漫画賞入賞を目指す!読切の作り方
現在、絶賛開催中の「comicoタテカラー®漫画賞2023」。
今回は「オリジナル作品部門」と「ネーム部門」の2つの部門があり、オリジナル作品部門は「溺愛」がテーマであれば、どんなジャンルでも自由にWEBTOON(タテカラー漫画)を作って応募できるのが特徴です。
しかし、応募条件の一つに「物語が完結している読切作品であること」とあります。
読切を条件とした理由は?
読切を作るポイントは?
そんな疑問を解決するため、昨年の同漫画賞でも審査員を務めたcomico編集部の編集長・たかしろに話を聞きました。
読切を描くコツから審査のポイントまで、入賞するためのヒントがたくさん!
本漫画賞に応募予定の方はもちろん、これからプロを目指す方も必読です!
▽去年の「comicoタテカラー®漫画賞」についての記事はこちら
読切を条件とした理由
――オリジナル作品部門を「読切作品であること」にした理由は?
たかしろ この漫画賞はcomicoで連載を目指す方へ向けたものなので、商業作家としてやっていく上で必要な「自分のキャラやストーリーをどこまで考え、描ききれるか」を見るために読切にしました。
これまでcomicoでは「最低15コマ、物語の冒頭だけあればOK」という、応募条件のハードルを下げたコンテストも行ってきましたが、キャラクターの動かし方、物語の畳み方、その人ならではの演出など、自分のオリジナル作品で連載したい応募者の力量を測るには、どうしても判断材料として乏しかったんですね。
一つの物語を完結させるためにはキャラやストーリーをとことん考え抜く必要があります。その過程で気づいた自分の"得意"――「自分はこれができる!」というポイントを存分に見せてほしいです。
漫画賞は編集者へのプレゼンの場だと思って挑んでいただきたいですね。
――得意なポイントは、何でもいいんでしょうか?
たかしろ 何でもOKです! ヒーローを徹底的にかっこよく描く、出だしで驚かせる展開にする、クライマックスの演出に全集中する、決めコマの表情をめちゃくちゃエモく描く……などなど。
自分の得意ってなんだろう……? と悩む方は、「自分はこれが好きだ!」を軸にしてもいいです。熱量が高い部分は原稿から伝わってきますから、ちゃんと拾い上げますよ。
「溺愛」をテーマにした理由
――今回の漫画賞で「溺愛」をテーマにした理由は?
たかしろ comicoで今売れているジャンルの一つがロマンスファンタジー(異世界ファンタジー)なのですが、ストーリーは違えど、どれもヒロインとヒーローの恋愛が主軸です。それも、あちこちに目移りするのではなく、他の全ての人間を敵に回しても良いというくらい、一途で深い……まさに「溺れるほどの愛」が描かれているものが多い。読者コメントやSNSの反応を見ていても、溺愛ものの支持は非常に厚いです。
そんな「溺愛」を応募者がどう表現してくれるのか、いろんな溺愛の形を見てみたいと思い、今回のテーマにしました。
――確かに、タイトルにも「溺愛」がつくロマンスファンタジーは多いイメージがあります。でも今回はオールジャンルOKなんですよね?
たかしろ はい、ジャンルの制限はありません。王道のロマンスファンタジーでもいいですし、学園ものやオフィスラブ、BL(ボーイズラブ)もOKです。恋愛からかけ離れてるようなサスペンスやアクションものでも、敵だった相手を愛してしまった……とかもできそうですね。
さらに言うと、「溺愛」は必ずしも明るいものとは限らないと思います。「溺愛=ただの愛ではなく、もう一歩踏み出した愛」というイメージなので、執着や共依存なども含まれるでしょうし、相手が人間でなくても成立しうると思います。
ここでは「売れ筋に寄せよう」みたいなことを意識する必要はありません。あなたならではの「溺愛」を見せていただきたいです。
読切の作り方——とにかく「主人公の変化」を意識して!
――読切を作る上でのコツやポイントは?
たかしろ いろいろありますが、一つは「始まりと終わりで主人公に成長もしくは変化があること」です。
「ひ弱な主人公がラスボスを倒して勇者になった」「虐げられていたヒロインが、ヒーローに愛されて自分を肯定できるようになった」など、外面でも内面でもいいので、主人公に何らかの変化が起こるストーリーを考えてみてください。先ほどの「溺愛」の説明でも話した通り、その変化は必ずしもポジティブなものでなくても構いません。
これは連載においても意識するポイントなんですが、それを凝縮して短い読切で描いてみることは、長尺の話を考える上でも役に立ちます。
――読切でも連載でも考えるポイントは変わらないんですね! 他にWEBTOONならではのコツはありますか?
