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漫画原作:『Eスポ!!~Play Online Battlegrounds』第1話

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『Eスポ!!~Play Online Battlegrounds』第1話シナリオ(※マンガ原作形式)

凡例:

文章間に挿入された▼記号は、そこでマンガの該当ページが開始することを示す。

文章間に挿入された●記号は、そこでマンガのコマが変わることを示す。

文章間に挿入された2つの●記号は、そこでマンガのページが切り替わることを示す。

文章間に挿入された▲記号は、そこでマンガの該当ページが終了することを示す。

基本的にそのコマに入る、「 」でくくられた、擬音・字幕・独白・セリフ・解説を先に記載している。
次いで、そのコマに入る背景や人物の情報が記載されている。
この2つと文章間に挿入された●記号でマンガの1コマに入る情報を区別している。

人名の後の「 」の中には、その人物のセリフが入る。

人名独白の後の「 」の中には、その人物の心の中のつぶやきが入る。

字幕の後の「 」の中には、5W1Hを説明する文が入る。

擬音の後の「 」の中には、そのコマに必要な効果音が入る。

解説の後の「 」の中には、作者の事項に対する解説文が入る。

「 」の中の( )はセリフのルビを示す。

「 」の中の" "はセリフの強調を示す。

( )は、( )の時点で、場面転換・時間経過・画面暗転が発生し、前のコマと次のコマとの間でストーリーが転換することを示す。

セリフなどの後の、背景や人物情報などを記載する文章の中の『 』や「 」は、背景や事物に、カッコ中の文章が記載されることを示す。 

※は、該当コマを作画化する上での注釈や作者の意図を示す。


1ページ


『Eスポ!!~Play Online Battlegrounds』

ラウンド1(第1話)「ファースト コンタクト」

扉絵イメージ:
物語の主要人物4人のイラスト。
4人それぞれが好きなジャンルのゲームにちなんだ格好をしている。
ドラクエの勇者のような姿で左手に盾を、右手に剣を構えるRPG好きの草薙武琉。
戦国時代の当世具足を着て、太刀を構える歴史ゲーム好きの毛勝猛。
迷彩服を着て、スナイパーライフルで照準をつけるFPSアクション好きの高天原輝子。
ヘルメットとレーシングスーツを着て、ハンドルを操作するレースゲーム好きの立花桜。

2―3ページ


字幕「草薙 武琉(くさなぎ たける)16歳 都立江戸川東高校2年」 
夜の遅い時間帯。東京都江戸川区にある主人公草薙武琉の住む古いアパートの居間。
蛍光灯をつけない暗い部屋で、一人かじりつくように20型テレビの画面を視る武琉の上半身のアップ。テレビ画面の光によって武琉の顔の輪郭が暗闇に浮かび上がっている。
食べ終えたアイスの木の棒を口にくわえながら、ぼんやりと画面を眺める武琉。
武流は上下揃いの紺色のジャージを着ており、上着のファスナーは、首の辺りまで閉じられている。

字幕「2022年 アメリカ ラスベガス」
擬音「ワァ~」
実況者「さあ 『BLADE OF WARRIORS』ワールドチャンピオンシップ 2021~2022シーズンもいよいよ大詰め!」
Eスポーツの大規模な大会が開催されている室内会場。
大勢の観客が詰めかけている会場内は、演劇やマジックの舞台のように華やかな光の演出がなされている。
会場中央の天井には、「プレイ画面」・「対戦する2人のプレイヤー」・「トーナメント表」「大会名のロゴ」をそれぞれ映し出した4台の大型モニターが設置されている。
※実況者はコマの中に描かれず、セリフだけでの登場。
※Eスポーツに馴染みのない読者のために、Eスポーツをもっともわかりやすく体現している競技大会のシーンを物語の冒頭に配置している。

実況者「全世界 1億人もの視聴者が 固唾をのんで決戦の行方を見守っております!」
テレビやパソコン、街頭のオーロラビジョンなどに映された決勝戦を見ている視聴者。


実況者「両者とも1勝1敗で迎えた3戦目」
対戦する2人のプレイヤーを映し出したモニターのアップ。
決勝戦を意味する「FINAL」の文字とともに、決勝戦の現在までのスコア(1-1)、対戦するプレイヤー2人の顔写真、プレイヤー名(本名でなくユーザー名)、国籍が表示されている。
対戦者で騎士を操作するのは、アメリカ国籍で白人男性の「Crysith66」。
武士を操作するのは、日本国籍で日本女性の「FrozenBeauty」。
※モニターに表示されるプレイヤー2人の顔写真は、顔の部分をわざとぼかして読者にこの時点で見せないようにする。のちに、「FrozenBeauty」こと、高天原輝子をしっかりとした形で登場させたいため。

実況者「運命の女神が微笑むのは 果たして どちらだ?!」
プレイ画面を映し出したモニターをアップ。
モンゴルの大草原に築かれたすり鉢状の地形の底部に築かれた闘技場。すり鉢状の傾斜部分は段上になっていて、多くの観客(13世紀の元朝時代の支配層であるモンゴル人・色目人・漢人)が底部で戦う2人の戦士に歓声を送っている。
※闘技場の雰囲気は、古代ローマのグラディエーターが戦うコロッセオをイメージ。

風吹きすさぶ大草原で、2人の戦士が、白い息を吐きながらお互いの出方を伺っている。
画面奥、西洋のいかつい金属製の甲冑姿の騎士が両手剣を担ぐような格好で構えている。
画面手前、「八双(はっそう)の構え」で日本刀を握る当世具足の武士の後姿。
両者とも、フルフェイスの兜と、面頬(めんぼお)によって表情が隠されている。意志を持った妖しく光る瞳だけが隙間からのぞく。
騎士の体力は半分ほどの残量。武士の体力はあと1撃くらったら敗北が確定する残量。

