見出し画像

【自己紹介】あらためまして、Compathです。

「Compathってどういう場所ですか?」というシンプルな質問が一番難しいと思うときがあります。こっちから光が当たれば、こう見える場所。あっちから光が当たれば、違う場所としても映る。たくさんの側面を持っている場所だからこそ、簡潔に伝えるのが難しいと常々感じています。

Compathには創業当初に書いた自己紹介noteがあります。noteでは創業当初に考えていたことや経緯が書かれていて、Compathの軸となる言葉が綴られた大切な文章です。

あれから5年。Compathはゆったりと舵をとりながら学び舎づくりを進めてきました。昨年は念願だった校舎も完成し、創業時には見えなかった広い景色が見え始めています。

だからこそ、あたらめてCompathがどういう場所で、どういう願いを込めて学び舎づくりをしているのか、みなさんに話してみたい。今回は、代表の安井(やさい)の言葉をベースに、この学び舎に惚れ込み一緒に学び舎を作ってきた、松尾(めいちゃん)・中村(ゆっけ)・外村(ゆり)が言葉を編みました。

最近Compathに興味を持ってくれたあなたも、ずっとCompathを応援してくれているあなたにも読んでほしい、Compathの「今」。

あらためまして、Compathです。どうぞよろしくお願いします。



大学でも、専門学校でもない。ちょっと変わった、大人のための学校が、北海道東川町にあります。

そこでは、世代も年代もばらばらな人たちが集まり、暮らし、学ぶ。人生で必要な時に立ち止まり、コーヒーを片手にお互いの哲学を語り合いながら、自分や社会を捉え直す時間。この学びは、個人が勇気を持って「余白」を取ったからこそ参加できるものであり、社会の「余白」の中に存在します。

名前は「School for Life Compath」(以下、Compath) 。北欧で、約200年続く成人教育機関である「フォルケホイスコーレ」をモデルとしながら、日本の文化と社会構造に合わせた学びを試行錯誤しています。


共同代表の二人が惚れ込んだ「フォルケホイスコーレ」


この学校の歩みは、2017年に創業者であり共同代表の安井・遠又が、デンマークを旅行で訪れた際、フォルケホイスコーレに出会い、その存在に惚れ込んでしまったところがスタートとなっています。

二人は「自分たちのために、この学び舎が日本にも欲しい」と強く思い、2020年〜 北海道東川町を拠点に、数日〜数ヶ月間のコースをひらき続けています。現在コースの卒業生は約300人にのぼり、10代から70代まで様々なバックグラウンドを持つ人々が学んでいます。

写真:畠田大詩さん

フォルケホイスコーレの学びには、成績や評価がありません。17歳半以上であれば、誰でも入ることができる学校です。アート、農業、スポーツ、様々な授業が開講されていますが、特定のスキルを身につけることを目的とせず、授業を受けた個人が経験を通して、より自分と他者、社会を探究することを目的としています。

フォルケホイスコーレでは先生と生徒の対等な関係性も、特徴のひとつです。全寮制を基本としており、異なる他者と共に暮らしながら、コミュニティを自分たちの手で作る経験を積む場でもあります。

授業や学校の設備など、あらゆるものが学び舎に関わるすべての人々の声と行動によってアップデートされ続けていく。生徒たちはこのアップデートの経験から、他者と共にお互いにとって心地よい状態を作り上げていく、民主主義的なあり方と思考を学びます。


Compathの舞台となる東川町


そんなフォルケホイスコーレをモデルにした学びを、私たちCompathは北海道東川町で実践しています。実践を重ねれば重ねるほど、この東川町だからこそ、学びをひらくことができていると実感します。

1985年、東川町は全国一村一品運動の流れの中で「写真の町」と称して、モノやハコではなく、文化に投資をした稀有な町。少子高齢化社会の中でも、ゆるやかに人口が増えている町として注目されています。

町の根底に流れる、形なきものに可能性を見出し「東川らしさとは何か」を問い続ける町の人たちのあり方が、なによりも面白い。ここに住むたくさんの人々が、自分らしい暮らしを楽しみながら、町の未来をどうしたらより良くできるかを考えて、日々実践を重ねています。

Compathの授業は、この町のみなさんを授業の講師として迎え、授業を共につくっています。授業を通して、参加者は彼ら彼女らの実践の一部を体験したり、生き方に触れます。

自分たちの住む町を、自分たちなりのやり方で、自分たちの手でつくる。民主主義を体現するこの町と町の人々に触れることで、参加者は自分がどのように社会と繋がっていきたいのかを考えることになります。

この町だからこそできるもう一つの学びとして、雄大な大雪山がもたらす自然の中での学びがあります。人間の力は到底及ばないと感じざるをえない、厳しくも雄大な自然。自然の中での学びは、地球の中での私たちのふるまいを問い直してくれます。

