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【Compath親子コース参加レポート】大きい人も小さい人もお互いの存在を慈しむ日々

少し立ち止まって考えたい事がある。
いつもは出会わない人と出会うことで、自分が大切にしたいものをもう一度見つめ直したい。

そんな想いに気づく瞬間は、いついかなるときでも豊かな瞬間だと思います。ましてや、「子ども」という本質的な問いを投げかけてくる存在が近くにいると、自分の中にある大切なものや問いを一度考えてみたくなるかもしれません。

そう思った時に一緒にゆったりと考えられる余白時間をつくりたい。そういう想いから生まれたのがCompathの親子コースです。2024年6月に行われた親子コースはCompathにとっても初の試みで、いつものコースとは一味違う学びがたくさん生まれました。

今回は親子コースに参加してくれた方から感じたことを丁寧に言葉にしてもらいました。とてもあたたかく、好奇心に満ちた日々をぜひ一緒に追ってみてください。

過去の参加レポートはこちらから↓



様々な自分の声に導かれるように、親子コースへ

コースの話に入る前に、長い前置きから。

我が家は共働きの夫婦に、小学生の子どもと双子の保育園児という家族構成。長い休みがあると、キッチン重視のエアビーを拠点にして、現地での「暮らし」を楽しむ旅をする。

いつもとは違う場所で空を見る。海や川で泳ぐ星を眺める。ただ空気を吸う。土地のものを食べ、町の人と話し、お祭りがあれば参加する。保育園の一時預かりを利用し、図書館で読書に耽る。気になる地名や歴史に出会ったら、そこから小さな遠足をする。サマーキャンプがあれば子どもたちを送り込む。大人は仕事をしたりしなかったり。

都心が良くなくて郊外が良い。あるいはその逆という視点ではなく。どの場所にも人がいて暮らしがあって、当たり前が違う。それを味わいたい。たくさんの当たり前を知ることはとても楽しいし、幸せなこと。

だから、少しの知識しかないフォルケホイスコーレだったけれど、いくつかのキーワードに心が立ち止まった。

「人生の学校」とも呼ばれる学びの場所。初めて親子プログラムが開催される。校舎があり、大きなキッチンがある。志の熱い人たちが新しい組織と文化を現在進行系で作っている。大雪山連峰を初めとした雄大な自然がある。行く理由は充分だった。

プログラム詳細にはこんな言葉が書かれていた。

「親子で参加するけれど、親子セットでなく子どもと大人それぞれが学べるプログラムを用意」
「圧倒的に余白時間が少ない子育て中の方に寄り添いたい」
「子どもも”一人の人”として扱う」

引き留められる言葉の数々。ここに行って、Compathに集う参加者や主催者と話してみたい。すぐ申し込んだ。

エントリーを済ませた後で、改めてCompathのウェブサイトを読んだ。「立ち止まっておやすみを取ることは決して自分勝手でわがままなことではない。あなたの小さな違和感は社会の違和感に絶対つながっている。」という創業者のひとり安井さんのことばを見つけた。

その言葉から私は「今休んだほうが良い」、「折々に立ち止まったほうが良い」、「子どもたちと一緒にたくさんの場所や人と出会いたい。」という自分の気持ちに素直に従おうと思った。

小学生の娘には学校を数日休ませる必要がある。不在中の猫2匹のお世話はどうしようかな。いろいろ巡るものはあったけれど、行きたいと沸き起こる気持ちがあった。

知らない町に家族で身を置いて、世界の扉がぱーんと開く。あの感覚を味わいにいこう。東川町での時間も特別なものになるに違いない、行こう、行くんだ。


それぞれの距離が縮まっていく初日

Compathの親子プログラムの様子を初日から思いつくまま書いてみようと思う。

旭川空港で集合。緑の森に抱かれ、大きな畑を備えた校舎に到着した。空港から東川町までは車で15分程度で、近いことにも驚く。校舎の窓からは旭岳が見える。

我が家は東京から、子ども3人と夫婦の家族5人で参加した。プログラムの最初は、校舎の近くの森に出て、森にある気になるものを3つ選び、自分を表現する「森のMEISHI」ワークで自己紹介をした。

