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『ヒストリーダイバー~電脳探索室』企画書

キャッチコピー:

 あなたの脳深海馬に眠る「先祖の記憶超長期記憶」から歴史の謎を解き明かせ!!

あらすじ:

 VRと脳科学の発展は人々に新たな研究領域をもたらした。脳内に蓄積された先祖の記憶(超長期記憶)を抽出・解析することが合法化された未来の日本。「深海馬しんかいば」に眠る先祖の記憶をデータ化して結合し、歴史上の出来事や風景を3D立体映像空間に復元する新しい歴史研究手法「ヒストリーダイブ電脳探索」が半官半民の政府機関「電脳探索室」において行われていた。
 新人「ヒストリーダイバー電脳探索者」の「蒔 大河まき たいが」は、歴史研究者の卵として探索チームの仲間とともに電脳空間に潜り、精緻な歴史映像の解析・研究に挑んでいく。歴史の海に眠る真実の先に何が待ち受けているかを知らずに…。

第1話のストーリー:

 早朝、初出勤前の慌ただしさの中、大河は姉の「十時 冬ととき ふゆ」から当選した「3泊4日トリップムービー体験券」を見せびらかされる。体験施設が大河の職場「電脳探索室」の関連施設であることをパンフレットで知った冬は、弟の仕事を言い間違える。ヒステリー…?「ヒストリーダイバー」だよ!と、姉に自分の仕事を自信をもって訂正する大河。

 スーツ姿で官公庁街を走る大河は、冬との会話の続きを思い出す。体験中の姪の「芽吹めぶき」の世話の心配をする大河。冬は体験施設が託児所・保育所完備であることを笑顔のVサインで告げ大河を呆れさせる。ムービーの内容を冬に尋ねられるも、脳内に眠る先祖の超長期記憶をデータ化して抽出する間、解析対象者にトリップムービーが提供される事実を大河は規則で冬に教えることができない。育児ストレス解消になると喜ぶ姉を横目に大河は家を出る。電脳探索室本部ビルにたどり着いた大河は、そびえ立つ高層ビルを見上げる。内心、城郭や寺社仏閣のような古典建築物を期待していた大河は質素な外観に失望するも、気を取り直し命綱無しにビルの外壁をよじ登っていく。外壁の縁や窪みに手をかけ軽々と昇る大河の姿に悲鳴をあげる通行人。配属先フロアにたどり着いた大河は白衣姿で眉をつり上げる同僚の「中宮寺 飛鳥ちゅうぐうじ あすか」に非常識さを説教される。飛鳥の美しさに見とれる大河は、胸元を見られたと勘違いした飛鳥からビンタされてしまう。角突き合わせる大河と飛鳥の脇を大河の直属の上司でダイバー班チーフの「日置 景寿ひおき かげひさ」が通り過ぎていく。景寿は2人の仲の良さに関心しつつも、大河にビルよじ登りに対する始末書の提出を告げる。落ち込む大河は、ふと体験施設にいるであろう冬に思いをはせる。

 トリップムービー体験施設でスタッフから説明を受ける冬。解析機に横たわりゴーグルをつけて眠りに入った冬が目を開くと燃え盛る炎の中逃げ惑う民衆の姿が眼前に広がる。時代劇の世界だと興奮する冬に血に飢えた鎧武者が太刀を片手に襲い掛かる。

 大河が景寿からチームメンバーを紹介される最中、体験施設で解析対象者の精神が抽出中の先祖の超長期記憶データとともに3D立体映像空間内に紛れ込む「流入現象」が発生したことを告げる警告文が大型モニターに映し出される。大河は冬がトラブルに巻き込まれたのではないかと不安に思う。


第2話以降のストーリー:

