「ウンゲツィーファ」と「しあわせ学級崩壊」を観て池田亮くんに会った日
書くことがねぇ。早くも。いきなり。
や、稽古の様子とかお知らせしたいような気持ちもするけども、「いい感じです」以外特にないというのが難しい。
なので今日の日記を書く。
稽古オフなので書き仕事を進めようかと思ったがいったんは提出済みのものと、いったん向こうの出方を待つ系(書いといてなんなのかよくわからない)のやつしかない。要はまだそんなに喫緊ではないけど、絶対早めにやらないと未来の自分が酷い目にあうみたいなやつがある。
とりあえず今回の公演の第二稿をやろうかと思ったが、どうにも進まない。理由はウンゲツィーファがとにかく観たいから。モヤモヤしてしまう。行けるちゃ行けるなこれ、みたいな。もういいやと思い行ってしまうことにする。
すごく遠い。蒲田の奥のほう。
ウンゲツィーファ「モノリス」最高。胸いっぱい。これぞウンゲツィーファ。私的で壮大で微細で宇宙で詩的で俗っぽい。こんなものを観せられたら胸いっぱいとしか言いようがない。好きなものすぎる。美しい。これからもウンゲツィーファが観続けられる世界であってほしい。
会場にゆうめいの池田亮くんがお客さんとして来ていた。なんとなく近況などを話す。
「4年半付き合った人にフラれた」というもう何度話したか分からない話を壊れたスピーカーのように繰り返す。虚しい。いやもはや虚しくもない。平坦。
池田くんに「そういや同棲するかもとか言ってましたよね」と言われる。
そんなこと言ってたんか。過去の俺愚かすぎる。
そしていつの間にか池田くんはパパになってる。
去年芸劇でウーバーボーイズやってた時にはこんなことになってると思ってなかった。
「ドンキで買ったルフィのコスプレで東京芸術劇場に立ったのは絶対に俺だけだ」というのを誇りにして今も生きている。
「僕車で来てるんで金子さん送りましょうか?」
去年免許とったらしい。
「もう2万キロ運転してるんで全然大丈夫ですよ」
ありがてぇ。
「駐車料金くらい払わせてください」と半分払う。
「実はこれからしあわせ学級崩壊を観に行こうと思うんですよ」
池田くんが脚本を提供してるらしい。
コンプソンズの宝保さんも出てるし、いつか行きたいなと思っていた。
しかし最近解散が発表されてしまった。
主宰の僻みひなたさんはMOHE MAP「アイスクリームマン」で音響オペとして参加されていて、その時私は出演をしていた。岩松了の超絶戯曲をやったから、というのもあるかもしれないが、あの時のことは学生時代の思い出のように思い出すことが多い。コロナ前ってのもあるかも。コロナ前のことは全部10年前くらいに感じる。
劇中で私が自販機でジュース買うシーンがあるのだが、その時の音響のタイミングがほんのちょっとズレたことがあったらしく(自分はそれに気づかなかったくらい)ひなたさんはわざわざ終演後に私の前までいらっしゃって、こちらが恐縮してしまうくらい謝られていた。
非常に自分に厳しい、真摯な方なのだなと記憶していた。
これは行くしかないのでは、と思いついて行くことにする。しかし池田くんが観に行こうとしてるのは宝保さん出ない回だ。うーんどうしようかな。でも宝保さんの回に行っても無用な緊張を与えてしまいそうなので、池田くんと同じ回に行くことにする。
「ちょっと道調べてるんで少々お待ちください」
「しかし池田くん、早く出ないと駐車場のレバー上がりますよ」
「そうですね」
発進すると、ガリガリガリ!とすごい音がする。
「レバー上がってたみたいです」
とりあえずもう一度精算ボタンを押しに行きレバーを下げる。
「車はぜんぜん大丈夫でしたけどなんか木クズがありましたよ!」
と木クズを池田くんに見せられる。
