさんたくさん迷惑もかけた。そしてある意味で、会社を辞めるということは裏切ったことにもなると思う。
だからこそ、この道を究めなくてはいけない。いつか恩返しがしたい。先輩に教わったことすべてをじぶんの軸としよう。
先輩に胸をはって、報告ができるように。