擬音「ザッ」
騎士が右足を踏み出す。
闘技場の地面は、コロッセオのように砂地になっているのでなく、足首が隠れるかどうかの草地になっている。

4―5ページ


実況者「先に仕掛けたのは "Crysith66"選手!!」
両手で握った両手剣を武士の頭上めがけて上段から勢いよく振り降ろす騎士。

騎士の両手剣を受け止めるため、日本刀を顔の前で構える武士のバストアップ。

擬音「ピシッ」
ぶつかり合う騎士の両手剣と武士の日本刀の刃のアップ。日本刀にひびが入る。

擬音「カッ」
実況者「ああっと!! ここに来てまさかの"ウェポンブレイク"!!」
武士「!」
両手剣を受けた姿勢の武士。折れた日本刀を両手で構えたままの格好。


擬音「ニヤリ」
騎士独白「殺ったぁ(とった)!」
騎士のバストアップ。左半分がフルフェイスの兜の騎士の顔で、右半分が騎士を操作する"Crysith66"本人の顔。眼鏡をかけたブロンドヘアの精悍な顔立ちの白人男性。

擬音「カチャカチャ」
「XBOX360コントローラー」風デバイスの左スティックを左手親指で上に入れ、右手親指で4つあるメインボタンのうち、Xボタンを操作する両手のアップ。

実況者「これで決まりかぁ~」
トドメとばかりに両手剣を振りかぶる騎士。

擬音「バッ」
武士独白「!」
画面奥、当世具足の兜と面頬の隙間からのぞかせる瞳を輝かせる武士。
右手に握っていた折れた日本刀をその場に投げ捨てる。
画面手前、両手剣を振り降ろした騎士。

擬音「カチャカチャ」
擬音「カチカチ」
左手でキーボードの「WASD」キーをタイプしながら、右手のゲーミングマウスの側面のショートカットキーと左クリックボタンをクリックする両手のアップ。

6―7ページ


擬音「!!」
騎士の両手剣の刃を両手で白羽どりにした武士の手のアップ。

実況者「白羽取り! 白羽取りだぁ~!」
騎士が振り降ろした両手剣を、片膝をついた姿勢で白羽取りする武士。

擬音「ドカッ」
武士「てやぁ~」
武士は白羽取りした両手を右側に一気にひねりながら、勢いよく左足で騎士の腹部を足蹴にする。

騎士「ぐわっ!」
腹部を足蹴にされて吹き飛ばされる騎士。
闘技場の草地の地面が削られて、ちぎれた草が宙を舞う。

擬音「ドサッ」
吹き飛ばされて仰向けに草地の地面に身体を投げ出すように倒れる騎士。
足蹴にされた甲冑の腹部は歪み、ちぎれた草や砂がついて汚れてしまっている。


擬音「!」
画面奥、逆光で姿がはっきり見えない武士のシルエット。
上段の構えで騎士から奪った両手剣を振りかぶっている。
画面手前、仰向けに草地の地面に横たわったままの騎士。
先程と違い両肘を地面について起き上がる姿勢をしている。

擬音「ビュオッ」
武士「覚悟!!」
両手剣を袈裟懸けに眼下の騎士目掛けて振り降ろす武士の上半身アップ。

擬音「ワァ~」
実況者「決まった~!」
実況者「白羽取りから "FrozenBeauty"選手が見事な逆転優勝~!!」
会場中央の2台の大型モニターのアップ。
「勝負あり」の文字とともに、右手で高々と剣をかかげ、左の小脇に倒した騎士の兜を抱えた武士の姿が闘技場の中央に立つ姿が映し出された画面。
『BLADE OF WARRIORS』ワールドチャンピオンシップ 2021~2022シーズン WINNER "Frozen Beauty"の文字が映し出された画面。

8―9ページ


鮮明だった映像が、モニターに映し出された不鮮明な映像に変わる。
※これまでの流れが実はニュースの映像だったことを読者に知らせるため。場面転換なしにニュースの画面に切り替わる。

女性キャスター「"FrozenBeauty" 選手 昨年末のアクションゲーム部門の公式世界大会で5位に入賞した実力を遺憾なく発揮していました」
左側にイスに座った姿勢でテーブルの上の原稿に手を添えながらアナウンスする興奮した面持ちのスーツ姿の女性キャスター。
右側のニュース映像を映すモニターには、優勝トロフィーをかかげている、「剣客商売」の佐々木美冬のように男装の武士のような羽織袴着のコスチュームで美しく髪をポニーテールに結い上げた姿の"FrozenBeauty"こと、高天原輝子のバストアップ映像が映し出されている。
モニター下には、番組名『ウィークリーEスポーツ!!』のロゴが見える。

女性キャスター「"FrozenBeauty" 選手の今後の活躍から目が離せそうもありません」
笑顔でカメラに語り掛ける女性キャスターのバストアップ。

女性キャスター「さて いよいよ明日発売となる国民的RPGについてです…」
左側にイスに座った姿勢でテーブルの上の原稿に手を添えながらアナウンスする女性キャスター。
右側のニュース映像を映すモニターには、ゲームのパッケージ、ゲーム画面、タイトルロゴをコラージュしたイメージが映し出されている。
モニター画面下側のテロップには、「国民的RPG最新作明日発売」と書かれている。


擬音「ガシッ」
武琉「やっと きた!!」
テレビの両端を両手で鷲掴みにして、食い入るように明日発売の最新作の紹介ニュースを視る武琉。
※武琉は、決勝戦のハイライト映像を視聴したものの、明日発売のRPGのことで頭がいっぱいで、この時点で大会の結果や優勝した輝子に全く関心を抱いていない。

擬音「ゴクリ」
思わずつばを飲み込む武琉の首筋のアップ。

目を輝かせてテレビ画面を見つめる武琉の顔のアップ。

(画面暗転・時間経過・場面転換)

字幕「翌日」
擬音「チュン チュン」
電線の上で鳴く2羽のスズメのアップ。

10―11ページ


擬音「カッカツ」
地下鉄から地上に出る階段を力強く踏み歩く薄汚れたスポーツシューズを履いた草薙武琉と、新品のスポーツシューズを履いた蒲生勝猛の足のアップ。
武琉と勝猛の家の経済状況の違いを表現している。

階段を上る2人の後ろ姿。武琉が先を進み、勝猛が少し後ろに従っている。2人の目指す先には、地下鉄の地上出入口の光がのぞいている。
武琉が先を進んでいることで、2人の友人関係において、どちらが主導権を持っているかを表現している。

