女子高生とパンと、若き日への思い

電車で隣の席にすわっていた女子高生がおもむろにパンをかじりはじめた。チョコレートの甘ったるい匂いがちょっと不快で、咎める視線をおくろうと隣をみやったけれど、一点を見つめたまま一心不乱に食べていて、こちらに気づく隙もない。その様がかなり狂気じみていて、ちょっと見とれてしまいそうになるほどだった。

なんだか「そんなにおなかが減ってるなら、どうぞ、存分にお食べなさい」と、母のような気持ちになり、ケータイをぽつぽついじっていると、右肩に重みが。おなか一杯になって満足したのだろう。見ると、口のまわりにパンのカスをつけたまま、うつらうつらしている。

電車、あったかいもんね。おなかいっぱいになったら、眠くなるよね。と、これまた母のような思いで、重みに耐え続けたのでした。

若いって、ほんとうに素晴らしいなと思う。目の前の欲に正直な感じも、無防備すぎてあぶなっかしい感じも、今となっては、ただただまぶしい。

手放してからしか、それが刹那な瞬間であったことに気づけないからこそ、大人は若き日にいろいろな思いを馳せてしまうのかもしれない。

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