越境EC市場の基礎と戦略:海外販売の開始手順と展開機会
越境ECビジネスをこれから展開する事業者に向けて、海外市場で自社商品を販売する手順や注意点を徹底解説します。自社型EC・モール型ECで越境対応をするそれぞれのメリット・デメリットや、越境EC成功の秘訣を知りたい方もぜひ参考にしてください。
海外の消費者に自社商品を販売する越境ECを展開するにあたって、具体的な出店方法や注意点などを詳しく知りたい方が多いのではないでしょうか。
越境ECを始める際、自社で越境対応したECサイトを構築する、または越境対応したECモールに出店するという選択肢があり、出店方法によるメリット・デメリットを十分に理解しておかなければなりません。
この記事では、越境ECで自社商品を販売するまでの詳しい手順や注意点、越境ビジネスを成功させる秘訣まで徹底解説します。
この記事でわかること
越境ECで自社商品を販売する流れ
自社型EC・モール型ECで越境対応するメリット・デメリット
越境ECで成功する秘訣10選
こんな方におすすめ
海外で商品を販売したいが越境ECの知識が全くない
自社で越境対応するか海外ECモールに出店するかで悩んでいる
越境ECのメリットだけではなくリスクまで把握しておきたい
越境ECとは?
越境EC(海外展開)の5つのメリット
2-1. 新たな市場を開拓できる
2-2. 売上を拡大できる
2-3. 実店舗より簡単に出店ができる
2-4. 世界的なEC市場の拡大
2-5. 日本製品の世界的人気越境ECで自社商品を販売する方法
3-1. 自社越境ECサイトを構築する
3-2. 海外ECモールに出店する
3-3. 代行販売業者に依頼する初心者でもわかる越境ECの始め方
4-1. 関税・発送のルールを把握する
4-2. 購買層の分析とターゲットの設定
4-3. 商品・商材を準備する
4-4. 商品・商材の価格を設定する
4-5. 越境ECサイトの出店方法の決定自社型ECで越境対応するメリット・デメリット
メリット
デメリットモール型ECで越境対応するメリット・デメリット
メリット
デメリット
1. 越境ECとは?
越境ECとは、インターネットを利用して国内から海外に向けて商品を販売するEC(電子商取引)のことです。
自社商品を海外の消費者に購入してもらうためには、自社で運営する越境ECサイトを構築したり、ECモールに出店したりするなどして商品の販売経路を確保します。
海外市場で需要が高い商品を販売することは、売上・利益の拡大や新規顧客の獲得に繋がります。
ただし、越境ECを展開する場合、商品の海外への出荷方法や国際的な決済方法、海外顧客とのコミュニケーション方法など、多くの課題をクリアしなければなりません。
越えなければならないハードルは多いですが、海外市場の拡大やグローバルな競争力の向上など、多くのメリットがもたらされます。
2. 越境EC(海外展開)の5つのメリット
越境ECでの海外展開は、国内での商品の流通では得られないさまざまなメリットがあります。
ここでは、以下の越境ECの5つのメリットを詳しくご紹介します。
2-1. 新たな市場を開拓できる
越境ECを展開することで、自社商品を新たな市場に展開することができます。
海外市場には日本とは異なる消費ニーズやライフスタイルがあり、それに応じた商品やサービスが求められます。
例えば、日本の10倍以上の消費者が存在する中国では、近年におけるEC普及率も高く、巨大な市場で潜在顧客の獲得を効率よく狙えるでしょう。
経済産業省が令和4年8月に公開した「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」では、2021年における中国のEC市場規模は2兆4,886億米ドルにも及ぶとみられています。
また、中国越境ECに関しても、1,773億米ドルの市場規模を誇っています。
中国以外ではアメリカが大きなEC市場を築いており、2021年は8,707億米ドルの市場規模だったと発表されています。
近年急成長を遂げているのが、東南アジアのEC市場規模です。ベトナム・タイ・インドネシア・フィリピンなどで急激にECの需要が高まっています。
上記のような新たな海外市場の開拓で成功すれば、さまざまな地域への進出を視野に入れた事業拡大が見込めます。
2-2. 売上を拡大できる
海外市場に進出することで、国内市場だけでは得られなかった収益を得られる可能性があります。
特に海外市場の規模が国内市場よりも大きい場合には、より多くのターゲットに対して自社商品を訴求できるため、売上が大幅に拡大することもあるでしょう。
越境ECの展開は、収益の多角化や成長戦略の一環として、売上拡大に期待できる有効な施策です。
競合が少ない地域を選択することで、価格競争を避けて利益率を高めることも可能です。
2-3. 実店舗より簡単に出店ができる
