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「東レや日東電工、CO2回収コスト半減 排ガス処理膜生産」に注目!

東レや日東電工、CO2回収コスト半減 排ガス処理膜生産 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

日東電工やJFE系などが、工場から出る排ガスから二酸化炭素(CO2)を回収する技術を実用化します。膜を使ってCO2を回収する技術で、日東電工は専用の装置を2025年にも量産します。同技術は日本勢が先行しており、従来手法と比べコストを半分以下にできます。脱炭素社会に向けて必要な排ガス処理分野で、国際的な競争力をいち早くつけます。

日本のCO2排出量のうち産業部門は約4割を占めます。政府は2050年にCO2など温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指しています。目標達成には、工場から出るCO2を回収することが重要となります。

排ガスからCO2を分離する技術は世界各地で複数の手法が研究されています。このうち、日東電工など日本勢は排ガスから膜を通してCO2を分離する「膜分離法」の実用化を進めます。CO2をこしとるように回収するため、化学物質を使う手法などと比べ必要エネルギーが小さいとされます。

日東電工は滋賀県の工場で高分子材料から分離膜を製造します。約20億円を投じます。分離膜を筒状に丸めて複数本を連結させたガス処理装置として販売します。

排ガスを煙突で排出する前に装置に通すことで、CO2を約90%回収できます。処理装置は最小約70平方メートルから設置でき、分離膜の筒を増やすことで事業所の規模に柔軟に対応します。中小規模の工場で年間3000トンのCO2を回収するといいます。

JFEエンジニアリングは分離膜とCO2を吸収するゼオライトを組み合わせて回収率を99.5%に高めたシステムの販売を今年度から始めます。分離膜自体のCO2回収率は50%程度にとどまりますが、ガスを再度ゼオライトで処理することで回収率を高めました。

東レは炭素繊維を使った分離膜の開発を進めます。2026年度にメタンガスや天然ガスを精製する分離膜を実用化し、2030年度にも排ガス向けに使えるようにします。耐久性が高く交換費用が抑えられるのが特徴で、年100億円以上の事業にする計画です。

分離膜で回収したCO2は地中に埋めれば大気中に逃さず保管できます。このほか、そのまま産業ガスとして利用したり、植物の成長促進剤、化学原料などとして活用したり、コンクリートのなかに埋め込んだりすることもできます。

分離膜技術は日本が強みを持ちます。特許調査会社のパテント・リザルトによると2024年3月までの分離膜の世界特許出願数(電池、燃料電池、半導体関連を除く)は東レが首位の694件で、日東電工(374件)が続きます。上位10位のうち8社・機関を日本勢が占めます。

日本勢の特許が多い背景には、「上下水道の浄化のため水処理膜を採用する自治体が多く技術が磨かれた」(日東電工)ことがあります。上下水道で培った技術を、海水の淡水化膜やガス処理膜へとつなげたことで技術の蓄積が進んでいます。

排ガス内のCO2回収は現在、化学溶液と反応させる手法が主流となっています。溶液の成分に吸着したCO2を分離するには120度以上の高温にする必要があり、燃料費がかかります。回収設備も大型となり、火力発電所などにしか導入できていません。

各社は分離膜を使ったCO2の回収コストについて今後検証を進めます。経済産業省はCO2を1トン回収するのに従来手法では4200円かかりますが、日本勢が強みとする分離膜では1000円台まで下げられると試算しています。分離膜は米化学大手MTRが販売していますが、回収率が50〜70%程度にとどまり普及には至っていません。分離膜技術の実用化が進むと、日本勢がCO2回収関連市場で先行することができます。

富士経済によると、分離膜を含むCO2分離装置と関連材料の世界市場規模は2050年に3兆5000億円と2022年比で6倍に成長します。

日東電工はニッチトップを生み出すイノベーションモデルの進化の事例として、記事にあるCO2分離の技術開発と導入を紹介しています。滋賀事業所では、工場の排ガスからCO2を分離・回収する高分子膜を活用した技術を活用して、ボイラーの排気ガス(低濃度CO2)を直接回収する実証機を導入し、2023年3月より試運転を開始しています。2025年度の実用化に取り組んでいます。

この他、日東電工はNittoグループ初となるCO2排出量ゼロを達成する工場を東北事業所に竣工し、2024年度下期より生産稼働を開始することを7月8日にリリースしました。太陽光発電による余剰電力を使用したグリーン水素の製造・蓄エネや、液化水素から水素ガスを製造し、水素燃料100%のボイラーで蒸気を生成する国内初のシステム構築を通じて、Nittoグループ全体でのCO2排出量実質ゼロの実現を目指します。

様々な形でCO2排出削減に取り組み、環境課題の解決に向けて活動している日東電工に期待しています。

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