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サラソン読書会第1回

コミュニティのチカラで英書を読み通そう!
サラソン読書会の第1回を開催しました!

読書会の目的

「心理的コミュニティ感覚」概念を生み出したサラソンの主著、
『The psychological sense of community』(1974年)の全章を読むことを通じて・・・
1)「心理的コミュニティ感覚」概念への理解を深める
 -コミュニティ感覚概念の内容と意義への理解を深める
 -当時のアメリカの学会・社会情勢など概念の背景・文脈を理解する
2)コミュニティの意義や可能性について考える
 -感想交換を通して、コミュニティの意義や可能性についての考えを深める・広げる
ことを目的としています。

第1回:10月27日(金)20:30-22:00 /第1章 ←今日はココ
第2回:11月10日(金)20:30-22:00 /第2〜4章
第3回:11月24日(金)20:30-22:00 /第5章
第4回:12月  8日(金)20:30-22:00 /第6章
第5回:12月22日(金)20:30-22:00 /第7〜9章
第6回:  1月12日(金)20:30-22:00 /第10〜11章

5名で頑張っていきます!

  • 川西先生(上智大学、専門は行動経済学、猫好き)

  • 田村先生(東海大学、専門は行動経済学、犬好き)

  • 呉さん(CRファクトリー代表、野球好き)

  • 藤村さん(リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所、学部時代にコミュニティ心理学を学んでいた、猫好き)

  • 藤澤(リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所、専門は組織行動論、猫好き)

第1章に書かれていたこと

第1章はOverview=概要です。
サラソンが本書を著した動機が明らかにされるとともに、このあとの各章でどのようなことが書かれていくのかが予告されています。

書籍が出版されたのは1974年ですが、サラソンは当時のアメリカ社会で人のつながりが失われ、人々が孤立に陥っていることに危機感を感じていたようです。それを、「心理的コミュニティ感覚」の不在と表現しています。

サラソンは「心理的コミュニティ感覚」について、

すぐに利用でき、互いに助け合える人間関係のネットワークに属しているという感覚(the sense that one was part of a readily available, mutually supportive network of relationships upon which one could depend)

と説明しています。
次の部分などは、50年後の未来の異国に住む私にとっても身につまされるような描写と感じられます。

私たちが暮らす地域社会は、地政学的な存在であり、私たちが親近感を抱くことはほとんどない。地域社会で働き、税金を納め、投票することはあっても、それ以外の点では地域社会の一員であると感じることはない。
私たちは地域社会から必要とされているとは感じないし、地域社会の問題解決に自分がどう貢献できるかを真剣に考えることもほとんどない。日中は忙しく、夜は疲れ、週末には娯楽やレクリエーションを求める。そして親であれば、毎日私たちの関心を必要としている子供たちがいる。地域活動に参加する時間はどこにあるのか?どんな地域活動?自分が貢献できることは何か?私はどこで必要とされているのか?
親密さ、多様性、有用感、帰属意識(intimacy, diversity, usefulness, and belongingness)といった私たちの欲求を、よりよく満たしてくれるような、より大きな人間関係のネットワークの一員になりたいと切望する瞬間は、多くの人にとって頻繁に訪れる。心理的コミュニティ感覚という概念(The concept of the psychological sense of community)は、飢餓感と似ている。どちらも定義するのは簡単ではないが、飢餓の結果として個人が経験する感覚を間違えたりはしないように、心理的コミュニティ感覚の欠如の経験を思い違えたりはしない。

感想交換

初回でもありますので、多くの時間を自由に感想交換するために使いました。
いろんな感想が出て、そこから思考や共感が広がる時間になりました。

  • サラソンがいろいろな葛藤の中で心理学研究をしていることにすごく共感した。合理性至上主義や損得勘定に走りやすい社会の中で、感じてきた違和感に重なる。

  • サラソンが指摘する米国社会の危機的な状況は現在の日本の危機的な状況とは異なるのかもしれないなと感じた。米国社会の危機的状況は急激で激しかったのに対して、日本の危機的状況はゆっくりと進行しているように思う。

  • " 心的内界至上主義(intrapsychic supremacy)”のアメリカの心理学界に「コミュニティ心理学」の必要性を訴えた苦労、熱意が伝わってきた。当時は、現在以上に、個人と環境との相互作用に着目する観点が理解されなかったのだろう。

  • 震災時にケア活動を行うなかで、「コミュニティ心理学」の在り方は、個人の問題を個人に対して解決しようとしないことだ、と聞いたことを思い出した。

  • 「個人」ではなくて「コミュニティ」、「治療」ではなく「予防」という視点が重視されている。

  • 「心理的コミュニティ感覚」という概念を具体化していくことが、「コミュニティ」に「予防」をほどこすこととどのように関連していくのかに注意して読んでいきたい。

  • 社会全体を覆う大きな問題に対して、根本から向き合う姿勢を感じた。自分の研究にそのような姿勢をどのように取り入れていくか考えてみたい。

次回に向けて

サラソンの問題意識や研究に向き合う姿勢に共感し、本書から学び取りたい観点が具体的になったり、動機づけが強まったりする良い時間になりました。
次回はまた2週間後、第2章~第4章をさらっと駆け抜ける予定です。

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