武琉独白「わぁ~」
はじめて東京に来た田舎の若者のように驚きと感動に溢れた表情の武琉のバストアップ。
武琉は、デニム生地の上着とTシャツ(八岐大蛇を退治したスサノオが剣を天高くかかげる絵)を着て、洗いざらしの黒っぽいジーンズと使い古されたスニーカーを履いている。
レンズ面に傷のついた亡き父の形見の古いソーラー電波時計を左腕に巻いている。

字幕「東京 電気街」
天気は快晴。東京秋葉原のような電気街。
大手電気店の大型ビルや高層建築の近代ビル、飲食店やカラオケ店など多くのテナントが入居する雑居ビルが軒を連ねている。
読者への伏線として、大型ビジョンには、「本日 Eスポーツガーデンにて エキシビジョンマッチ開催!!」の宣伝映像が流れている。
※物語上、この電気街は秋葉原でないが、秋葉原の電気街をイメージしている。現実の秋葉原との違いは、この物語の開始する数年前、朝鮮半島を舞台に発生した戦争の影響で、大都市の繁華街に、東京駅八重洲口地下街や仙台駅の地下自由連絡通路のような地下通路・地下街が避難シェルターを兼ねて多数建設されたことである。

字幕「毛 勝猛(もう かつたけ)16歳 都立江戸川東高校2年」
勝猛「武琉くん・・・」
背中に背負ったリュックサックのベルト(腕に通すリュックサックの2本のベルト部分)を両手で持ちながら、伏せ目がちの自身なさそうな表情で武琉に話しかける勝猛。
勝猛は、パーカー(石田三成の家紋「大一大万大吉」マーク)を着て、緩めの薄い藍色のジーンズとスポーツメーカーのブランドシューズを履いている。オタクっぽい黒ぶちの大きめのメガネを身に着けている。


おやっ?という表情の武琉のバストアップ。

擬音「キョロキョロ」
勝猛「そんなにキョロキョロしていると…」
勝猛「"おのぼりさん"みたいで ぼく 恥ずかしいよお…」
はにかみ顔で赤面する勝猛。
顔を左右に振り、うれしそうな表情で周囲を見渡す武琉。

擬音「ニハハ」
武琉「勝猛(かっつ) おれたち れっきとした東京育ち(えどっこ)なんだ!」
武琉「東京育ちが"おのぼり"と間違えられるわけないじゃないか!」
両手を腰に当てて、勝猛の言葉を全く意に介することなく笑う武琉。

勝猛独白「武琉くん…」
勝猛独白「そっ そうじゃないよぉ…」
武琉の能天気ぶりに、俯き加減でションボリする勝猛。

武琉「とにかく 新作 GETしに行こうぜ!」
勝猛「うん!!」
右手をあげて新作ゲームを買いに電気店に行こうと決意を見せる笑顔の武琉。
武琉の少し後ろで、あとについていこうとする勝猛。
2人とも今日発売した新作を手に取りたくてウズウズしている。
歩道沿い、遠くに見える電気店の壁面に設置された電子看板に、「都市部で進まぬ防災地下通路・シェルター設置」というニュースの見出しが表示されている。
※第1話後半に、地下通路を通って武琉と輝子が「東京Eスポーツガーデン」に向かうシーンの伏線をそれとなく読者に掲示する。
また、物語の架空の設定として、物語開始3年前に朝鮮半島で戦争があったこと、戦争で被害を受けた経験をもとに都市部で防災地下通路・シェルター設置の動きが社会で見られることになった状況をそれとなく読者に提示する。

(場面転換・時間経過)

12―13ページ


秋葉原のヨドバシカメラのような大型電気店の外観。
「春の新生活応援セール 開催中」
「国民的RPG最新作 『LAST HOPE13』 発売!!」と書かれた縦長の垂れ幕が外壁に掲げられている。

擬音「ガヤガヤ」
電気店のゲームコーナーのレジ付近に設けられた特設スペース。
新作ゲームが目につきやすいよう、パッケージが平台に山積みになって展示されている。
スペースには、のぼり、タペストリー、パッケージ画像・タイトル・ゲーム画像が書かれた販促POPが設置されて人目につくように工夫されている。

武琉「わぁ これこれ!!」
興奮した表情で新作ゲームソフトのパッケージを手に取る武琉と嬉しそうな表情の勝猛のバストアップ。

擬音「!!」
「新作 税込6,600円」という値札の貼りつけされたゲームソフトのパッケージの表面とパッケージを握る武琉の右手のアップ。

ソフトの値段を見て、驚き怯んだ表情をする武琉。


美古都「ウチはお金ないんだから 無駄づかいするんじゃないよ!!」
エプロン姿で武琉を指さして、無駄遣いしないように注意する母・美古都の姿が回想シーンとして武琉の脳裏に浮かぶ。
美古都は、ブラウスの上にエプロンを着て、濃い黒色のジーンズと安っぽい単色のスリッパを履いている。左手の薬指には夫が亡くなって数年経つにも関わらず、結婚指輪をまだつけている。 
※回想シーンなので、コマの外枠は黒く塗りつぶされている。

武琉独白「あっ! これ半額だ! 明日の昼飯代(めしだい) 浮いたなぁ」
武琉独白「これで少しは小遣いの足しになるな」
武琉は、スーパーで買い物カゴを持ちながら、半額セールで安くなった食品を見つけ、嬉しそうな表情の自分の姿を脳裏に思い浮かべる。
※武琉の家が貧乏だということ、武琉が少しでもお金を無駄遣いしないように、敏感な守銭奴っぽい性格をここで読者に提示する。

擬音「ギュッ」
武琉「…」
何かを我慢するように、下唇を噛みながら浮かない表情をする武琉。

擬音「ググ」 
固く握りしめた武琉の左てのアップ。腕には亡き父の形見である文字盤のガラスにキズがついたままの時計が巻かれている。

擬音「!」
何かに気づいた表情の武琉。

14―15ページ


新作ソフトが並べられた平台の脇に「すべてはここから始まった」と書かれたPOPとともに過去作のパッケージが展示されている。
1~12までのナンバリング作品(中古)が、目につきやすいようにタイトル表面を見せるよう、「面陳」で順番に陳列されている。

