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Web3と日本創生

今、人生でいちばん緊張している。

2024年12月16日のセッションは、あらゆる意味で、日本における「Web3」を総括するような議論になるかもしれない。

2024/12/16開催「Web3と日本創生──2025年の世界経済を見通し、日本の「価値最大化」戦略を考える」|CoinDesk JAPAN / N.Avenue Club「Year End Party」

僕が最高にリスペクトする政治家経済学者起業家の3人を迎えて、モデレーターを務めさせていただく機会など、きっと二度とないだろう。

人生で最初で最後になるかもしれない。この大事なセッションに向けて、今「Web3」について思っていることを書いておきたい。

僕(コムギ)は2019年から仮想通貨メディアやブロックチェーンカンファレンスの立ち上げを経験し、2021年からWeb3ファンドのリサーチャーを務め、2023年に本『デジタルテクノロジー図鑑』を書いた。業界に飛び込んで、もう5年が経った。

現状はどうか? 主に7つの良い時期・悪い時期を経て、着実に仮想通貨の時価総額は伸び続けている

Web3の歴史(『デジタルテクノロジー図鑑』より一部引用)

「Web3元年」までの解説については、過去の講演動画(2022年5月時点)などを見ていただくとして、「2024年までがどうだったのか?」「2025年以降はどうなるのか?」について、自分なりにその大局観を示す。

2024年は過去最大の「大転換期」、その理由

業界内で「2024年がCrypto/Web3の大転換期だった」と言うことについて、異論がある人は少ないだろう。本当にスゴいことが起こった。

2024年1月10日、アメリカで歴史上、初めて現物のビットコインETFの上場が承認された。

米SEC、ビットコインETFを初承認 投資層の拡大に期待|日本経済新聞

「ビットコイン」は端的に言えば、誰がつくったのかも正確にはわからない得体の知れないものだけど、ブロックチェーンという新たな技術コンセプトによって奇跡的に成立した「仮想通貨」だ。

かたや「ETF(Exchange-Traded Funds)」は、証券取引所や金融商品取引所に上場している投資信託であり、経済的にも社会的にも認められている「金融商品」だ。

分散型の仮想通貨「ビットコイン」が、中央集権型の「金融商品」になる。これが意味することは、あまりに大きい。

かつて、僕は下記のような「見取り図」を描いたことがある。左側は「法定通貨(Fiat)」、右側は「仮想通貨(Crypto)」の経済圏。大きく2つに分かれ、そのゲートキーパーは仮想通貨取引所だった。

VOL44「Web3 所有と信頼のゆくえ」|WIRED

しかし、そのゲートはETFという「金融商品」によって大きく開かれた。一言で表現するならば、2024年から始まったのは「金融と暗号資産の融合」である。

まずは、デジタルゴールドとして「価値の保存(Store of alue)」に優れるビットコインから始まったに過ぎない。(解説のYouTube動画をつくった)

交換機能(Medium of Exchange)としては、ステーブルコインの普及が法定通貨が不安定な国(主に南米やアフリカ)ほど進む。

さらには、機関投資家を中心にトークン化MMFの市場が広がり、トークン化された価値が行き交うブロックチェーンのインフラが拡大している。(金融のトークナイゼーションは専門知識が必要なので詳細は割愛)

今「Web3」で起きつつあることは、こんな感じだ。

「Web3の概念」(2024年時点)

ビットコインがデジタルゴールドになり、イーサリアムほかのブロックチェーンが「トークナイゼーション(主に"現実資産=RWA"や"金融商品"のトークン化)」の基盤となる。

つまり、ブロックチェーン"技術"による「金融化」だ。

その一方で、思想や価値観としての非中央集権、「分散化」といった概念が薄まりつつあるのが現状だろう。

2025年以降はどうなる? 「日本のWeb3」が果たす役割

12/16(月)のセッション「Web3と日本創生」で議論したいのは、そんな「Web3×金融化」の話だけではない。

失われつつある「Web3×分散化」の意義を日本から、再び問いたいのだ。

なぜか?

「Web3×金融化」はどう見たって、アメリカが先行する。

来年1月20日にトランプ氏がアメリカ大統領に就任した後は、「ウォルストリート(=金融)×シリコンバレー(=技術)」を中心に、一気に「Web3×金融化」が進むだろう。

仮想通貨に追い風 トランプ氏、業界への支持明確に|日本経済新聞

一部のクリプトと金融の知識に長けた人なら想像がつくだろうが、これから「DeFi=分散型金融」的なコンセプトが「TradFi=伝統金融」を侵食する

流動性プール、ステーキング、レンディング&フラッシュローン⋯⋯これまでに金融になかったようなアイデアが実装されていくだろう(用語解説は『デジタルテクノロジー図鑑』参照)。

これからバブル経済になるかもしれない。

ブロックチェーン技術による「金融化」の行き着く先は、「富む者はさらに富み、貧しき者はさらに貧しくなる」世界だ。コロナ禍の金融緩和がもたらした結果を見れば明らかだ。

悪い兆候は、すでにある。

配車サービスを主に手がける米ウーバーテクノロジーズ(Uber)は、2024年2月に70億ドル(約1兆円)を上限とする自社株買いを発表した。

Uber、スト横目に1兆円の自社株買い 問われる分配方針|日本経済新聞

その一方で、ドライバー(運転手)の待遇改善は見送った。Uberは「ドライバー(労働者)」よりも、「株主(資本家)」へ利益を還元することを選んだのだ。

同上

配車サービスのように、スタートアップ時期の激しい競争が落ち着いて、成長がゆるやかな成熟期を迎えたとき、株主は「成長しない(キャピタルゲインがない)ならば、還元せよ(インカムゲインをよこせ)」と声高に叫ぶだろう。