一所懸命に探しものをする大人の傍らで、子どもたちはとにかく楽しく動きまわる。お気に入りの葉っぱをどんどん集めて置いていくとか。Compathのみなさんが育てた露地のいちごをじゃんじゃん口に放り込むとか(おいしそうなの食べて良いよーと言われたそばから!)。

恐るべき数のバッタを次々に捕まえ、そこらじゅうで跳ねているアマガエルを手のなかにふんわり閉じ込め愛でている…。小さな人たちよ。素敵よ、きみたちの自由さ。子どものこんな朗らかな心が、私たちに必要な余白や柔らかさかもしれない。

親子プログラムの醍醐味は子どもと付かず離れずで参加できることだろう。つい真面目に葉っぱを集めて参加者に解説しながら、大人は考える。

面白かったのは、初対面の子どもたちの距離の縮め方だ。虫取りを通して、競争や協力をして、名を呼び合ったりすることで、一気にお互いの距離を縮めていた。同じ興味や目的をもって過ごす僅かな時間で、緊張の面持ちから笑い合える仲になるのだ。

虫取りをする子どもたち

参加者のお子さんが「これでミントティーを作ろう、ティーパーティーをしよう!」と畑にあるミントをたくさん摘んでくれた。

校舎に戻って淹れたミントティーの香華。スタッフのさっちさんが焼き立てのクッキーを用意してくれていて、まさにティーパーティーになった。その時に湧いてくる気持ちやアイディアを、大切にしていく空気がCompathに満ちていた。なんて素敵な始まりだろう。

この日のお夕飯は、東川町民の方がご飯を用意してくれる「東川キッチン」だった。関東から移住された経験を持つ、お料理上手な町民さんがご飯を用意してくださった。

仕込んでいただいた肉だねで、みんなでしゅうまいを包む。手を動かしながら、あれやこれやと話す。東川に移住するまでのお話。おうちのことや子育てのこと。仕事への思い。キッチン担当の町民さんやプログラム参加者、Compathのスタッフさんと混じり合ってとりとめもなく。

おかずの春雨の炒め物がおいしくて、子どもたちが何回もおかわりしていた。家でも作って欲しいとリクエストされたのだ。レシピを聞かねば!

夕食のあと、希望者で入浴施設「キトウシの森きとろん」に行くことに。ついさっき初めて会った同士だけど、主催者も参加者もみんな一緒にお風呂に入った。小さな子がいるとなかなか入浴施設に行きづらいけれど、誰かが誰かの子を見守り合って、賑やかなひとときだった。


その場にあるものに目をむける2日目

2日目の朝ごはんは、昨晩のおいしい残り物やCompathの方が用意してくれたパンなど。校舎のキッチンには大きな冷蔵庫が2台あり、シェア用とゲスト用に分かれている。シェア用の冷蔵庫を開けると、季節のものや差し入れもあった。「みんなで食べてね」の気持ちが詰まったおいしいバトンをありがたく頂く。

ふと、日頃の食事の準備で自分が空回りして勝手に疲弊していたことに気づく。あれも家族に準備しなくちゃ、これも食べさせなくちゃと肩に力が入りすぎていたかもしれない。そこにあるものを大切にする。不便も愛する。ゆとりをもって、朝食の時間を楽しく過ごす。

プログラムのテーマのように「そのままの存在をそっと抱きしめる」の気持ちを食事でも大切にしたいと、窓の外の緑を眺めて思う。

朝食の後、ヨガでリフレッシュし、午後は自由時間。我が家は東川町に偶然移住している友人がおり、町を紹介してもらうことになった。

町中に広がる水田を一望できる丘。個性の異なる住宅街。お子さんの通っている小学校(ぶどう畑や水田も持っている!)。彼らが野菜を育てている農園。町の中心部にある素敵な図書館。どれもその土地ならではの輝きがあって、我が家の知らない当たり前がある。