武琉独白「あっ!」
過去作パッケージのアップ。
武琉の目に留まったのは、「レジェンダリーエディション #01」と書かれた過去作1~4がセットになっているゲームソフト。
ソフトパッケージの表面を4分割して、過去4作のパッケージイラストが描かれている。
パッケージには、「ベスト版」「中古 税込2,200円」という値札が貼りつけされている。

擬音「ゴクリ」
中古ソフトを握る武琉の右手のアップ。

武琉「あ~ そういえばこれ まだやったことなかったっけ」
勝猛「!」
中古ソフトを右手で持ちながら、わざとらしい笑顔を見せる武琉。
武琉の隣で新作ソフトを両手で持ちながら、驚いた表情で武琉に顔を向ける勝猛。


擬音「ニハハ」
武琉「こっちのほうがお買い得だし"新作"は また今度にしようっと!」
思わぬ掘り出し物を見つけた時のように、嬉しそうな表情を勝猛に見せる武琉。

レジの店員「いらっしゃいませ!」
勝猛「…」
中古ソフトを持ってレジに向かう武琉の後ろ姿を心配そうな表情で見つめる勝猛。
レジの壁には、物語に登場する架空のゲームソフトのポスターが掲示されている。
物語冒頭登場した、アクション&ストラテジーゲームの『BLADE OF WARRIORS』と、Eスポーツ対象タイトルになっているレースゲームの『GALE A MOMENT』、サッカークラブ経営シミュレーションアドベンチャーゲームの『Additional Times』の3つのゲームソフトのポスター。
※『GALE A MOMENT』は、第2話で武琉がはじめてプレイするEスポーツ対象ゲームとして想定しており、伏線として登場させる。

勝猛の両手に握られた新作ソフトのアップ。

勝猛独白「武琉くん…」
勝猛独白「ほんとうは "新作(これ)" やりたいはずなのに…」
表情を曇らせて申し訳なさそうな表情をする勝猛。
※武琉の家が貧乏なこと、自分だけ新作ソフトを買うことの申し訳なさ、勝猛の家が中流家庭であることを読者に提示する。

(場面転換・時間経過)

16―17ページ


店員「ありがとうございました!!」
大型電気店の出入口。自動ドアが開き、中から武琉と勝猛が出てくる。
武琉は、右手にゲームソフトの入った袋を握っている。
勝猛は両手でリュックサックのベルト部分を握っている。

武琉「さあ 帰って早くプレイしようぜ!」
勝猛「…うん」
買ったばかりのゲームの入った袋を嬉しそうな笑顔で両手で抱える武琉。
中古ソフトを買った武琉に対して、新作ソフトを買ったことへの負い目から表情を曇らせている勝猛。

擬音「ザワザワ」
擬音「ガヤガヤ」
目の前の人だかりに気づく武琉と勝猛。

武琉と勝猛は顔を上げて、大勢の人だかりの視線を集めている大手電気店前のオーロラビジョンの映像に足を止める。


擬音「ワァ~」
実況者「東京Eスポーツガーデン主催 "BLADE OF WARRIORS"選手権大会!」
実況者「ようやくベスト4が出そろいました~!」
東京Eスポーツガーデン主催 "BLADE OF WARRIORS"選手権大会と書かれたタイトルバックを背景に、興奮した面持ちの実況者。
昨日『ウィークリーEスポーツ!!』でアナウンスをしていたアナウンサーが実況者を務めている。
オーロラビジョンの映像なので、先日のニュース映像のように映像らしい効果のかかった画面をしている。

実況者「優勝者には 賞金に加え この後 開催されるエキシビジョンマッチにおいて」
実況者「昨日のワールドチャンピオンシップで優勝した"Frozen Beauty" 選手と対戦する権利が授与されます!!」
オーロラビジョンに昨日の大会の優勝時の映像が映し出される。

擬音「オオ~」
視聴者「あの"精密機械"がまさかの登場?」
視聴者「昨日の決勝 マジ ヤバかったよなあ~!」
昨日の大会の優勝者がエキシビジョンマッチに登場するというサプライズに、オーロラビジョンを見ている周囲の視聴者がざわつき、歓声があがる。

勝猛「うわあ 昨日の大会の優勝者が出るんだって~!」
電気屋の前のオーロラビジョンを興奮した表情で見つめる勝猛の横顔。

擬音「モジモジ」
勝猛「ねえ 武琉くん…せっかくだから 試合見てこうよ」
勝猛は興奮した面持ちながらも、武琉の機嫌を伺うようにドギマギした様子で武琉に話しかける。
浮かないような固い表情の武琉。

18―19ページ


武琉「…」
急に黙り込む武琉。

武琉「おれは…いいよ」
俯き表情を曇らせたまま、感情を押し殺すようにつぶやく武琉。

擬音「ギュッ」
武琉「うち ネット繋いでないし…」
武琉「それにオンラインゲームなんて おれ 興味ないから…」
両手で抱えたゲームソフトの入った袋を握る手に力が入る。

武琉「そんなに見たいなら…」
武琉「勝猛(かっつ) 独りで 好きなだけ見てけよ!!」
本当は、ネトゲもやってみたいと思っているのに、貧しい家庭環境のため、本当にやりたいことを我慢し続けている武琉が恵まれた家庭で育つ勝猛に感情を爆発させる。
※中流家庭でほしいものや情報をそれほど我慢することなく入手できる勝猛と武琉との対比・対立した環境を読者に提示する。

擬音「ザッ」
勝猛「武琉くん!!」
勝猛や楽しそうにオーロラビジョンの映像を見ている視聴者から逃げるように駆け出す武琉。
勝猛は、武琉を呼び止めようと右腕をのばす。


勝猛「…」
落ち込んだ表情をしながら、右手をのばしたままの勝猛。
試合を見ていきたいという想いと、武琉の家が貧乏なことを知っていながら武琉を傷つけてしまった後悔とが勝猛にのしかかる。
勝猛は、心の中で感情が揺れ動き、即座に武琉を追いかけて謝ることができない。

