見出し画像

パーソナリティーの時代

「11月のナビゲーターをやってもらえませんか?」突然だった。

TBSラジオのPodcast番組「東京ビジネスハブ」のパーソナリティである野村高文さんが、1ヶ月間のお休みに入る。そして、僕(コムギ)がピンチヒッターを務める。もちろん、やったことがない。

「できるとおもいます」と即答した。ウソである。

すぐに「パーソナリティとは?」とGhatGPTに聞いた。

「単に情報を伝えるだけでなく、自分の個性や感情を交えながらトークを繰り広げ、リスナーに楽しさや安心感を与える」

ハードルが上がったやん……

パーソナリティ「その人らしさ」「個性」という意味らしい。

苦手だった。

働くようになってから、「自分らしさって何だろう?」と、ずっと考えていた。

誰が仕事をしても、パフォーマンスが同じ「没個性」だから、会社は成り立つ。「自分らしく、やりたいようにやれ」という上司の言葉は、身勝手なものだと思っていた。

「求められる役割に応えていこう」と、ふつうに仕事をこなしてきた。しかし、いつしか「◯◯◯さんは、これが得意でしょう」と、いろんな人に言われるようになった。

そうか、自分はこれが得意だったのか。

得意だと思われていることが、仕事で求められるようになった。僕にとって、それがビジネスの仕組みデジタルテクノロジーだった。

得意なものを極めようと、本の編集者として「ビジネス × テクノロジー」の本をたくさん編集した。ベストセラーと呼べる本も、幸運にも何冊かつくることができた。

もっと得意なものを極めたい

出版社を飛び出し、ブロックチェーン技術の可能性に魅せられて、Webメディアの編集者になり、Web3ファンドの共同創業者になった。

ついに「◯◯◯さん」ではなく「comugi(コムギ)🌾」と名前まで変えてメタバースへ転生した。専門家として『デジタルテクノロジー図鑑』という本も書いた。

「コムギというキャラクターで生きよう」

生意気にも顔出しをやめた。いつしか「コムギさん」になった。

でも……。

「コムギはこんな言い方はしないよなぁ」

キャラと本当の自分、その間に距離が生まれてきたように思う。

他人から、どう見えるかを常に意識させられる、SNSのせいかもしれない。

これが最近のこと。

そんなときに、ポッドキャストの「パーソナリティ」を務めることになった。

あらためて質問してみた。

「キャラクターは表面に現れる性格や役割、パーソナリティーは内面から発する個性や人格に近い」

ChatGPT君、キミは優秀なアシスタントだ。わかりやすい。

そうか。

「他人から、どう見えるか」ではなく、「自分は、どう在りたいのか」

それは、これまで考えることを止めていた「自分らしさ」と、再び向き合う試みである。

「キャラクター」から「パーソナリティー」の時代へ

ポッドキャストが人気だ。

アメリカ大統領選挙が11月5日に迫るなか、共和党の大統領候補であるトランプ前大統領がポッドキャストの人気司会者、ジョー・ローガン氏と3時間にわたり対談した。

このエピソードは、わずか3 日間で3,400万回再生されたという。同番組「ジョー・ローガン・エクスペリエンス」のSpotifyのフォロワー数は世界で1,600 万人弱だ。

今や、米国でポッドキャストを聴くリスナーは国民の半数近い。

Podcasts have become a huge part of the election cycle|CHARTR

ポッドキャストが人気である背景にあるのは、人が「パーソナリティ=内面から発する個性や人格」を求めているからではないか?

「◯◯◯さんって、こういうキャラだよね」

会話のなかで、たいてい人はキャラ付けされるが、「でも、本当のところはわからないよね」というニュアンスを含んでいる。

キャラクターは「建前」、パーソナリティは「本音」だ。

「建前」を語り、「本音」は語らない。これが会話を、SNSをつまらなくさせた。だから、「本音」が聴けるラジオが勢いを取り戻し、ポッドキャストのリスナーが広がったのだろう。

では、なぜ人々が「パーソナリティ=内面から発する個性や人格」を求めているにもかかわらず、世間では「キャラクター=表面に現れる性格や役割」が蔓延するのか?

SNS全盛の現代において「本音を語る」ことは恐ろしいからだろう。

見ず知らずの誰かから罵詈雑言を浴びせられ、恨みを買いストーキングされ、理由もなく危害を加えられる時代である。若者が閉じたSNSに戻るのも当然の流れだ。

その意味で、本音を語れる(パーソナリティ)、建前の存在(キャラクター)、この2つを両立させることは、とても重要なテーマだ。

エンターテインメントでは、バーチャルアイドルとしてVTuberが人気を得て、顔出しNGアーティストが活躍する時代である。

Adoだけじゃない 顔出しNG歌手、XRで武道館も沸かす|日本経済新聞

ビジネスでも、本音を語れる(パーソナリティ)建前の存在(キャラクター)がいても良いはずだ。

コムギとして、活躍できるように頑張っていきたい。

再び「自分は、どう在りたいのか」を問う。

これからも、よろしくお願いいたします。


……唐突な決意表明で無駄にハードルを上げてしまったが、11月4日(月)朝6時に配信される、人生初のパーソナリティを応援してほしい。

あいにくの祝日、ビジネスパーソンがビジネスのことを忘れたい休息の時間。しかも米国大統領選挙の前日という悪条件。

どうやっても最悪の状況しか思い浮かばない。この放送回だけ、ダントツで再生回数が少なかったりすると、コムギが死ぬかもしれない。

本当にお願いします。ぜひ聴いてください。