写真:畠田大詩さん


共に暮らし、共に学ぶ


Compathの学びは、東川町にある校舎を拠点に、数日から数ヶ月間、10-15人ほどの仲間たちとひとつ屋根の下で暮らしながら学びます。

多くの参加者は、関東・関西圏に住んでおり、Compathのコースに参加することは、日々暮らす環境から少し距離を取った「余白」の中での学びです。Compathでは、日本の休みが取りづらい社会構造を鑑みて、北欧のフォルケホイスコーレよりも滞在時間を短縮したコースや、リモートワークをしながらも参加できるコースを開講しています。

授業の内容は、さまざま。森歩き、木工クラフト、現代アート、北海道の歴史… さまざまな体験を学びの触媒にしながら、自分と社会をそれまでとは異なる視点から見つめ、捉え直していきます。

写真:畠田大詩さん

授業以外の時間も、仲間との対話や学びは続きます。あの人は〇〇が食べたいけど、あの人は△△が食べられない。夜はしっかり寝たい。仲間との時間を楽しみたい… 。それぞれのライフスタイルと価値観が交わるからこそ、意見が合わないこともしばしば。お互いに主張と妥協を繰り返しながら、自分たちにとってより良い状態を自分たちでつくり上げます。

参加者からは、Compathでの時間が、「自分や他者、社会と『つながり』を感じる時間」という声もよく聞きます。大変な時間でもあるけれど、ここで暮らすことによって、自分の声と行動で、コミュニティをつくる方法やあり方を学ぶのです。


写真:畠田大詩さん

校舎にも通底している「共につくる」ということ


2024年4月、私たちは念願だった校舎を持つことになりました。

この校舎は、東川の街中から少し離れた小高い丘にある「進化台」と呼ばれるところにあります。町の発展と未来を願って名付けられた歴史を持ち、広がる畑や小さな森に囲まれ、旭岳も一望できる素敵な場所。ラトビア館という東川に古くからある施設を引き継ぎ、手を入れ、学びの拠点としています。

写真:畠田大詩さん

この校舎づくりの特徴は、すべてのプロセスに建物の設計に関わるメンバー以外も巻き込んでいることです。

コンセプトは「共につくる」。Compathの学びや暮らしが、参加するメンバーの声によって常にアップデートされていくように、校舎づくりも、さまざまな人の問いが重なり、アップデートされ続けることを重視しました。

校舎の完成前に開催したコースでは、建築メンバーと参加者が、森に小さな居場所をつくる授業を行い「どんな場所だったら、自分たちにとって暮らしやすく学びやすいか?」を共に探索しました。

町の人々とは「Compathの校舎ができたらどんなふうに活用してみたいか?」を聞いてみるワークショップも実施し、この場所の可能性を町の人々と一緒に考えることもしています。

これらの時間に上がってきた「先の不透明な時代だからこそ、暮らし手が手を加えて変化し続ける建物であってほしい」「竣工時点で完成ではなく、利用者が使うだけでなく作り手になれるように、手を加えやすい余白のある建築にしよう」等のキーワードを反映し、建築設計を進めました。


写真:畠田大詩さん

建築前の対話を元に、作り込むだけではなく、これからここを訪れる人々が手を入れられる「余白」も残しています。壁の色は塗り替えがしやすいよう白で統一。校舎に隣接する広大な畑と森も、ほとんど手付かず。だからこそ、〇〇を育ててみたい、サウナ小屋を建てたいといったアイディアが生まれています。

この校舎は少しずつ何かが足りません。そのおかげで、さまざまな人の手が加わっており、最近は手作りの収納棚が加わりました。ここを使い学ぶ人々の暮らしにあった校舎に向かって、アップデートが続きます。この「余白」残る校舎に、これからもたくさんの人々の問いとアイディアが重なることを願って。

写真:畠田大詩さん


余白をつくることで起こす、やわらかな革命

正解が求められ、常にものすごいスピードで物事が進む現代において、余白を取ることは難しい。だからこそ、School for Life Compathの学びを社会に届けたいと思っています。

一度止まって、様々な体験を通して視野を広げながら、自分や生活を顧みることは、その後の人生をより豊かなものにアップデートする可能性があります。

また所属する組織やコミュニティから離れることで、自分の住む社会を客観的に見ることができ、組織内のしがらみを感じることなく、「より理想の社会を作るにはどうしたらいいんだろう」と根本から問いを持つことができます。さらにCompathの時間では、校舎を少し作り変えたりして、身近な社会から、より良い状態を目指して変化を起こす実験もできる。

私たちは「余白」をつくることで、よりゆたかな社会に向けての「やわらかな革命」を起こそうとしています。


Compathの学びのコースに興味があると言う方は、下記ボタンからスケジュールをご確認ください。

コースに興味がある、運営メンバーから話を聞いてみたいという方は定期的に開催している「おしゃべり会」にぜひご参加ください。

※ この文章は「住まいとでんき」2025年1月号に寄稿したものがベースとなっています。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集