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相生の松となりにけり

花は咲くかしら
朝露の夜影に
蜘蛛の糸 禿げかけた月のはらはらと

涙がとけだし海になってしまうのは
誰かの熱さが目に伝ったからだ

誰かの心を知ってしまったからだ

優しいことが哀しくなるなんて
思ったこともなかったんだよ
だだっ広い草原に泣きそうになるのは
誰も傷つけない景色だからか

すみれ色の瞳が映すものが
たとえば焼きたての星型クッキーだとか
誰もいない懐かしい海辺の通りを
風が木漏れ日のように思い出させる

寂しい思いをしてきた人ほど
四つ葉を探すのもへたね
ブルーベリーをひとつ真ん中に
チーズタルトを照らす月の光は
ちっとも甘やかなんかじゃない

目が合っても笑わないキミは
あたしにしか分からないほど小さく
瞳を大きくして見つめてくるの
知らないんだって そんなことしても

嫌いとも好きとも言えない私たちは

寂しいんだねとあなたが混ぜる
ミルクが珈琲を握りしめていく

くぐもって鳴る空の声
いるかの透けた置き物がチリと澄む

瞳の奥に濡れたせっけんの匂い
窓辺の陽だまりに微睡みながら
眠れる今日を愛していた

秋の日長に思うことは
君の健やかそれだけです
何もいらないなら口付けをしてよ

ひと匙啜るにんじんのスープに
泣いてしまうのは性なのか
がんもどきを醤油にひたして頬張る
斜め後ろから恋していた




心を蔑ろにすることに
少しでも救われていた
溢れる温度がまだ暖かいことが
あたしの手に毛布を抱き寄せさせる

はやく人じゃなくなりたかったんだよ
忘れられぬまま凍りたかったんだ
痛みを感じないくらいにさくりと
それでもやさしくいたくて

君のいない曲がり角 鳴り続けるやかん
寂しいばかりで出来上がった景色を
憎めないことに気づいた途端
溢れ出したのは愛のせいじゃない
心の臓がはまるような穴ね

木苺のジャム
焦げ付いた今日の
まっさらな朝にジャムを塗って
指さし遥かを目指す
どこにもない明日を

やさしさだとか名付けられた
温度から逃げたかったから
レインツリーから星を外した
水色の洗濯ばさみが割れた夜の海を
泳いでは空を見るよ
理不尽なほど光ってんな

逃げたかったんだね同じくらい
逃げたくなかったんだね
泣き止んで 明日は綺麗じゃないよ
それでもとは僕は言わないから

焦げ付いた昨日は
まっさらな願いだ 星を振って
逃げないでほしい まっすぐ見て
あなたは大丈夫

大好きって言葉がとりわけ儚いから
ずっと君に言ってあげる
白砂の未来に旗を差したなら
どこでも生きていけるよ

錆び付いた明日も
グリーンに輝く箒を出して
信じてほしい 金のリンゴが
本当はどこにもないとしても

風に飛ばされながら生きてゆけばいい
ブリキのかかとも悪かないよ
好きなもの十個言ってみなよ
ないならプリン奢るからさ

木苺のジャム
焦げ付いた今日の
まっさらな朝にジャムを塗って
目指す星なんてそのうち出来るさ
なんもないほうが君は綺麗さ

部屋の明かりが星に見えるくらい
見紛う世界を愛していた
しぐれゆく今日に黒波が滲む
だれとも知らぬ後ろ姿を追ってゆく

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