Vol. 19 2025年1月時事レポート「2025年、10のキーワード」by 大伴審一郎
2024年を振り返ると、東京都知事選での石丸現象、政治と金の問題で揺れた衆議院議員選挙、兵庫県知事選におけるSNSの影響力、トランプ氏再選にみる保護主義の台頭、韓国大統領による非常戒厳、シリアのアサド政権崩壊など、社会でもしくは身近で、今まで隠れていた事柄が露呈し、大いに揺れた1年だったと言えるのではないだろうか。
2025年は、そうした2024年で露呈した事柄を導火線として、大きな変化が起こることが予想される。そこで、年頭にあたり、問題の解明や理解の上で、重要な手掛かりとなる10のキーワードをピックアップした。(なお、以下のキーワードは個人的な見解である)
1. 政治の混迷
昨年行われた衆院選において、与党過半数割れに追い込まれた石破政権は、本年前半に次のような3つの壁が待ち受ける。
① 予算成立の壁
年度内に予算を成立させるためには、3月末までに参議院で可決しなければならない。そのためには、2月末までに少数与党の衆議院を通過させる必要があり、激しい攻防が予想される。石破政権は野党に振り回され、支持率は一層低下する。
② 内閣不信任案の壁
通常国会の会期末である6月末頃、野党は石破政権に敢えて通らない要求を突きつけ、「国民に信を問う」として内閣不信任案を提出することが予想される。このような状況になった場合、野党は本気で石破政権を倒し、政権交代に向けた動きを加速させるだろう。
③ 参議院選挙の壁
通常国会を乗り切ったとしても、7月下旬に予定されている参議院選挙までに支持率が回復しない場合、「石破総理では参院選は戦えない」として、自民党内で“石破おろし”が始まる。
2. トランプ大統領が台風の目
2025年1月20日にトランプ政権が誕生する。トランプ氏は関税の引き上げを予告しているため、世界中の企業が関税や貿易戦争に備えている。関税を上げた場合、世界恐慌の引き金を引く可能性が指摘されているが、実際、20世紀の大恐慌の原因のひとつは関税だった。行きすぎた保護主義が世界恐慌を引き起こしたわけだが、歴史が繰り返される可能性がある。
世界中が保護主義に走れば、大きな問題を抱えることになる。インフレ、ブロック経済、戦争など、2025年の世界は不安定化するだろう。
また、大統領の暴言、虚偽発言、政権運営の経験の浅い閣僚や高官たちのエラー、失言が混乱に拍車をかける可能性がある。
3. 日銀による利上げ
日銀は、展望レポートで2025年も2%程度のコアインフレ率が続くと見込んでおり、この見方が崩れない限り半年に1回程度のペースで利上げを行うだろう。これにより、長期金利は1%台半ばまで上昇(現在は1.10%程度)すると思われる。
米国ではインフレの収束を背景に利下げが進む一方、日本では持続的な物価上昇を背景に、段階的な利上げが実施されるため、日米金利差縮小から、緩やかな円高進展(2025年末で135円~145円あたり)を予想する。
しかし、トランプ氏が掲げる関税率の大幅な引き上げが実行された場合、輸入品価格の上昇という形で米国のインフレが再燃するリスクがある。この場合、FRBの利下げが阻害され、米金利の上昇がドル高・円安圧力につながる可能性には注意が必要である。
4. 超高齢化社会の進展
2025年には、団塊世代が全員後期高齢者となり、人口全体の18%を占め、国民の5人に1人が75歳以上の社会となる。
そのため、社会保障費の負担増、医療費の増加、医療・介護システムの崩壊、医療・福祉人材の不足によるサービスの低下などが顕著となり、さらに労働力不足による国内市場の縮小、後継者問題による廃業の危機などの問題が、同時多発的に発生する可能性が指摘されている。
5. システム障害
将来の成長や競争力強化のためにはデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進すべきであるが、DX推進の妨げとなっているのが、企業が抱えている古い基幹システムである。
古い基幹システムは、カスタマイズの繰り返しなどで複雑化・ブラックボックス化し、仕様や設計が把握しにくくなっている。
複雑化・ブラックボックス化した基幹システムを「レガシーシステム」と呼ぶが、レガシーシステムでは、システムを新たに刷新するにも費用や人的リソースがかさみ、刷新に踏み切りにくい現状に陥っているケースが多い。
このレガシーシステムを放置し続けた場合、IT人材不足の加速と、SAP ERPの保守サポート終了のタイミングが重なる2025年に問題が顕在化する。(システム障害のトラブルリスクが3倍になると推定)
※ 「SAP ERP」は、ドイツに本社を置くソフトウェア会社。基幹システムではSAP社とアメリカのOracle社が世界の2大メーカー。世界で25業種・5万社が導入している。(日本国内では約2,000社以上が導入)
6. フェイクかファクトか
2024年に行われた選挙(兵庫県知事選)で、大手メディアの情報を根拠とする投票をSNSの情報を根拠とした投票が上回った。つまり、投票行動に結びつく情報が既存メディアの報道から、個々が発信するSNSへと転換したのである。このことは、SNSで拡散されたフェイク情報が投票行動に結びついてしまう危険性を孕んでいる。