武琉独白「ちくしょう 何がEスポーツだ! 勝猛(あいつ)おれよりゲーム下手なくせに金持ちぶりやがって!!」
悔しさで目を潤ませながら、電気街の歩道を駆け抜ける武琉。
本当はもっとお金があるなら、いろいろなジャンルのゲームやネトゲもやってみたいと思っているのだ。

武琉独白「お金さえ あれば…」
涙が溢れる寸前の武琉の顔のアップ

(画面暗転・場面転換) 

20―21ページ


字幕「同じ頃 電気街 裏通り」
東京の電気街で、小さな老舗電気店が軒を連ねる裏通りを歩く高天原輝子の全身立ち絵。
A4サイズの紙を左手にオロオロした表情の輝子。
輝子は、露出控えめなブラウスの上に春らしい色のジャケットを着て、ひざ下まで隠れる長さのスカートと、かかとの低い動きやすいパンプスを履いている。
一見冷たい感じ見えるメタルフレームの眼鏡(伊達眼鏡)とペンダントを身に着け、右肩には、余所行きのショルダーバックをかけている。

字幕「高天原 輝子(たかまがはら てるこ)23歳 女流プロゲーマー」  
擬音「キョロキョロ」
地図片手に周囲を見渡す落ち着かない表情の輝子の顔のアップ。
大会の会場に行かなければならないにも関らず、時差ボケで寝坊してしまい焦っている。

字幕「重度の方向音痴」
輝子独白「ああ~もう どっちに行けばいいのよぉ~」
左手に持った輝子のA4サイズの地図のアップ。
「東京Eスポーツガーデン」の文字の書かれた建物に花丸がつけられ、最寄りの駅からの行き先を示す矢印が地図に書き加えられている。

輝子独白「大会…」
輝子独白「よりによって"昨日の今日"だったなんて!」
呆れ顔の輝子。背景には、ラスベガスから東京に向かう"ジャンボジェット機"の絵。
"JET LAG" "時差ボケ"の文字。


擬音「ハァ」
輝子「"やきがまわる"って このことをいうのね…」
右手をひたいに当てて、ため息交じりに悲嘆に暮れる輝子。
※"やきがまわる"という輝子のセリフと、昨日の大会で輝子の使用キャラの武士の日本刀が相手キャラに折られてしまったことをかけたセリフ。輝子の四字熟語やことわざ好きの性格を示す。

輝子独白「時間(タイムリミット)まで あと15分ちょっと…」
輝子のアナログ時計を巻いた左腕のアップ。
アナログ腕時計の針は2時44分を指し示している。

輝子独白「それまでに 何としても会場までたどりかないと!!」
薄暗い裏通りから、明るい表通りに出る道を選び、歩き出す輝子の後ろ姿。

歩道の交差する地点、表通りを交差点めがけて脇目もふらずに駆け抜けてくる武琉。
地図を注視して周囲をよく見ずに裏通りから交差点に向かって歩いてくる輝子。
輝子が武琉の進路を塞ぐように、交差点に先に侵入している。

擬音「ドカッ」
武琉「わあっ!」
輝子「きゃあ!!」
走ってきた武琉に突き飛ばされる輝子。
輝子に衝突したはずみで前のめりに転ぶ武琉。

22―23ページ


擬音「ドサッ」
その場に仰向けに倒れた輝子に折り重なるように倒れる武琉。武琉は倒れた拍子に右手で輝子の左胸を掴み、はだけたスカートから丸見えのパンティ(ストッキング付き)に顔を埋めてしまう。
周囲には、輝子の地図と武琉の購入したゲームソフトの入った袋が投げ出される。

輝子「う~ん」
仰向けに倒れた輝子の顔のアップ。倒れた拍子に気を失っている。

輝子のパンティの上に顔を埋めている武琉の顔のアップ。

擬音「ギュッ」
服の上から輝子の左胸を、無意識のうちに鷲掴みする武琉の右手のアップ。


擬音「ビクン」
左胸を通して感じる武琉の手の感触に両目を見開いて意識を取り戻す輝子の顔のアップ。

輝子独白「えっ~!」
輝子独白「なんで…」
両肘を支えに状態を起こす輝子。顔を真っ赤にして恥ずかしさと戸惑いを見せながら、自分のパンティに顔を埋めて気を失っている武琉を見ている。
前のページの倒れ込んだ構図と同じ。
輝子が体を起こしたことで、左胸に乗っていた武琉の右手は、輝子の左脇に滑り落ちている。

輝子独白「なんで…この子が私のパンティの上で気を失っているのよぉ~」
輝子目線で見た、輝子のパンティに顔を埋めて気を失っている武琉。

擬音「ピクッ」
輝子のパンティに顔を埋めたまま意識を取り戻した武琉の顔がピクリと動く。

擬音「ムクリ」
輝子「ひっ!!」
身体を起こした武琉の後ろ姿。
輝子は前触れもなく起きた武琉を見て驚きの表情をしている。

24―25ページ


顔を真っ赤にしてポロポロと涙をこぼす武琉の顔のアップ。

輝子独白「この子・・・なんで泣いてるのよ?」
突然ぶつかってきた武琉を叱ってやろうとする輝子だったが、涙を流す武琉を見て怒りも消えうせて、呆気にとられてた表情をしている。

擬音「!」
視線をそらした輝子は、武琉の荷物と思しき電気屋の袋に気づく。
袋からゲームソフトが三分の一ほどはみ出ている。

擬音「ボソ」
武琉「いいよ」
武琉「どうせ 中古だし…」
俯き、何かを諦めたような卑屈な表情で、涙を流す武琉。
ぶつかった拍子に地面に落ちたゲームソフトが壊れたと輝子が心配しているのではと思い心配することないように投げやりなことをつぶやく武琉。

輝子「…」
袋から取り出したゲームソフトを両手で握りながら、思いつめた表情で中古の値札のついたままのパッケージを見つめる輝子。


擬音「バン!!」
輝子「中古のゲームじゃないわ…」
輝子「これは 君のご両親が一生懸命働いて稼いだお金で買ったものなのよ!!」
気迫を感じる表情で武琉に訴える輝子の顔のアップ。

