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人生最大のピンチで考える情熱の限界について。

よく「●●する10の法則」などビジネス書に、「言葉ではなく情熱を伝えれば状況は自然と変化していく」といった内容がつづられている。また、「真剣に観察すれば必ず解決策は見えてくる」というつづりも目立つ。

あれは嘘だ。

情熱だけでは誰の心も変えられない。証拠はないが、根拠は体験に紐づく。

その日、色黒のマッチョ、チビデブ、眼鏡ブスと計4人で、4畳間くらいの密室で過ごした。蒸し暑く暗い室内でたまに思い出す記憶。

もう何時間経っただろうか。体感では半日くらい顔を合わせている。

1年以上経過して、ずいぶん海外生活に慣れたつもりだった。しかし、まさか住民票の再発行に、軟禁されて怒鳴られ続ける工程が必要だとは夢にも思わない。

「うるせーぞ!クソが!」
「★:・pj詩z9!!」

何回目かもわからないが、つい口が悪くなるほど追いつめられた結果出てきた罵声もむなしく、謎の言語でかき消されて宙に消える。

その国での住民票は、電子管理されていないらしく、紛失した人はめでたく不法滞在者になるのだ。

チビデブに「トッテモ悪イヒト…」と片言で指さされた時には、もう喧嘩してやろうと立ち上がったものの、色黒マッチョによるチョップで、なけなしの闘志はコナゴナになった。

解決する糸口が見えない以上とりあえず観察をすることにした。

まずは眼鏡ブス。
指輪をしているから既婚者で推定30歳。
黄色とピンクと黒のストラップが携帯電話についているおり、デパートというより地元の雑貨屋で買い物しているタイプかな。
メガネに偽物だと思われる、有名ブランドのロゴが付いてことから、ブランドや肩書に関心が高い。偉そうにふんぞりかえっている色黒マッチョにやたらヘコヘコしいる。
子供は2人くらい産んでる顔だ。両方女の子だったのか、身に着ける雑貨が女の子趣味な印象を受ける。次は男の子を願っているとみた。

次はチビデブ。
携帯電話の着信音はCMでよく耳にするアメリカの女性ミュージシャン。ミーハーかよ。メールが来るたびにニヤニヤしているところを見ると異性からで、付き合いだしたばかり。推定年齢は22歳。この国で、大学卒業後すぐに公務員になれるのはエリート中のエリートだけだから、コネ入社なのかな。時計はCASIO。日本ブランドのユーザーなら優しくして欲しいものだ。時計選びが機能性重視なら、機能的な体づくりをしろ!

最後は色黒マッチョ。
まつ毛が長い。推定は39歳。あまり飾り気がない印象だが靴がピカピカだ。
おそらくこの中では1番役職が上なのだろう。趣味は、まぁ打倒に筋トレ。肌色が黒いし休日はサーフィンとかしているのかな。既婚。金の指輪は色黒にこそ似合う。子供は3人くらいで、女の子1人、男の子2人。以外とデレッとして、おもちゃ屋さんとかに連れていくのかも。子供もサーフィンやってるのかな。

一通り見渡して観察していると、お昼の放送らしきものが流れた。
すると同時に全員が立ち上がり、さっさと施設を追い出されてしまった。

結局、怒鳴られ続けて、何も解決せずに、振り出しに戻って、建物を後にする形で幕を下ろしたのだ。

せっかくだから答え合わせをしよう。

翌日、日本語ペラペラの現地人と一緒に乗り込んで、個人情報を聞いてもらった。、メガネブスは未婚。1番偉いのはチビデブ。色黒マッチョはメモするために呼ばれた事務員だという。

観察よりも言語。
情熱よりも言語。

100%ではなくとも、何かを伝えたい時には、言語にして世に送り出すしかない。届かなくても想いを形にする。

まず家に帰ったら、ビジネス書を丁寧に燃えるゴミにしてやろうと誓った。

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