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母という生き物~エピソード⑫~
母は寿司が好きだ。
しかし、外食に行くと決まって「あんた達が食べたいものでいいわよ」と選択権を子供に回す。頭を突き合わせて姉と私は考え、全員の幸せのために「お寿司が食べたい」と結ぶのだ。
母は選択肢があるといつも人に委ねる。
気が利くのとは別で、選択した結果、反対意見が出るのが嫌なのだろう。仕方がなしに、ものごとを決断し続けてきた姉と私は結論を急ぐ人間になった。姉にいたっては「予約しておいたから」が口癖になった。
分岐の度に迷っていた昔の自分を思い出す。
すぐに決めて動き出さないと間に合わないことが世の中には沢山ある。ただ、「お子様ランチ」や「ハンバーグ」を選択せずに、「私もお寿司が食べたかったのよ」と毎回嬉しそうする母の笑顔を選択してきたからこそ、我が家は全員お寿司が好きになった。
即決せずに熟考した姉と私の時間は、小さな家族の和を生んだ。小さなことでも真剣に考えた時間は予期せぬ幸福を産むし、今すぐに意味はわからないのだ。