車の中で友人が教えてくれた「(東川町を流れる)忠別川も、東川も、旭川も、ぜんぶアイヌ語の『日が昇る川』って意味が由来」なんです。」という話は、この数カ月後に娘の夏休みの自由研究にも書かれることになった。


大人と子どもが程よい距離でお互いの世界を楽しむ3日目

3日目は、養鶏家「ファーム・レラ」の新田さんによる食に関する講義だ。
養鶏や稲作に携わることになった経緯、暮らしの中で大切にしていること。

お互いの食に対する価値観を交換する。「ああ、食べることや食を囲んで生まれる人間関係って大好きだなあ」と再確認する。新田さんのお子さんを思う気持ちから生まれた「大雪なたまご」を使い、みんなでおにぎらずを作ってお昼ご飯にいただいた。

夫も初めてのおにぎらず作りに挑戦。それぞれのおにぎらずがみんなおいしそう!子どものお弁当にレパートリーが増える予感で嬉しくなる。

食の講義のあいだ、子どもたちは校舎の隣の森と畑でデイキャンプをして過ごしていた。オールイングリッシュで、アクティビティトレーナーさんが担ってくれるプログラム。前の晩から泊まり込んでくれた大学生ボランティアさんとCompath卒業生でもある保育士さんが、ここまでの時間で子らと仲を深めてくれていた。

絵本の読み聞かせ、お絵描き、おりがみ、体を使った名もない遊び…。そうして迎えた親子分離だったので、小さな人は自然に朗らかにプログラムに繰り出して行った。

校舎の大きな窓から見える、子どもたちの様子。タープを張り、ハンモックを木に吊り、火を起こしてホットドッグを作って頂く。暑さが気になる日だったけれど、いつでも室内に休憩に来られる場所で、頼もしい人たちが支えてくれて、親は安心してお任せした。(親子分離プログラムって、子どもたちのことで環境面や精神面で心配事があると大人が集中できませんよね。指先が触れるか触れないかの距離でいられることが、とにかく有り難かった。)

夕飯は、CompathのデッキでのBBQ。スタッフさんや参加者だけでなく、町民や学生ボランティアさんも、みんな混じり合って肉を焼き、野菜を頂き、話をする。

上の娘は、すっかり仲良くなった大学生ボランティアさんにぴったりくっついて終始おしゃべりをしていた。彼らが帰った後、「わたし、こっちゃん(学生ボランティアの人)みたいなことしたいし、こっちゃんみたいなべんきょうをしたい。どうすれば良いのかな。」と、娘が口にした。


親子コースで感じたCompathのおもしろさ

ここからは最終日の振り返りもかねて、親子プログラムから時間を経て思ったことを書いてみる。

Compathのプログラムの面白さはいろいろある。
あっち側とこっち側で分断されてしまうのではなくて、みんなで作り、みんなで楽しむ機会がたくさんあること。プログラム内なのかプログラム外なのかという境目がぼかされ、東川町滞在のすべてに学びがあること。

助けたり助けられたり、くるくる変わる役割や関係性のなかで、こうやって生きられたら楽しいと感じた。自分ができることを提供し、誰かの得意なことを分けてもらう。自分が発見したことを伝え、誰かの気付きにはっとする。

ともに時間を過ごすなかで、自分の大切にしたいことを再確認したり、誰かの大切なものに触れさせて頂いたり。共同生活を送りながら、対話をしながら、発見が多々あった。

ここは大切にしたい自分の核の部分で、ここは手放しても良い部分。そのような整理が自分の中で進んだ。また、学生さんとの交流で娘が新しい世界の扉をそっと開いてもらったことは、この旅でいちばん嬉しい出来事だった。

Compathでのひとときが、何につながるのかどんな花を咲かせるのかはわからない。東川町で私たち家族に蒔かれた種を、日々どう育てるか。それは私たち次第だ。


Compathでは、25年冬に親子コースを開催する予定です。

もし今回の記事を読んで、親子コースに興味を持っていただいた方がいらっしゃいましたら、下記のフォームからお問い合わせください。
コース開催詳細が決定次第、優先的にご案内させていただきます。

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