 大型モニターに映し出された解析対象者は、冬であった。大河は「流入現象」によって、冬の精神が抽出された先祖の超長期記憶データとともに何らかの理由で3D立体映像空間に紛れ込んでしまった事実をダイブ班チーフの景寿から説明される。通常の「ヒストリーダイブ」と違い、過去の事例から意図せず電脳空間に流入した精神は、音楽のメドレーのように大勢の先祖たちの記憶に乗り移る傾向があり、サルベージ救出が非常に困難なのだという。

 目の前が真っ暗になる大河。10年前、両親亡き後の大河の面倒を見てきたのは冬であった。中退した自分の夢を託すように大学進学の後押しもしてくれた大切な姉を幼い姪の芽吹のためにも助け出したい。でも、新人の自分に何ができるのか。今朝、自分が「ヒストリーダイバー」だと姉に伝えたことを思い出した大河は、今まで助けてくれた姉を今度は自分が救出する番なのだということを悟る。大河は冬救出への参加を志願するも、近親者の記憶・精神に干渉する危険性を生体モニタリング班の飛鳥から指摘される。出番はないと思われたが、同じ先祖を持つ大河の存在が冬救出の糸口になるかもしれないとの直感から、景寿は周囲の不安をよそに大河の参加を許可する。景寿・先輩ダイバーの「輝夜 永遠かぐや とわ」・大河の3人は、潜水服を思わせるウェットスーツに身を包んだのち、生体モニタリングデバイスを搭載したチェアに腰を下ろす。不安と期待から大河の脈拍は高まる。大河の心拍の変化に気づいた飛鳥は、大河に顔を近づけ両手で大河の頬を包み込む。大河の中に別の誰かを重ねるように悲しげな瞳で大河を見つめる飛鳥は、お姉さんを助けてあげてと、耳元に囁く。氷のように冷たい飛鳥の手は大河の不安を溶かすように心を落ち着かせていく。大河たちの頭部にヘッドデバイスが装着される。飛鳥の眼差しの奥に見ていたものについて考える間ももなく大河の意識はまどろむ。

 目覚めた大河が見たものは、時代劇のセットなど比較にならないほど精緻に復元された歴史映像世界であった。任務であることを忘れる大河であったが、自分の姿形が知らない少年の姿形であることに気づき、絶叫する。

 一方、「流入現象」に遭遇した冬の精神は混乱の際にあった。ヒット曲がメドレーで演奏されるように冬の精神に流れ込んだ大勢の先祖たちの記憶は、五感を伴って記憶の追体験を冬にもたらしていた。


 戦に巻き込まれ家族・生命を無惨に奪われる記憶、田畑を耕し家族とのささやかな暮らしを喜ぶ記憶、武士として死屍累々の中で家族を想い人を殺める記憶。いつ終わるともしれない先祖たちの記憶の再生と追体験の波に、冬の自我は翻弄される。冬は、走馬灯のように亡き父母、愛する夫と幼い娘の芽吹、弟の大河を思い浮べる。

 一方、冬救出のため「ヒストリーダイブ」した大河は、本来の自分の姿と違う少年の姿であることに戸惑っていた。一緒にダイブしたはずのダイブ班チーフの景寿や永遠の姿もない。動揺する大河の心に現実世界で大河たちの生体モニタリングする飛鳥の声が響く。飛鳥は大河に、少年は大河のご先祖様の一人であること、大河だけでなく冬も先祖の姿を借りて電脳空間に立っていること、景寿や永遠も大河と別の地域でそれぞれの先祖の一人に姿を変えて救出に向けて活動を開始していることを伝える。また、全国の「電脳探索室」所属のダイバー班の面々も、冬救出のため続々と電脳空間に潜り始めていることを大河に教える。大河はまだ見ぬ同僚たちの協力に心強さを感じつつも、復元された広大な3D立体映像空間を見渡し、手がかりなしに先祖の一人に姿を変えた冬を発見する方法が本当にあるのかと心が揺らぐ。飛鳥は、解析対象者として抽出した冬の先祖たちのデータから、大河と冬の先祖の多くはある一定の地域に集中していること、「流入現象」で電脳空間に取り込まれた冬の精神は、景寿が説明したように一定の間隔で先祖の記憶を乗り移りつつ移動しているが、冬が乗り移った先祖に接触することができれば、冬を救出できるはずだと大河を勇気づける。冷静さを取り戻した大河は、飛鳥から指示されたもっとも近くにいる先祖の所在に向けて走り出す。