たかしろ 冒頭の5~10コマ目くらいまでで「主人公がどういうキャラで、どういう状況に置かれているのか」がわかるように描くと良いです。いきなり別れを告げられる、処刑される、初夜、など、後々起こるインパクトのある出来事をアバンとして冒頭にもってくるのも一つの手です。
ちなみにcomicoの連載作品の場合、3~4話目くらいまで無料で読める作品が大半ですが、無料だからといって全部読んでもらえるとは限りません。1話目、時には最初の数コマで面白くないと判断されたら、そこで離脱されることも多いです。
WEBTOONに限らず無料で楽しめるコンテンツが溢れている昨今、「はじめの数コマで読者の心をどう掴むか」をよりしっかり考える必要があり、そのためにも冒頭での主人公のキャラ見せはとても重要です。
――たしかに、世の中的にもコンテンツを消費するスピードがどんどん早まっている印象がありますよね。
たかしろ comico編集部のnoteでは、ほかにコマ割りや余白の空け方、フキダシの位置など「#WEBTOONのいろは」を別記事で公開しているので、そちらも読んでみてほしいです。
――改めてまとめると、45コマ以上の読切作品であればジャンルは自由、「溺愛」を自由に解釈して、応募者の「得意」や「好き」を込めて描いてほしい、ということですね。
たかしろ そうですね。審査はcomico編集部で行うのですが、様々なタイプの編集者がいてそれぞれ見出すポイントが違うので、いろいろなカラーの作品を拝見できるといいなと思っています。
読み手がワクワクドキドキさせられる、そんな作品をお待ちしてます!
Q&Aコーナー
漫画賞でよく聞かれる応募者からの質問に、一問一答!
Q. 過去に投稿したマンガで応募してもいい?
A. 「comicoタテカラー®漫画賞2023」では、既に商業掲載された作品や、他コンテストで受賞された作品以外であれば大丈夫です。
ただし、そのまま応募するのではなく、今回のテーマに沿って見直し、加筆修正するのがおすすめです。
Q. ありきたりなストーリーしか描けず、自分で読むとつまらない……どうしたらいい?
A. どれだけ話の筋がありきたりに思えても、作家が違えば違う作品なのであまり気にしなくていいです。逆に、奇をてらいすぎるとよくわからないものになってしまい、失敗してしまうことも多いです。
王道と言われるものがなぜ王道なのか。それは良い意味で「ありきたり」だからです。じゃあなぜおもしろいかというと、その人にしか描けない要素に魅力を感じるから。キレのある決めゼリフを言わせたり、ちょっと変な癖のあるキャラにしたり。自分の得意を出しきってください。
あなたの作品を「ありきたり」と思っているのは、案外あなただけかもしれませんよ。
Q. 着色も審査のうちに入るの?
A. 「オリジナル作品部門」はカラーであることが条件なので、当然審査対象になります。ただ、着色にも「この塗り方が良い」という正解はないので、作品の世界観に合うと思う塗り方で挑戦してください。
Q. 応募作は連載として膨らませられる話を描いたほうがいい?
A. 連載作のプロトタイプである必要はありません。そういう企画を読切として描いても構いませんが、それに囚われてキャラや設定がごちゃごちゃしてしまうこともあるので、まずは短い読切の中でまとめられる話で描くことをおすすめします。
Q. 「上限コマ数や上限話数は無し」とあるけど、ボリュームたっぷりに描いたほうが有利では?
A. コマ数や話数の多さは審査の有利/不利とは無関係です。
その作品にとって意味のある長さであればいいのですが、話が進まないままダラダラと長く描くのはやめましょう。もし、45コマジャストでいい読切を描けるのであれば、ぜひそれで応募してください。
Q. 行き詰まったらどうすればいい?
A. ぜひ身近な人に読んでもらってください!
これは去年の漫画賞で審査員を務めていただいた鳥嶋和彦さんもおっしゃっていたことですが、大事なことなので繰り返し言います。
長い時間一つの作品を考え、あちこち直し続けていると、どんどん冷静に見れなくなってしまうものなので、そんな時は「身近な読者」に協力してもらいましょう。
漫画に詳しい人じゃなくていいので、家族でも友達でも、周囲の人に読んでもらって、率直な感想を聞いてみてください。もし複数人から同じところを「よくわからなかった」と言われたら、それはきっと見直すべきポイントだと思います。
あなたならではの溺愛作品、お待ちしております♪