擬音「!」
俯いた顔を起こし、必死さのこもった輝子を見る武琉。

輝子「貧しいからって 卑屈になってはいけないわ!」
輝子「どんな時でも 前を向きなさい!!」
優しげな表情で諭すように武琉を励ます輝子。
右手に持ったゲームソフトを武琉に返そうとする。

武琉「…うん」
輝子に励まされて、笑顔を浮かべる武琉。
輝子に返してもらったゲームソフトを、胸元で大事そうに抱えている。

26―27ページ


擬音「ハァハァ」
勝猛「武琉く~ん 待ってよお~」
息を切らせながら、今にも泣きそうな表情で武琉と輝子の元に走ってくる勝猛。
勝猛に顔を向ける輝子と武琉。

勝猛目線からみた、歩道にしゃがみ込んでいる輝子と武琉。

擬音「!」
武琉とぶつかった拍子にめくれ上がったスカートからパンティがのぞく輝子の下半身のアップ。

輝子「キャッ!」
俯いて両手ではだけたスカートを直す輝子。恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしている。

パンティを武琉と勝猛に見られたと思い、頬を赤く染める輝子の顔のアップ。


擬音「!」
顔をあげた輝子。
視線の先にある電気屋の外壁に据え付けられたアナログ時計が「2時50分」を指し示している。

輝子「え~! もう こんな時間なの!?」
両手で頭を抱えて、驚いた表情をする輝子のバストアップ。
背景に2時50分を示したアナログ時計と、残り10分の文字。

輝子「ねえ! "Eスポーツガーデン"ってどっち?」
頬を染めて半泣き顔で武琉の両肩に両手を置く輝子。

擬音「ガクンガクン」
輝子「わたし どうしても"3時"までに そこへ行きたいのよ!」
必死に武琉の両肩をゆする輝子。

擬音「ウルウル」
武琉独白「なんで泣いて…って 思いっきり迷子?」
顔を真っ赤にして今にも泣きだしそうな表情で目元を潤ませる輝子。
先程の優しさに満ちた大人の女性から豹変した輝子の姿を見て、呆気にとられる武琉。

武琉「…」
無言で考え込む武琉。

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擬音「ギュッ」
輝子の右手首を掴んだ武琉の右手のアップ。

輝子「あっ!」
武琉「こっちだよ!」
輝子の右手首を引っ張るように掴みながら、決意に満ちた表情で駆け出す武琉。
輝子は突然のことで驚いた顔をしている。

擬音「ピュ~」
勝猛独白「武琉くん…」
勝猛独白「行っちゃった」
勝猛を置いて走り去っていく武琉と輝子の後姿を見つめる勝猛。

擬音「!」
勝猛は、武琉と輝子が座っていた側に、武琉の買ったゲームソフトの入っていた袋と、輝子の持っていた地図が置き去りになっているのに気づく。

勝猛独白「これって…」
置き去りになった地図を手に取って見つめる勝猛。

(場面転換・時間経過)


擬音「ハアハア」
地下の連絡通路へと降りていく階段を走り降りていく武琉と輝子。
武琉が前を進み、輝子が右肩にかけたバッグのベルト部分を両手で握りながら、少し後ろを追いかけている。
背景は、地下通路から地上との出入口を見上げた「アオリ」視点で階段を描く。
出入口から光がさし込んでいる。
※武琉と勝猛が登場した10ページと逆のイメージ。

輝子「ちょっと…本当にこっちであっているの?」
不安げで眼鏡のレンズが渦を巻いている輝子。
自信満々の武琉。
※地下街は、東京駅八重洲口地下街のイメージ。

武琉独白「昨日寝る前に 電気街(このへん)の地図を見てて良かった!」
敷布団の上でうつ伏せになりながら、地図を眺めていた自分自身の姿を回想する武琉。

字幕「重度の方向音痴」
輝子独白「なんで 地下(した)なんか通るのよ…」
前を走る武琉の後姿を見ながら、不満そうな表情で走る輝子。

武琉「だって…」
武琉「地下(した)には "信号機" ないから」
当たり前だと言わんばかりに、冷静な表情で輝子に応える武琉。

擬音「アッ!」
ハッとして何かに気づいた表情の輝子のアップ。

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輝子独白「たしかに 地上(うえ)は 信号機(しょうがいぶつ)だらけ…」
輝子独白「1度の赤信号だけでも 1分近くの信号待ち(タイムロス)!!」
頭の片隅で人通りの多い電気街の交差点の赤信号の点灯した信号機を思い浮かべる輝子。

輝子独白「でも いくら電気街(このあたり)に詳しいからって 瞬時に 信号機のない地下通路(最短ルート)を選ぶだなんて…」
前を走る武琉を呆気にとられたような眼差しで見つめる輝子。

輝子独白「面白い子ね」
息を切らせながら走る武琉の顔のアップ。
輝子は、武琉の状況判断力の高さに驚く。


擬音「!」
地下通路の上の看板を見る武琉の後姿。
看板は地下鉄の「地上出入口」や、「~線まで~メートル」と書かれた横長の長方形の形をした看板。

擬音「チラッ」
地下街の外壁にデカデカと掲示された地下街全体地図の案内板をチラリと一瞥する武琉。

擬音「ハアハア」
輝子独白「とっさの状況判断だけじゃない」
輝子独白「この子 走りながら 案内板や地図で情報を更新(アップデート)していっている!」
地図の案内板のアップ。出入口の一つに、東京Eスポーツガーデンと書かれている。
輝子は、武琉の外見からは想像もつかない状況判断と空間把握の高さに驚きを隠せない。

擬音「ワクワク」
輝子独白「とっさの状況判断と 人並外れた空間把握能力…」
輝子独白「どんなゲームプレイ(バトル)をするのか 見てみたいわ!!」
思いがけない形で気づいた武琉の才能に、我がことのように嬉しそうな表情をする輝子。

(画面暗転・時間経過)

