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チャイニーズが現れた。
中国人と聞いて連想するものは何だろう?
最近になって人件費が高騰した…とか、電化製品を爆買いしている…とか、態度が悪い観光客が多い…とか。頭を捻っても、おおよそプラスのイメージとは程遠いものばかりが思い当たる。
その日、ノンビリした英語で話かけてきた中国人は、短いパンツ姿にビールビンで黒ぶちメガネをかけていた。同じ中国人だと思われたのか、それとも異国で痩せ型の背格好をしているために現地の人間だと判断されたのか、「私は日本人だ」と答えるとオーバーリアクションでビックリして目をキラキラさせた。
あっと言う間に、初めましてから9時間ほど一緒に行動し続け、あれよあれよと中国人は4人に増えた。日本人1人を足した計5人は、高層ビルの最上階のカフェに行ってみたり、卓球やビリヤードをしたり、道で歌を口ずさんだりと何とかコミュニケーションは成立しているみたいだ。中国人たちは拙い英語のレベルを察してくれたのか、よくコッチを見つめながらゆっくりと、今何の話しをしているのか解説してくれた。
笑い顔は日本のソレとは違い、まるで顔全部で笑っているように見えるほど、クシャっと顔の中心にパーツが寄る。
「聞いてくれよ、コイツゲイなんだぜ!」。
「彼の名前はさぁ…」「彼?私は女よ!男だと思っていたの?」。
日本ではギャクとも呼べない話題で腹をかかえて笑う中国人は、日本のマンガの話しをしてやると、飛び出るくらい目を大きく広げて、楽しそうに耳を傾ける。
帰り道に日本の歌が好きだと言う1人が大きな声で日本の曲を歌いだすと、それに合わせて、全員が体を揺らしだした。次から次へと披露される日本の曲を「なぜ知っている?」と尋ねると、「好きだから」と一言。みんなで歌い続けた日本の曲が底をつくころホテルに到着した。バイバイと手を振った瞬間、クシャクシャな笑顔が無性に愛おしくなった。
世界中に転がる全ての憂鬱や不安はクシャクシャ丸めて笑ってしまえるものなんじゃないだろうか。体全部を使う彼らに負けないくらい、大きく大きく手を振った。