”GHQと戦った女・沢田美喜”を読んだ
戦後、米軍占領後すぐに生まれ始めた日本人女性とアメリカ人との間に生まれ、捨てられた赤ん坊を育てるための施設、エリザベスサンダースホームの創始者、沢田美喜さんの人生を、ジャーナリストの青木冨貴子さんが描いた本です。
当時の沢田美喜を知る人の貴重なインタビューや、米国公文書館に保存されている沢田さんの手紙からわかる接収された岩崎家の悲惨な様子、沢田さんの実のお子さんの複雑で率直な言葉、戦後のGHQ占領下の闇など、10年かけた取材というだけあって、ものすごい情報に基づいた大変面白い本です。
文章が歯切れがよく、あっという間に引き込まれます。
孤児を育てた善意あふれる聖女、という画一的なイメージしかありませんでしたが、まったく違いました。三菱財閥を一代で作り上げた岩崎弥太郎の血を受けたスケールの大きい肝の座ったエネルギー溢れる豪快な女性でした。
戦後、東京のあちこちに、ぼろくずのように捨てられていた混血の赤ちゃんたち。
沢田さんも東海道線の網棚の風呂敷包みの中の黒人の赤ちゃんの死体を捨てた母親と間違われ、このパンすけ、と車内で吊るし上げになりました。
一方、マッカーサー夫人宛てには混血の赤ん坊が届けられたことがあり、非常に気分を概し、夫妻は、それ以後日本人に会わなくなるという事件も。
日本、アメリカ、両国から見捨てられた赤ちゃんたち。
サンダースホーム設立も、日本人からも非難され、GHQからも潰されそうになったけれど、まったく負けなかったところがすごい。私財を投げ打って、人脈を使いまくって寄付をつのる。
そして、沢田さんの実の息子さんが80才を超えてなお「実子が孤児になり孤児が実子になった」と母親を取られたことを辛辣に語るのも印象に残りました。
大磯の沢田美喜記念館に行ったとき、館長さんが勧めてくれたのですが、何度も読みたくなる秀逸の本です。