海外で実店舗を出店するには、現地のビジネス環境や法規制などを理解する必要があり、出店コストが高額になることがあります。
一方、海外ECモールや自社の越境ECサイトを利用すれば、インターネットを通じて商品を販売できるため、現地で物件を探したり地域の市場調査をする手間が省けます。
越境ECに対応したクラウド型のECプラットフォームを活用すれば、実店舗を構えるよりも初期コストを大幅に抑えることが可能です。
2-4. 世界的なEC市場の拡大
日本のEC市場では、スマートフォンやタブレットの普及、新型コロナウイルスの影響による消費行動の変化が要因となってEC市場が拡大の傾向にありますが、海外も例外ではありません。
インターネットを通じたビジネスや取引が活発化したことや、店舗とECサイトを統合するオムニチャネル化が進んだこともあり、世界のEC市場規模は拡大し続けています。
特にベトナムなどのアジア諸国では、クロスボーダー市場の成長が著しいため、越境ECの展開にも適していると言えます。
2-5. 日本製品の世界的人気
越境ECで海外の消費者に日本製品を販売することで、日本ブランドを好む新規顧客を獲得できる可能性があります。
日本は工業化が進んでいることから製品の品質管理が徹底されており、品質が高く信頼性があると海外でも認知されています。
また、美しく洗練されたデザインも海外で高い評価を得ており、自社ブランドのファンを獲得することで、より一層ブランドの価値を高めることも可能です。
日本国内で需要が減少している製品に関しても、海外での販売で需要を取り戻せる可能性があります。
3. 越境ECで自社商品を販売する方法
自社商品を海外の消費者に販売する手段は、主に3種類に分けられます。
3-1. 自社越境ECサイトを構築する
越境対応をサポートしているECプラットフォームを利用することで、自社のECサイト上で海外の消費者に対して商品を販売できます。
対象となる国や地域に応じて、言語・通貨・送料・税金などの設定を行い、さらに現地の決済手段に適応させる必要があります。
国によっては法規制があり、ECサイトの運営に制限がある場合もあるため、事前に調査が必要です。
3-2. 海外ECモールに出店する
自社のECサイトを構築せず、既に存在する海外のECモールや国内で越境対応しているECモールに出店し、商品を販売することもできます。
ECモールとは、1つの大型ECサイトに複数の店舗が出店する販売形態のことです。
越境ECに対応しているECモールでアカウントを作成し、会社情報や商品情報、支払い方法などを登録することで利用可能となります。
ECモール上で自社商品が注文された場合、受注情報が自社に送信され、その情報に基づいて決済や海外配送に対応します。
商品が無事に届いた場合は、ECモール側で売上精算が行われ、商品価格から手数料などを差し引いた金額が自社の口座に振り込まれるのが一般的です。
3-3. 代行販売業者に依頼する
海外の消費者へ代行販売を行う業者に自社商品を買い取ってもらい、間接的に商品を販売することもできます。
商品が購入された場合は、代行販売業者が接客を行い、商品の配送まで対応します。そのため、越境ECを展開する事業者は顧客とのコミュニケーションを図ることが難しく、顧客情報も得にくいのがデメリットです。
自社越境ECサイトを構築したり、海外ECモールへ出店したりする手間とコストが省けるメリットがありますが、手数料や配送料などは他の方法と比べて割高になります。
4. 初心者でもわかる越境ECの始め方
初めて越境ECを展開する事業主に向けて、以下の事前準備から出店までの流れを分かりやすく解説します。
①関税・発送のルールを把握する
②販売層の分析とターゲット設定
③商品・商材を準備する
④商品・商材の価格を設定する
⑤越境ECサイトの出店方法の決定
4-1. 関税・発送のルールを把握する
越境ECを展開するにあたって、商品の輸出入に課せられる関税や、国ごとの発送のルールをしっかり把握しておくことが重要です。
関税は、輸入品の価格に対して一定の割合が加算されたものであり、輸出入の国によって異なります。輸出国と輸入国の関税率を事前に確認し、必要に応じて税関手続きを行いましょう。
販売する商品の発送についても、国によってルールが異なります。例えば、配送時間や送料、配送業者の選択肢などが異なることがあります。発送に関するルールを事前に確認しておくことで、顧客にとってスムーズな配送方法を提供できます。
また、地域によって輸出入規制が設けられているため、品目や数量制限、許可申請などの要件を確認し、自社商品が輸出入規制に該当しないかどうかを必ず確認しましょう。
越境ECビジネスを問題なく始められるよう、展開国の法律や税制に基づき、登録や申請、税金の納付、輸入許可申請などの手続きを全て行いましょう。
4-2. 購買層の分析とターゲットの設定