不安だが車は発進する。
「大丈夫です!安全運転で行くんで!」
めちゃくちゃ徐行で運転してくれているのだが、車は反対車線を逆走している。
「池田くん反対車線ですよ」
「あぁすみません!テンパってしまって。人乗せると緊張しちゃうので」
申し訳なく思う。
だが池田くんは「喋ってるとラク」だと言う。喋りかけた方が運転に集中できるのか、しない方がいいのか判断に迷うが、久しぶりだし色々話したいこともあるし、まぁ話しながら向かう。
しかしブレーキのタイミングが明らかに遅い気がする。
車線変更で並走する車とぶつかりそうになる。
死ぬかもしれない。
しかしかく言う自分も人のことを言えない。
今まで色んな人を運転で不安な目にあわせてきた。
未だに自分ちの駐車場の距離感がわからない。
免許取り立ての時、山道でガードレールをぶっ壊して崖から落ちそうになったことがある。
俺の運転で助手席に座った人々は、みんなこんな気持ちだったのだろうか。
とりあえず目的地についた。
なぜか池田くん駐車はうまかった。
教官にもバックだけ褒められたらしい。
池田くんは「たぶん招待にされるから」という理由で(まぁ作者だからそりゃそうだろうが)当日券でいきなり行くスタイルだった。「ちゃんと金を落としたい」らしい。真摯な人です。
しあわせ学級崩壊を観た。
とても良かった。
どうしても朗読とかモノローグって、聞いてるとどこかで集中が切れてしまう瞬間があったりするのだけど、これはそうなりそうな瞬間に音楽が繋ぎ止めてくれる感じ。演者の皆さん達者で、言葉がめっちゃ入ってくる。
順番も良かった。
一本目の細川洋平さんの作品から、こんなほのぼのしたの書くんだ、という意外性があった。二人の登場人物の日々の暮らしぶりが浮き立ってくるような、素敵な作品だった。
二本目の松森モヘーさんの作品もとても良かった。というかデーモンズだしこういうのに合わないわけがない。松森先生の言葉の渦にひたすら身を委ねる時間。
三本目の綾門優季さんの作品から物語性が強くなってくる。この順番もよかったかも。耳が慣れてきた時に、綾門さんの言葉選びは哲学的だがアニメっぽいところもあり、面白い。話もよく分からないが面白い。言葉がそのまま塊になって飛んでくる感じ。演じた林揚羽さんのキャラクターとも合っている気がした。というか林さんの迫力が凄かった。めっちゃダークな2.5次元哲学芝居みたいな?
四本目の池田くんの作品は傑作。作者の隣で観るというのも変な気持ちだったが。とにかくスゲー面白かった。もうスゲーとしか言いようがない。面白すぎる。たった15分?でここまでとんでもないところに連れてく強度な物語を書けるなんて。演じた村山新さんも的確な表現で物語を伝えてくれた。
というか音楽流しながらこんなに話も入ってくるなんてすごいな。
これは唯一無二スタイルだわ。
正直なところを言うと興味はありつつもEDMと演劇の組み合わせというのがちょっとピンと来てないところがあった。だが実際現場の音と役者の肉体を通して聞くと「なるほどこういうことか」と認識が改まった。
もう少し早くに観に行けばよかった。
夜の回の宝保さんのも気になったが、やはり無用な緊張を与えるっぽかったので、帰ることにする。
再びの池田ドライブ。
帰りはわりと安定していた。
池田くんとは最近の世の中の動きについて思うことのバイブスが合う。話が盛り上がる。
「今日のこと書いていいですか?」と聞いて「いいですよ」と答えてくれる。
また会いましょうと言って別れる。
帰ってきて今。
こんなに書くなら第二稿進めろ!!!
さっさと!!!
というわけでコンプソンズ「われらの狂気を生き延びる道を教えてください」をよろしくお願いいたします。