きっと、YouTubeだってクリエイターへの配分よりも、株主への還元を選ぶだろう。株主資本主義は、そういうもの。アクティビスト(物言う株主)が大暴れしている現状を見れば、さすがに察しがつく。

ビックテック(Web2企業)の行き着く先は、株主(富む者)への還元であり、労働者(貧しき者)への取り分を減らすことになるだろう。

5年後、10年後かもしれない。そのとき、初めて人々は「Web3」的な分散化の思想、価値観が大事なことに気づく

comugi『デジタルテクノロジー図鑑』より

ビットコインやイーサリアムのように、充分に分散化されたインフラやエンティティは誰も止めることができない。「Web3×分散化」の本当の意味がわかる瞬間

日本のWeb3の取り組みは、とても面白い。

トヨタが、日産自動車が、スズキが、ハウス食品が、サントリーが、カルビーが、東映が、JALと博報堂が、JR西日本が、鹿島建設が、大和ハウスグループが⋯⋯有名な大企業の◯◯がWeb3に取り組む。(多すぎて略)

「地方創生×Web3」も同じだ。挙げればキリがない。

あまりに資本主義的になりすぎた世界に、どう民主主義的なものを取り戻すのか? 日本には、その「Web3×分散化」の未来のイメージがすでに登場しているのではないのか?

12/16(月)のセッション「Web3と日本創生」に登壇する政治家、経済学者、起業家の御三方は、きっとヒントをくれるはずだ。

政治家の平将明デジタル大臣は、政府が進める新たな地方創生の参考にしようと新潟県の山古志地域を訪問し、次のように述べている。その主題は、政府(中央)が用意したマイナンバーカード(インフラ)を使った地方(分散)の自律だ。GaaS(Government as a Service)につながる発想である。

私が自民党の時にやっていたWeb3.0プロジェクトチームという、いわゆるブロックチェーンの活用という事例はあまりなく、そうした中で、山古志村は先ほど冒頭で言ったコレクティブなNFTを発行して、それを持った人がデジタル村民だという中で、さらにDiscordでいろいろな議論をして、どうやって盛り上げようかとか、あとはマイナウォレットを使って、私が理想としていたマイナンバーカードで支払いができるような取組もされているので、地方創生の文脈×デジタルにおいても最先端の取組だろうと思っていましたので、山古志村をと思いました。角突きも私が言っているのは、デジタルか、アナログか、と分けるのではなく、アナログの価値を、デジタルを使って最大化するという取組も一つの地方創生の重要な文脈だと思っていますので、例えば角突きみたいなイベントをどうやってデジタルを使って価値を最大化できるのか、集客できるのか、といったものも含めて考えていきたいと思っています。

平大臣記者会見(令和6年11月5日)|デジタル庁

経済学者の成田悠輔さんは、著書『22世紀の民主主義』で、次のような図を示しながら、以下のように書いている。提唱されている「無意識民主主義」は、新技術群を活用した民主主義のリデザインであり、ブロックチェーンやAIはその中の1つだ。

成田悠輔『22世紀の民主主義』(SBクリエイティブ、2022年)

独立国家をゼロから作ることもできる。既存の自治体や国を乗っ取ったり、それに寄生しながら準自治区を育てることもできる。ブロックチェーン技術に支えられたWeb3の勃興で、新しい政治経済制度(選挙・合意の仕組みや通貨・証券の仕組み)をデザインするオンラインコミュニティも雨後の筍状態である。

同上

起業家の渡辺創太さんは、ソニーグループのブロックチェーン「 Soneium(ソニューム)」を共同開発していることで知られる「Startale Labs(スターテイル・ラボ)」創業者として、インタビューで次のように答えている。まさにWeb3起業家として世界で戦っている真っ最中である。

日本の経済に対する危機感はすごくあります。かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代には、盛田昭夫さん、松下幸之助さん、本田宗一郎さんのようなレジェンド経営者がいました。その次の世代には、柳井正さんや孫正義さんがいます。ですが、そこから20代の僕らまで世界の誰もが知っている日本企業や日本人経営者は客観的に見て出てきていないと思います。このままだと僕らの世代がそうしたレジェンド経営者を知っている最後の世代になってしまいます。
この10年くらいでグローバルな成功を収める企業を輩出して、今のソニーやトヨタを追い越していかないと日本経済はまずいと思っています。僕はWeb3という領域に大きなチャンスを感じているので、そこにレバレッジをかけて、日本を代表するプロダクトや会社をWeb3業界を超えて作りたい。

グローバルで成果を出す。数兆円、数十兆円規模に成長するための勝負の年──Startale Labs CEO 渡辺創太氏【2024年始特集】|coindesk JAPAN

このセッションが面白くならないわけがない。(渡辺創太さんも、そう言っていた)

日本のWeb3には、チャンスがある。

モデレーターとして、そう思えるセッションにしたい。




オンライン配信/アーカイブ動画なしの一夜限りのセッション。

企業リーダー向けに、10名の特別枠があるそうだ。キーマンが集う懇親会もある。

現時点で60名だった。倍率6倍。今からでも遅くない。ぜひご応募を。