商品・商材を準備する前に、展開する国の市場や消費者のニーズ、嗜好、競合環境などを考慮し、ターゲットを設定します。
地域の市場調査と消費者分析に基づき、どの商品・商材をどのような属性のターゲットに売りたいのかを明確化した上で、在庫を調達しましょう。
4-3. 商品・商材を準備する
商品・商材の在庫調達は、国内メーカーや卸売業者、海外のサプライヤーなどさまざまな調達方法がありますが、調達先の信頼性や品質を確認することが大切です。
在庫過剰や欠品を回避するには、売れ行きの予測や生産・調達のスケジュール管理、在庫数の管理などが必要となります。
4-4. 商品・商材の価格を設定する
価格設定は、利益率や販売戦略を含めた総合的な判断が求められます。
展開する国の市場価格や競合環境、輸送コストや関税などを考慮して、商品・商材の適切な価格を設定しましょう。
4-5. 越境ECサイトの出店方法の決定
越境ECサイトの出店方法は、「自社型EC」と「モール型EC」の何れかを選びます。
自社型ECは、ECプラットフォームなどで自社の越境ECサイトを構築するか、もしくは既存のECサイトを越境対応にし、自社で販売・運営を行う方法です。
モール型ECは、越境ECに対応した国内のモールや海外のECモールに自店舗を出店して販売する方法です。
できるだけ手間やコストをかけずに海外の消費者に商品を販売したい場合、既存のECサイトを越境対応にするか、越境ECに対応した国内のECモールでの出店を検討しましょう。
5. 自社型ECで越境対応するメリット・デメリット
自社型ECとモール型ECは、商品の販売経路が異なる他、サイトのカスタマイズ性やマーケティング戦略に関しても大きな違いがあります。
自社型ECで越境対応するメリット・デメリットを詳しくご紹介します。
メリット
自社型ECでは、自社のビジネスに最適な機能やデザインにカスタマイズできるため、自由度が高いというメリットがあります。
越境ECサイトでも同様に、海外の消費者向けに最適なマーケティング手法を採用でき、さらに配送方法や支払い方法などを自社の判断で変更できます。
例えば、プロモーションのタイミングや配送のスピード、クーポンの配布などを自社の販売戦略に合わせて実行でき、SNSやブログを活用した幅広いマーケティングにも対応可能です。
また、グローバル展開を視野に入れている場合は、新しい地域の言語や通貨、配送方法などを拡張できることも大きなメリットです。
デメリット
自社の越境ECサイトを構築する場合、輸出入に関する手続きや現地の言語・配送方法・支払い方法の対応などに大きな手間と負担がかかります。
また、現地の消費者とのコミュニケーションが発生するため、あらゆる問い合わせの種類にトラブルなく対応できる体制を整えなければなりません。
商品の品質や納期に関するクレーム対応があった場合、適切な対応ができなければブランド価値や商品の評判が落ちてしまいます。
EC運営者の知識不足によって法律・規制に違反し、罰則が課せられる可能性もあるため、越境対応をサポートしているECサイト構築代行会社に依頼することも視野に入れましょう。
6. モール型ECで越境対応するメリット・デメリット
越境対応したモール型ECに出店する場合、自社型ECとは異なるさまざまなメリット・デメリットがあります。
メリット
既に越境対応しているECモールに出店する場合、自社のECサイト構築や越境対応が必要ないため、手間とコストを大幅に削減できます。
また、越境ECモールには、既に海外のユーザーが多数存在するため、自社型ECで販売している商品とは異なるターゲット層にアプローチすることが可能です。
例えば、ECモール内での商品検索や類似商品の表示機能などにより、海外の顕在顧客の目に留まり、購入に繋がることも考えられます。
ECモール内で実施される期間限定セールやキャンペーンなどを活用し、売上拡大に繋げることもできます。
デメリット
越境対応したECモールでは、通常のECモールや自社のECサイトでの販売よりも各種手数料が高くなる場合があります。
なぜなら、越境対応のための手続きや翻訳、通関手続きなどの費用が必要になるためです。
海外の新規顧客獲得を目的としている場合、基本的に顧客情報はECモールが管理するため、自社で顧客データを取得できないケースが多いです。そのため、自社型ECよりもマーケティング戦略の幅が狭まります。
また、多数の店舗が出店するECモールでは、自社ブランドの世界観を体現することが難しく、競合他社との価格競争に巻き込まれることも懸念されます。
既存のECモールに出店するため、越境ECビジネスを始めるハードルが低い反面、自社でコントロールできない部分が多いと理解しておきましょう。
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