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擬音「ハァハァ」
武琉「もう少しだよ この先を曲がれば…」
息を切らせて走る武琉と輝子。2人とも大粒の汗を流している。
輝子の方が、武琉より疲れた表情をしている。

地下通路上の「Eスポーツガーデン側出入口」と矢印が書かれた看板のアップ。

擬音「!!!」
東京Eスポーツガーデン側の地上出入口に続く階段&エスカレーターは、「改装中」「通り抜け不可」の看板で封鎖されている。
看板の内側には、投光器や発電機などの建設用の機材が置かれている。

擬音「ハアハア」
擬音「ハアハア」
驚いた顔武琉と輝子のバストアップ。

武琉独白「残り3分…」
武琉独白「べつの出入口からじゃ 間に合わない!」 
左腕の腕時計を見る武琉。時計の針は2時57分をさしている。


擬音「ヘタッ」
輝子「そんな…」
ショックと、ここまで走り続けてきた疲れから、茫然自失の表情でその場にへたり込む輝子。

擬音「バ~ン」
武琉独白「ここまで来たのに 時間切れ(ゲームオーバー) かよ!!」
悔しさと怒りのあまり、地下通路の壁に、握り締めた右手を叩きつける武琉。

擬音「バ~ン」
思いがけない反響音に、打ち付けた壁に視線を向ける武琉。
壁にはかすれた文字で「搬入口」と書かれており、人がしゃがんで通れるくらいのわずかな切れ込みとともに、取っ手が取り付けられている。

武琉独白「これって!!」
驚いた表情の武琉の顔のアップ

(画面暗転・場面転換)

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字幕「同時刻 東京Eスポーツガーデン正面玄関前」
「東京Eスポーツガーデン」と書かれた建物名の看板が掲げられている玄関口。
玄関前が階段になっていて、その階段下の外壁に持たれながら、輝子の親友の立花桜が左腕の腕時計を見つめている。
桜は、へそ出しのルックスのTシャツの上にデニム生地のジャケットを着て、丈の短いズボンとパンプスを履いている。 
左腕には海外ブランドの高級腕時計を、両手に赤いレザーグローブをはめている。

字幕「立花 桜(たちばな さくら)23歳 女流プロゲーマー 輝子の親友」  
桜「遅い・・・」
桜「あやつ また迷子になったのね!」
輝子が重度の方向音痴で毎度のことだと言わんばかりに、呆れ切った顔をしている桜。

擬音「ハア~」
桜「毎度のことながら 今日も間に合わなかったみたいね…」
ドッと疲れでたように、肩をダラリとして諦め顔で溜息をもらす桜。

擬音「バタン」
何かが閉まる音を聞いて、おやっという表情で音のする右側に顔を向ける桜の上半身のアップ。

擬音「エヘヘ」
輝子「桜…」
桜「輝子(テル) あんた どこから出てきたのよ!!」
蜘蛛の糸とホコリまみれになった輝子が、間に合うことができた嬉しさに少女のような無邪気な笑顔を浮かべている。
輝子の隣には、輝子同様、蜘蛛の糸とホコリまみれになった武琉が照れくさそうな笑顔で立っている。


輝子「桜!! スゴイのよ! この子…武琉くんが使われなくなった荷物の搬入口を見つけてね・・・」
桜独白「下水道の中でも 通ってきたのかと思ったわ…」
目を潤ませて、親友の桜に嬉しそうに、武琉のことと、使われなくなった搬入口を通ってきたことを話す輝子。
呆れ顔の桜。

見ず知らずの女性(桜)を前に、はにかんだ笑みを浮かべて輝子と桜の会話を見ている武琉。

桜「あなたが武琉くんね~」
桜「筋金入りの方向音痴(おんち)を ここまで連れてくるだなんて…」
無防備なくらい自分の顔を近づけて、品定めするような眼差しで武琉の顔を覗き込む桜。
初対面の年上の女性に間近で顔を覗き込まれてドギマギした表情の武琉。二人とも横顔。

擬音「ゴシゴシ」
桜「おぬし 少年のクセに なかなかやりますなあ~」
実の弟を可愛がるように、蜘蛛の糸とホコリまみれの武琉の髪の毛をゴシゴシと撫でてやる笑顔の桜。
照れくさそうに、まんざらでもない笑顔の武琉。

桜「さあて! それでは参りますかな!」
ジャケットの右袖を左手で腕まくりして、気合いを入れる桜。何かを始める前のやる気に満ちた表情をしている。

輝子「ありがとう! 武琉くん!」
桜「ほいじゃあねえ~」
右肩に下げたバッグのベルトを左手で握りながら武琉に笑顔で感謝の言葉をかける輝子。
玄関前で振り向いて右腕を振る桜。

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武琉独白「…なんだか ウチの母ちゃんみたいな女性(ひと)だったなあ」
武琉独白「勝猛(かっつ)のところに戻るか…」
桜の存在感に圧倒されつつも、輝子のために人助けができて良かったと、さきほどまでの悩みが嘘のような晴れやかな表情の武琉。

(場面暗転・場面転換・時間経過)

トボトボと地下街出入口から出てくる武琉。

擬音「!」
勝猛「武琉くん!」
勝猛の声にハッとした表情の武琉。
髪の毛や顔、衣服についたままだった蜘蛛の糸やホコリは、取り払われている。

勝猛「いきなり どこかに行っちゃってさ…ぼく 心配してたんだよ!!」
目元を潤ませて今にも泣きだしそうな顔の勝猛のバストアップ。

武琉「にはは ごめんな勝猛(かっつ)…」
バツの悪そうな表情で申し訳なさそうな表情をする武琉のアップ。

擬音「ニハハ」
勝猛独白「よかった…いつもの武琉くんに戻ってくれて」
普段のような笑顔の武琉を、左手で左目をこすりながら、穏やかなホッとした表情で見つめる勝猛。


擬音「モジモジ」
勝猛「ところでさ…武琉くん」
勝猛「あのお姉さんのパンティ…何色だった?」
急に頬を赤くして恥ずかしそうな表情をする勝猛。
両手は、リュックサックのベルトを握っている。
背景には、飛び交うパンティの画像。
※勝猛がムッツリスケベな性格であることを読者に提示する。