そのため、既存メディアは危機感を募らせ、様々な対策を考案中である。本年は、放送法、公職選挙法の解釈を見直し、表現の自主規制撤廃を辞さない意気込みを見せるであろう。
ただし、ファクトチェックは大手メディアを中心に積極的に行われているものの、それ自体がメディアによる陰謀と捉える世論が形成されているため、既存メディアがいかに国民に信頼されるかが大きな課題となる。
7. 体感治安の悪化
AI技術を使ったディープフェイク動画によるSNS型詐欺の増加、相次ぐ闇バイトを実行役にした全国的な強盗事件、サイバー犯罪など、さまざまな犯罪に匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる「トクリュウ」が関与している。
もはや、犯罪は都市部で多く発生し、田舎は安全という社会は過去のものとなった。むしろ、防犯カメラの設置が遅れている地方が狙われやすいと言っても過言ではない。こうした状況は、2025年になっても解決することはできず、体感治安は一層悪化するだろう。
これらの犯罪を警察が抑止できなければ、昨年の袴田事件の冤罪確定と今年1月4日にNHKで放送された警視庁公安部による冤罪事件を重ね合わせ、警察の信頼は失墜する。
8. 異常気象
世界気象機関(WMO)は、2025年以降も気温が上昇しやすい状態にあると指摘している。異常気象による影響は、次のようなものがある。
・干ばつや洪水、山火事などの自然災害
・食料不足や水不足
・水産・農業生産減少、生態系への影響
・感染症の増加
日本でも、大雨や猛暑、暖冬といった異常気象が立て続けに発生しており、特に夏の時期には毎年のように広い範囲で記録的な大雨を観測していることを考えると、常に災害を意識して備えておく必要があるだろう。
9. 自分の身は自分で守る
昨今、「想定外」という言葉をよく耳にするようになった。ということは、想定外は想定外ではないと捉えた方が良いだろう。もはや、想定外は言い訳にしかならず、想定外を想定しなくてはならない時である。
自助・共助・公助とは、災害や危機に備えるための取り組みで、それぞれが独立して機能するだけでなく、相互に連携して役割を果たすことで、防災体制を強化することができる。
まずは、自分の身は自分で守ることができるよう、心構えと準備を整えておく必要がある。
10. 文化立国元年
2025年4月13日(日)~10月13日(月)まで、日本国際博覧会(通称:大阪関西万博)開催される。同万博のコンセプトは「People's Living Lab(未来社会の実験場)」で、メインテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」、サブテーマは「いのちを救う」「いのちに力を与える」「いのちをつなぐ」である。
つまり、どうすれば争いのない平和で豊かな共生社会が実現できるか、という人類の課題に挑戦しようという試みである。
未来社会は、AI等のテクノロジーによって飛躍的に便利な社会になると予想されるが、便利な社会=豊かな社会とはならないだろう。そこには、人と人が助け合う暮らし、つまり文化活動(精神活動)が必須であると考える。
日本には、世界に対して誇れる豊かな文化が多く存在する。加えて、日本の精神文化には争いを避けるためのヒントがある。そこで、万博のメニューに「国際交流プログラム」を設けた。
現在、同プログラムには約90自治体が参加し、およそ140事業の交流が開始されることとなっているが、それを万博のレガシーとして継続していく方向で検討中である。
近い将来、日本が文化立国を宣言する日が訪れるかもしれない。
1月と2月のイベント情報
1月は毎月恒例のオンラインイベントがあります。
2月には年に一度の対面イベントを控えております。
次回のイベントでは、皆さんお待ちかねの「インテリジェンスの真価」に焦点を当て、社会との関わりや「見抜く力」について掘り下げていきます。ぜひ、次回もご参加ください!
今後のイベント情報
1月21日(火)20:00~21:00 1月のイベント
「リーダーシップとマネジメント ~ 任せる力 ~」
お申込みはこちら
2月22日(土)都内にてリアルイベント
年に一度のリアルイベントを3部構成で予定しています。
<プログラム>
第1部:15:00 - 15:30 「自分を知る」12の力の解説およびそれぞれの力の伸ばし方
第2部:15:30 - 16:30「世の真理を知る」あなたは、どの視点で物事を見ていますか?
第3部:17:00 - 19:00 「懇親会」会食しながらカジュアルに交流しましょう
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今月もお読みいただきありがとうございます。
オンライン、オフライン問わず、お目にかかれることを楽しみにしております。
※ この記事の内容は大伴審一郎の個人的な見解です。