 大河は、堀や土塁、築地塀等の障害物を現実世界で本部ビルをよじ登ってきたように類いまれな身体能力を駆使して軽々と乗り越えていく。飛鳥の背後でデバイス操作を担当する白人「デイブ・ニューエラ」が、パルクール、フリーランニングねと、うれしそうに歓声をあげる。現実世界と違い、電脳空間では肉体が疲労することがない。自らの心に活を入れ、大河は、冬救出に向けてひた走る。


 「流入現象」により電脳空間に迷い込んだ冬の精神反応を大型モニターで見つめる生体モニタリング班の飛鳥は唇を噛みしめている。発生からすでに12時間。流れ込む先祖の記憶の連続再生に消耗した冬の精神反応は弱まりつつあった。大河たち「タイムダイバー」は冬の精神を捕捉できずにいた。

 大河たちの精神的疲労も限界に達しつつあった。普段陽気なデイブやチームの面々も疲労の色を隠せない。電脳空間から大河が飛鳥に向けて心の中でつぶやく。もし、冬の救出失敗したらどうなるのかと。飛鳥は心落ち着かせたのち、大河に語りかける。精神反応の喪失と同時に冬の精神は電脳空間の中で消失し、肉体も植物状態に陥ってしまうことを。冬を待つ最悪の結末に愕然とした大河は地に拳を叩きつけ、姉を救出できない自分の無力を悔やむ。物心ついた頃からの冬の姿が大河の心を流れていく。大河は目を閉じ、先祖の肉体を借りてさまよっている冬の精神に訴えるように姉の名を叫ぶ。自我喪失の寸前にあった冬の精神に、自分の名前を呼ぶ大河の叫びが届く。呼びかけに応えるように自分の状況を大河に伝える冬。大河は自分たち先祖の記憶のメドレーなら、今自分が姿形を借りている先祖の肉体にたどり着けるはずだと冬を勇気づける。大河の励ましに落ち着きを取り戻した冬は、大河の存在を心の中で強く念じる。

 次の瞬間、冬の精神は大河が姿形を借りている先祖の少年の肉体に転移する。先祖の肉体に大河と冬の精神が同居する中、少年の口から2人の言葉が同時に発せられる。驚くべき光景に飛鳥たちは息を呑む。現実世界に戻れると喜ぶ冬と、姉と肉体を共有する状況に戸惑う大河に、飛鳥は帰還の方法を教える。冬は面識のない飛鳥に感謝を伝えたのち、心の中で今後先祖の記憶と向き合うことになる大河を激励し、現実世界に帰還していく。大河は自分こそ「ヒストリーダイブ」の意義を学ばせてもらったと冬に感謝する。

 目を覚ました冬の傍らにはシッターに抱きかかえられた娘の芽吹の姿があった。現実世界の実感とともに、先程までの出来事は夢でも幻でもなく、自分の大勢の先祖たちが実際体験した出来事なのだと強く確信する冬。時を同じくして現実世界に帰還する大河たち。精神と肉体が長時間乖離したあとの強烈な疲労を覚える大河に、チーフの景寿が手を差し出す。「電脳探索室にようこそ」と、名実ともにチームの一員となった大河を歓迎するのだった。笑顔の大河を横目にダイブ班の先輩である永遠はどこか面白くない表情。一方、飛鳥は、同じ先祖を持つ特性を利用して「流入現象」から冬を救出した科学的事例への興味から、破天荒な大河に関心を持ち始める。

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