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引きこもりが社会に出てみた 〜絵のない絵本〜

「あっついなぁ〜…」

俺は思わず声が出てしまった。
「だけど外で働くのも気持ちがいいだろ?」
それを聞いた先輩に声をかけられる。

「そうっすね、まだ自分が信じられないっす。なんであんなに頑なに外に出なかったんっすかね。」
「…俺もそうだからな。」
先輩は少し恥ずかしそうにはにかみながら言った。
そして俺たちは笑いながら少し休憩した。

「や〜ね、なんであんなに声が大きいのかしら。ますます暑くなっちゃうわ。」
通りがかりのマダム風な中年女性が汗を拭きながらチラリとこちらを睨んだ。
「7年も出てきてなかったんだもの。好きにさせてあげましょ。」
と、別のマダムが俺らを嘲笑するように中年マダムに言った。

なんだよ、引きこもりが出てきちゃ悪いってかよ。クソッ!

そんな俺の心情を察知してか、先輩が
「さっ!もうひと仕事すっか!」
と俺を誘うかのように先に現場に登った。

俺は毎日がむしゃらに働いた。
もうこうなったら昼も夜も関係ねぇ!
とにかく働いた。

そんな日が続いた、ある日。

あれ、目の前が回って見える…
なんだ、これ、張り切りすぎたか…?!
もうダメだ、身体に力が入らない……







「あ!おかぁーさーん!セミ!
   セミが落ちてる!!」

「ダメよ!汚いから触っちゃいけません!」
「お母さん、知ってる?
   セミってさ、7年も土の中にいたのに地上では7日間しか生きられないんだよ。」
「そうね、かわいそうね。そっとしといてあげましょう。」


ただ俺は7年と7日間、
精一杯に生きただけなんだ…
かわいそうなんかじゃねぇ。




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こむぎ
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