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ブロックチェーンには価値がない

「負動産(ふどうさん)」という言葉がある。財産的な価値がなく売却困難な「負債」とも呼ぶべき不動産を指す。治安や景観など、地域の暮らしにも悪影響があり、「空き家」は社会問題になっている。

稼げる空き家、そこに有り 「負動産」を再生|日本経済新聞

「不動産=価値がある」というのは、戦後の日本が急速な「人口増」で潤った高度経済成長期の幻想だ。

少子化の壁壊すには データで見る日本の人口問題|日本経済新聞

「土地」は、取引が活発に行われるほど高騰する。つまり、その土地を欲しい人がいれば価格が上がる。需要と供給、当たり前の話だ。

駅前の土地がなぜ高いのか。欲しい人が多いからだ。行き交う人が多い駅前なら、店舗のテナント募集も埋まるし、マンションを建てても通勤・通学に便利なので売れる。

「ブロックチェーン」の考え方は、「土地」とまったく同じだ。

「ブロックチェーン=価値がある」ではない。

ブロックチェーンは、取引(トランザクション)が活発に行われるほどに、その価値が高まる。

ゆえに、ユーザーの取引を活発にするアプリケーション(建物)をつくるディベロッパー(開発者)をいかに多く取り込むのかが重要だ。

拙著『デジタルテクノロジー図鑑』(SBクリエイティブ、2023年)

プロトコルレイヤーの仮想通貨を買う投資家は、開示情報が少ない中で、そのブロックチェーンがディベロッパーを惹きつける魅力・力量があるかどうかを見極めなければならない。"なんとなく"の期待だけで価格が上がるのはミームコインだけだ。

電気ガス水道・道路など、インフラにあたるツール&サービスを提供するプロジェクトはきちんと参加しているか? 助成金は出るのか? プロトコルレイヤーはディベロッパーをきちんと支援しているのか? etc.

その見極めには、それなりの知識が必要になる。「なんとなく」で仮想通貨を買ってしまう人も多いだろう。最低限、あなたが買った仮想通貨が「①建物」か「②インフラ」か「③土地」かぐらいは、知っておきたい。

今からでも間に合う。仮想通貨にも金融と同じような基礎知識が必要だ。①②③は、それぞれ成長性を見るためのポイントが異なる。ちゃんと中身を理解しよう。

さて、長年の課題だったガス代を安くする(スケーラビリティ)軍拡競争は、すでに終焉を迎えつつある。

拙著『デジタルテクノロジー図鑑』(SBクリエイティブ、2023年)

イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリンは、当然のように次に「分散性」を求めたが、他のブロックチェーンはどう差別化するのだろうか?

何がディベロッパーを惹きつけるのか? EVMのエコシステムに勝てるのか? 助成金やサポートか? 思想やカルチャーか? どんなアプリ(商業施設)ならばユーザーが押し寄せるのか? 

仮想通貨の投資家には、調べて考えることがたくさんある。金融商品には自己責任原則があることを、ゆめゆめ忘るる事なかれ。

「負動産(ふどうさん)」をつかまされないように気をつけよう。