武琉「う~ん…」
両目を閉じて考え込む仕草をしながら、腕組みをする武琉。

擬音「!!」
擬音「パアッ」
武琉「…いい匂いがした!!」
心地よさに癒されたような表情をする武琉。
背景は、咲き誇るお花畑。

勝猛「なに?! いい匂いがしたって?!」
答えになっていない武琉の答えに、目を丸くしてマジギレする勝猛。

擬音「ワア~」
不意にオーロラビジョンを見る周囲の観客が歓声をあげる。
武琉と勝猛は、2人でオーロラビジョンを振り向いて見つめる。
※下からオーロラビジョンを見たようなアオリの構図。

38―39ページ


実況者「"BLADE OF WARRIORS"選手権大会 特別エキシビジョンマッチ!」
実況者「本日の優勝者 "BearCrow331"選手 まったく歯が立ちません!」
輝子と対戦相手の"BearCrow331"こと熊元遊介の顔写真がともに対戦画面がオーロラビジョンに映し出されている。
遊介は、花崗岩の風格のイカツイ四角い顔で相手を睨むような鋭い目つきをして顔写真に写っている。
遊介の使うスイス傭兵は両手で握ったハルバードを用いて、輝子の使う武士の斬撃を耐え忍んでいる。鉄のヘルメット状の兜を被り、黒い金属製の胸当てを身に着け、布製のズボンと金属製の脚絆と靴を履いている。
輝子の使う武士は、物語冒頭の武士のいでたちと同じ。
※遊介は、武琉の前に最初に立ち塞がるライバル。今後の伏線として、前もって登場だけさせておく。

擬音「カチャカチャ」
擬音「カチカチ」
実況者「これが世界で戦う"FrozenBeauty"選手の実力かあ?!」
オーロラビジョンに映し出されるキーボードとマウスを操作する輝子の映像。
先程までと違い、眼鏡を外し、セミロングの黒髪を髪留めのゴムで結わえてポニーテールにしている輝子。
別人のように沈着冷静な鋭い視線で正確なデバイス操作をしている。

武琉「あっ! パンツの姉ちゃんだ!!」
先程までの眼鏡をかけた冴えない輝子の姿を回想する武琉。

勝猛「パンツって…」
恥ずかしそうに俯いて赤面する勝猛。

擬音「!」
擬音「ガハハ」
観客「何言ってんだボウズ!」
武琉の頓珍漢な言葉に、大笑いする観客の30代半ばの男。ジーンズにパーカー姿の土方のおっさん風。
声をかけられて顔を向ける武琉。


観客「あの姉ちゃんはな…」
観客「正確無比なデバイス操作から"精密機械"と呼ばれるアジアNO1女流ゲーマーなんだぞ!!」
輝子の操作する武士の斬撃に、防戦一方のスイス傭兵が、目を見開いて驚愕の表情を浮かべている。
※スイス傭兵の表情と武琉表情の驚きをリンクさせたイラスト。

擬音「!!」
武琉「あの 冴えない姉ちゃんが NO1ゲーマーだって?!」
驚愕の表情の武琉のアップ。

擬音「K.O!!」
実況者「あ~っと! "十字斬"が決まったあ~!!」
輝子の操作していた武士の必殺技が決まる。
遊介の操作していたスイス傭兵がハルバードとともに、十字に斬られてしまう。

実況者「"FrozenBeauty"選手 見事な勝利!!」
実況者「"格"の違いを見せつけてくれましたあ~!!」
オーロラビジョンには、エキシビジョンマッチに勝利した輝子が親友の桜とハイタッチする姿が映し出されている。
輝子は先程までの冷静な輝子と変わって、笑顔の輝子。

擬音「ワ~」
武琉独白「なんて 楽しそうな顔しているんだろう…」
自分の探していたモノを見つけて、うれしさのあまり、体を小刻みに震わせながら、興奮した表情の武琉のアップ。
※この時、輝子のプレーを目の当たりにして武琉は生まれてはじめて「Eスポーツ」に興味を持つようになる。

擬音「ザッ」
武琉独白「おれも…あんなふうになりたい!!」
勝猛「待ってよう…武琉くん!」
自分を表現できる場所を見つけた武琉は、興奮した表情で駆け出す。
両手でリュックサックのベルトを握りながら、必死で後を追おうとする勝猛。

<場面転換・時間経過>

40―41ページ


字幕「大会終了後」
東京Eスポーツガーデンと書かれた建物正面玄関から出てくる大勢の来場者。

玄関のアップ。輝子と桜が横並びで正面玄関から出てくる。
輝子は、先程の試合中と違い、眼鏡をかけており、髪型もセミロングに戻っている。エキシビジョマッチが終わり、気恥ずかしそうな表情をしている。
桜は、輝子を向きながら、何事か嬉しそうな顔で話しかけながら歩いている。

擬音「ザッ」
薄汚れたスポーツシューズを履いた武琉の右足のアップ。

輝子の前に飛び出す何かを覚悟した表情の武琉。左手には先程電気店で買ったゲームの入った袋を持っている。


輝子「あら 武琉くん」
思わぬ再会に驚いた顔の輝子のアップ。

真っすぐ輝子の瞳を身つめる武琉のアップ。
先程の興奮冷めやらぬ様子で頬を少し染めている。

擬音「ギュッ」
武琉「おれ…おれ…」
武琉「あんな楽しそうにゲームしているの見て おれも ああなりたいって思った!」
ゲームソフトを強く握りしめた武琉の左手のアップ。

輝子「?」
武琉が何を言おうとしているか、想像できず腑に落ちないような表情の輝子。

擬音「バン」
武琉「おれ…世界一のゲーマーになりたい!!」
興奮のあまり、頬を赤く染めた武琉の上半身のアップ。

42ページ


武琉「おれのこと・・・弟子にしてください!!!」
土下座した格好で、輝子に対して顔を上げて必死の表情で訴える武琉。

擬音「ドキドキ」
意外な武琉のセリフに驚いた表情の輝子と桜のバストアップ。


第1話終わり。次回に続く。

武琉は、輝子の弟子になれるのか? それとも…


第2話のページへ


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