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授受の壁
パソコンを使ってもいいですか。
パソコンを使わせていただいてもいいですか。
パソコンを使ってもいいですよ。
メールを送ってもらってもいいですか。
メールを送らせていただいてもいいですか。
メールを送っていただいてもよろしいでしょうか。
ここに置いてもかまいませんか。
ここに置かせていただきたいんですが。
ここに置いていただけませんか。
ここに置きたいんですが、よろしいでしょうか。
Q.誰がする動作でしょうか?
この10の文は、日本語学習者が〈許可〉の用法を学ぶセクションで問題として出されているものです。
許可をもらったり出したりする、依頼する際の言い回しです。
問題として出されているぐらいですから納得なのですが、「誰が?」と聞かれると我々ネイティブでも一瞬「ん?」考えてしまう文ばかりですよね。
これらの文をノンネイティブ目線で考えてみます。
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①誰がするの?
②自分は何をすればいいの?
③質問(許可を求められている)なの?命令(指示)なの?
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①
授受表現は非常に難しいです。
「あげる」「もらう」「くれる」
動作主が咄嗟に理解できず、コミュニケーションで苦労するノンネイティブの方は多くいます。
文中に主語はありませんし、同じことを言っていても主語か変わることもあります。
・(〇〇は)メールを送ってくれました。
・(私は)メールを送ってもらいました。
以前の投稿でも触れましたが、ノンネイティブに対する授受表現を伴う〈依頼〉や〈指示出し〉は、伝わったかどうかを何度も確認することをお勧めします。
②
「てもいいですか」「てもいいですよ」「でもかまいませんか」
「〈使役〉ていただけますか」
〈授受表現+上記の表現〉
このダブルパンチで、自分が何をすることを相手が求めているのかが分かりにくくなっています。
ここにさらに「貸す/借りる」「見る/見せる」なんかが絡んでくると、使う言葉自体は初級レベルでも、超級レベルのコミュニケーション力が必要になってきます。
日本語の難しさはここにあります。
難易度=言葉自体< 言い回し
③
「〜か」という質問の形で終わってるものがほとんどです。
日本語の厄介なところの一つに、質問の形、しかも敬語などを使ってソフトに伝えているのに、実際は「命令」に近い指示出しで使うことが多いという点です。
上記の10の文の6つ目。
・メールを送っていただいてもよろしいでしょうか。
これは「指示」ですよね。
「〜でしょうか」というソフトな質問ですが、伝えているのは「メールを送れ」。相手が自分より立場が上なら、間違いなく「依頼」ではなく「指示」。
この辺りに混乱するノンネイティブは非常に多いです。
難しい言葉を知っていたり、流暢に使えているノンネイティブと話すと「すごい!」と思うのは自然です。
実際、彼らはすごいです。
でも、実は冒頭のような表現を涼しい顔で使いこなし、正確に理解できる人も相当なコミュニケーションレベルにあるのです。
皆さんの周りにいたら、「上手だね」と言ってあげていただきたいと思います。
〈外国語としての日本語〉
こんな目線で見ると日本語の難しさは ”言い回し” とも考えられるんですね。