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「ディスコ関家社長『半導体の全分野に注力』」に注目!
ディスコ関家一馬社長「半導体の全分野に注力」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
「切る・削る・磨く」の技術に強みを持つ半導体製造装置のディスコは、世界的なインフレによる半導体不況下でも堅調な業績を維持します。電気自動車(EV)や生成AI(人工知能)といった成長分野に使う半導体向けの装置を他社に先んじて開発してきた結果、半導体メーカーが同社の装置を積極的に採用しています。関家一馬社長に成長戦略や市場の見通しについて聞いたインタビュー記事です。
パソコンやスマートフォンの売れ行きが鈍く半導体市場は盛り上がりに欠けますが、2024年3月期の業績見通しはどうかとの質問については「まだ判然としないが、過去最高の業績を記録した前の期に比べてもそれほど悪くなさそうだ。とりわけ、生成AI向けのデータセンターに使う、高速で大容量処理が可能なHBM(広帯域メモリー)と呼ぶDRAM向け装置の引き合いがとても強い。一般的な半導体向けに比べてゴミの発生を抑える仕様で、長年開発してきた製品が最近の生成AIブームで売れ始めた」
「HBMは高価なため、半導体ウエハーをチップに切り分ける後工程を外注せず、半導体メーカーが自社工場内に新たな専用ラインを設けて生産体制を強化している。半導体メーカー各社がHBM分野で市場を取ろうと大勝負の設備投資をしている」と回答しました。
2024年3月期の研究開発費は250億円と過去最高額を費やす見通しについては「ハイテクメーカーとして、研究開発の手を抜いたら成長が止まる。顧客は装置メーカーの開発力や技術サポート力を見ており、当社にもライバルはいる。研究開発の力が競合を凌駕(りょうが)していることが、当社の高いシェアや利益率を維持している」とコメントしました。
半導体のうちどの分野の装置の開発に注力するかについては、「全ての分野だ。汎用品はもちろん、HBMのDRAMや、電力効率の高い炭化ケイ素(SiC)ウエハーを使うパワー半導体など、どれも力を入れて開発する」
「砥石を祖業とする当社は、半導体ウエハーを『切る、削る、磨く』という分野の装置で7〜8割の市場シェアを持つ。手がける領域が限られる分、それぞれの技術を濃密に深く掘り下げられる」とコメントしました。
2023年7月には熊本県に、製造を自動化する研究開発施設「中工程リサーチセンター」を開設したことについては、「人がウエハーを運ぶなかで破損するエラーをなくしたいと考えてきた。前工程で電子回路を描いたウエハーは価値が高く、当社のグラインダー(研削装置)やダイサー(切断装置)の加工で不良品が発生すれば、半導体メーカーにとっては大きな損失につながる。後工程のなかでも最も責任の重い部分であり、自動化でミスが減ることに貢献したい」と回答しました。
米国が中国向けに先端半導体の製造装置の輸出規制を強化するなど、高まる地政学リスクについては「米国は中国が高性能な半導体を作る能力を止めようとしているが、レガシーな半導体まで作れなくなる措置は取らないだろう。米国経済にとっても中国の半導体は必要だ。デジタル化で人類が使う半導体チップの数は増え続け、世界のどこかで製造しなければならない。グローバルで装置を販売していくので問題ない」
「一番の懸念は中国国内で装置の内製化が進むことだ。実際にダイサーやグラインダーを手がける中国メーカーもあるようだが、実力はまだ低そうだ。半導体製造装置には複雑なノウハウがあり、日本勢に追いつくのは簡単ではないだろう」と回答しました。
日本の装置メーカーが国際競争力を持つには、どんな策が必要かについては、「メーカーの社員が視野を広く持つことが大切だ。縦割り意識で、自分の領域には詳しいが他の領域には関心がないという状況では産業が強くならない。海外メーカーはもっと視野が広く、他分野の情報にも通じている印象だ」
「日本で半導体産業が広がった黎明(れいめい)期には、大手電機メーカーのエンジニアが設計や製造まで全て引き受けて理解しながら事業を必死で立ち上げた。そういった人たちが引退し、今は各自が専門領域でタコツボ化している。人材育成が何より大切だ」とコメントしました。
「研究開発を止めたら会社は終わり」。ディスコの関家一馬社長が口酸っぱく唱え続けてきた結果が、2023年の同社のビジネスに大きく生きました。新型コロナウイルス禍での半導体特需の反動で、業界全体が需要減に沈んだなかでも、次世代半導体向けの設備投資は活発でした。生成AIやEVに使う高性能半導体の装置には潤沢な資金が流れて新ラインが立ち上がり、ディスコの装置も局所的に引き合いが強かったとのことです。
HBMと呼ばれるDRAM向けの装置は加工時のゴミを抑える仕様で「15年前から製品化を進めた装置がようやく日の目を見た」(同社)。パワー半導体でも加工の難しいSiC向けの装置も2023年末に新たに開発し、好評を得ているそうです。
株式市場の期待も大きいです。2023年12月には上場来高値を更新しました。時価総額は3兆円を超え、年間売上高の10倍以上にまで膨らんでいます。
関家社長の話からは、世界トップメーカーでありながら、常に緊張感を持って技術革新を続ける覚悟がにじみました。2023年冬の日本経済新聞のボーナス調査では断トツでした。好調な業績と人材育成という好循環の輪をどこまで大きくできるのか。日本の製造業のロールモデルとして手本を示してもらいたいです。
ディスコはシリコンウェーハ等の半導体材料について、「切る」「削る」「磨く」の3種類の加工に特化している企業です。パソコンや携帯電話などのデジタル製品を、小さく、薄くするためには、その中で機能する部品が小さく、薄くなる必要があります。小さく薄くなれば、同じスペースにたくさんの部品を搭載できるようになるため、高機能にもなります。ディスコの成長は、生活の快適を作り出す上で欠かせません。今後も、成長を続けるディスコに期待しています。